プロメテウスの政治経済コラム

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安倍政権が狙う改憲シナリオ   改憲の本命は9条  日米安保+9条のバランスを崩すな!

2013-07-11 21:39:34 | 政治経済

安倍首相がここにきて、「日本を誇りある国にしていくためにも憲法改正にもしっかりと取り組んでいく」(6日、京都)と口にしはじめた。安倍政権の改憲策動の新たな特徴は、集団的自衛権容認という当面の主要な改憲目標を解釈改憲の手法で実行しようとしていること、同時に、96条改憲を先行することで明文改憲をも実行しようとしていることの二点である。安倍政権は、参院選においても改憲問題を争点のひとつに設定し、参院選後の新たな政治的配置のもとで、かかる二つの内容を持った改憲を強行しようとしている。実に容易ならぬ事態である(渡辺治「安倍改憲論の背景とねらい・その新たな特徴」『法と民主主義2013.6/No.479』)。

 

戦後日本は、国会における改憲の最大の障害物であった社会党を小沢「政治改革」で葬り去るまで、日米安保+9条のバランスを維持してきた。政府による憲法9条解釈は、自衛隊による海外での武力行使を禁止し、集団的自衛権行使も認められないとしてきた。ところが、冷戦が終焉した90年代以降、社会主義圏の崩壊で、文字どおり地球規模で多国籍企業が跋扈する自由な資本主義市場秩序が世界に広がり、世界の政治経済は激変した。唯一の覇権国となったアメリカが、拡大した自由市場秩序の「警察官」の役割を引き受けたが、アメリカは、同じく自由な市場秩序の恩恵を被りながら、日米安保の負担だけで、海外でアメリカ軍とともに血を流そうとしない自衛隊に苛立ちを強めた。これは、海外進出を強める多国籍企業やその政治代理人である安倍首相などの日本の支配層にとっては、まことに面目の立たないことである。自衛隊の海外派兵の要求が日米支配層から強く押し出されるのは、当然のなりゆきであった。

 

自衛隊の海外派兵を行う上で、憲法解釈上の障害は、二つあった。ひとつは、自衛隊の海外派兵はしないとした政府解釈であり、第二は、集団的自衛権の行使は「憲法九条のもとにおいて許容されている……我が国を防衛するための必要最小限度の範囲」を超えるもので認められない、また多国籍軍等への参加もその目的・任務が武力行使を伴うものであれば許されないという解釈であった。小泉首相は、なんとかこの憲法9条の制約を乗り切ろうとして、「派兵」と「派遣」を使い分けようとした。武力行使目的の出動は「派兵」で認められないが、それ以外であれば「派遣」として容認されるというものである。第二の障害については、米軍との共同作戦も武力行使をせず武力行使と一体化しなければ集団的自衛権行使とはならず、また、多国籍軍に参加しても武力行使せずあるいは一体化しなければ合憲だ、という形で、突破をはかった。アフガンやイラクではなんとか武力行使に巻き込まれてないと言い逃れてきたが、米軍や多国籍軍の輸送は、憲法違反であるという判決が名古屋高裁で確定している。憲法9条を厳格に守る限り、自衛隊が海外に出ても、米軍や多国籍軍から、足手まといだと笑われるだけである。しかし、憲法9条がどんなに大事であるかは、ベトナム戦争における韓国軍とベトナムとの痛苦の経験を思い出すだけで十分である。日本が戦前のアジア侵略に加えて戦後のベトナム戦争に参加していたら、どんなことになっていたか。想像することもできない。
9条の解釈改憲ではどうしても米国と一緒に血を流す軍隊になれない。「日本を誇りある国にしていくためにも憲法改正にもしっかりと取り組んでいく」という安倍首相の発言の背景には、このような事情があるのだ

第一次安倍政権は、憲法9条の明文改憲を正面に据えると同時に、「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)などを使って解釈で穴をあける方策も進めた。改憲手続き法案も強引に可決した。しかし、安倍政権は、安保法制懇の答申をもらう前に退陣してしまい、報告は福田首相に出されたが、没になった。
第二次安倍政権は、もう一度海外での武力行使を可能とする集団的自衛権行使の容認を「解釈」で勝ち取り、9条に大穴をあけて戦争できる軍隊の実質をつくってしまうという攻勢に出ようとしている。9条明文改憲の難しさ、オバマ政権が中国との関係で日本が中国と対立しアジア秩序の撹乱要因になることを望まないこともあって、明文改憲の前に、「集団的自衛権行使解禁」にまず手を付けようとしている。選挙が終われば、首相は、ただちに、すでに復活させてある安保法制懇に報告を出させ、集団的自衛権の行使を禁じた内閣法制局の見解の変更を迫るだろう。続いて、自民党が公約に掲げている「国家安全保障基本法」で集団的自衛権の包括的な行使を認め、9条に大穴を開ける改憲を狙うだろう。 内閣法制局のチェックを回避するために議員立法方式も狙っているといわれている。

日本の支配層は、自分たちの番犬である自衛隊が、憲法9条のせいで、米軍と肩を並べて一緒に血を流す軍隊になれないことを心底悔しいと思っている。しかし、われわれ国民からすれば、米軍の戦争に巻き込まれない最後の砦が憲法9条である。現在、世界で大規模な戦争を起こせる国は、アメリカ以外にない。沖縄の人びとの苦しみや対米従属の現状を思えば、日米安保は、すみやかに解消するべきである。しかし、安保による米軍の存在が中国や北朝鮮に対し、抑止力になっていることも事実である。これだけ、日米安保の負担をさせられて、そのうえに、9条を改変してアメリカのために一緒に血をながす必要がどこにあるのか。支配層のメンツのために9条改変を許すことほど馬鹿げたことはない。改憲策動を何としても食い止めなければならない。日本共産党の大躍進で、改憲政党の議席を激減させよう


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