プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

民主・小林議員 違法資金容疑  企業・団体からカネも票も手に入れるのが小沢流選挙

2010-03-06 20:26:32 | 政治経済
民主党・小林千代美衆院議員陣営への北海道教職員組合(北教組)の違法な政治献金問題で3月1日、同教組の幹部ら4人が逮捕された。有罪が確定すれば、小林議員は連座制で、辞任しなければならない。
いわゆる「55年体制」が90年代のはじめに終焉するまで、企業(業界)、農業団体、宗教団体等は自民党、主要労働組合は社会党または民社党支持という特定政党支持締め付け体制が一般的であった。右派労働組合の社会党/民社党支持の締め付けは、創価学会員顔負けの厳しいものであった。民社党支持の組合機関決定に従わなかった創価学会員が統制違反として処分された事件は最高裁にまでいった[―中里鉱業所事件(最高裁昭和44年5月2日判決)―]。
新自由主義「構造改革」が始まると自民党支持の各種団体につながる旧い自民党政治は、多国籍大企業のお荷物、抵抗勢力として切り捨てられたため、最近ではかつてのような締め付けの力がなく、それが昨年の総選挙での自民党の没落につながった。連合系労働組合の締め付けの方は、かつての社会党/民社等が没落してしまったので、主要部分は、民主党へシフトしていた昨年の総選挙では、特定政党支持のうまみを知り尽くす小沢幹事長が、かつての自民党支持団体を確実に民主党の方へ振り向けさせ、連合系労働組合の特定政党支持の締め付けを民主党へ結びつけることによって同党の大勝利を実現した。今回の民主党・小林千代美衆院議員陣営の違法資金事件は、企業・団体からカネも票も手に入れる小沢流選挙のもとで起こったことなのだ

 昨年の総選挙で、小沢幹事長は、構造改革によって地方がズタズタにされたことをよく知っているので、ここを民主党が総取りすることを狙った。彼は、2つの戦略を実行した。1つは、小沢氏子飼いの秘書団を新人議員候補の選挙区に派遣し、連れ立って地方の財界、医師会、農協などのかつての自民党支持団体を回り、構造改革によって不信をもち自民党離れをした地方の自営層、地場産業、地方財界を民主党が一手に総取りする戦略である。もう1つは、連合系労働組合と組み、とくに自治労と日教組の県支部を使いながら、特定政党支持の締め付けを通じて地域の労働者を獲得する戦略である。この2本立てで、小沢氏は147人の新人を当選させ、そのうち100人を小沢傘下におさめたのだ(『季刊自治と分権no.38』渡辺治発言)。
このような脈絡のなかで、民主党・小林議員陣営の北教組幹部が逮捕されたのだ。

 「55年体制」のもとでの労働組合の「特定政党支持」締め付けは、企業別労働組合を基礎に企業の成長(資本蓄積)に協力しながら成果配分で相応の見返りを受け取るという「労働組合主義」を全組合員に押し付けるものであった。このような路線は、資本蓄積の原資が剰余価値の搾取であるという真実を覆い隠すものであり(だから必然的に「反共」であった)、資本蓄積過程が順調に進み、労働者への配分について会社が「善意」を保持している間は、問題が表面化しないが、景気が悪くなったり、競争が激化して資本蓄積が資本の思い通りに進まなくなると、労働者の搾取という資本蓄積の本質がむき出しとなり、労働条件の劣悪化がどんどん押し付けられることになる。こうなると、会社と一般労働者の利害の対立が先鋭化するので、会社は、日頃養っていた組合幹部(これを“労働貴族”という)を使って、自覚的、階級的な労働組合員を一般組合員から排除し、弾圧する。労働組合が労働者の味方の顔をしながら、会社の味方となるのだ

労働組合は、資本家階級の搾取と抑圧に対抗して労働者の生活と権利をまもり向上させるために、構成員の思想・信条・所属政党等のいかんにかかわりなく、一致する要求で団結して闘う組織である。はじめから、資本家階級の搾取と抑圧に協力する「労働組合主義」=労使協調主義では、肝心なときに、労働者の生活と権利をまもり向上させることができない。労働組合の「特定政党支持」締め付けは、政党とは異なる性格の組織である労働組合を特定政党が私物化するという意味で根本的に間違っている

 小林議員事件は、北教組がとっている特定政党支持義務付け、強要のなかで組合幹部(労働貴族)が、組合員から強制的に集めた金を小林議員の選挙陣営に渡したものであるこの資金は、政治資金規正法は企業や団体による献金を政党と政治資金団体にしか認めていないので違法資金ということになる。規正法違反もさることながら、思想・信条の自由や、政党支持の自由がある組合員から、強制的にカンパを集め、選挙運動をさせることこそが問題である小林千代美候補を支持したい個人だけが集まって、カンパしたり、選挙を手伝うのは、勝手だが全組合員に組織として強制するから問題なのだ。これは、企業献金も同じである。さらに、政党助成金は、全国民から強制的に集めた税金を国民の意思と無関係に各政党に山分けさせている。

 私たちは、自分自身の尊厳、基本的人権をもっと大切にしなければならない。そして、それを侵すものに対しては、厳しく対峙しなければならない。自分を大切にしないものは、他人も大切にしない。喜ぶのは、分断統治をたくらむ支配階級である。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。