プロメテウスの政治経済コラム

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イランの核兵器保有阻止、軍事的手段排除せず=オバマ大統領   イランは攻撃されるのか?

2012-03-03 20:56:49 | 政治経済

オバマ米大統領は、イランの核兵器保有を阻止するために米国は必要に応じて軍事的手段を取る用意があることを明らかにした。2月27日に行われたアトランティック誌とのインタビューの内容が3月2日公表された。

この中でオバマ大統領は、イランが核兵器を開発することは容認できないとし、「脅しではない」と強調した。「イランが核兵器を保有することを容認しないと米国が表明した場合、それが言葉どおりの意味であることをイラン政府もイスラエル政府も認識していると思う」と語った(ワシントン 2日 ロイター)。

イランでは2日、国会議員選挙の投票が行われた。最高指導者ハメネイ師派とアフマディネジャド大統領派の保守派内の争いということだが、オバマ大統領は揺さぶりをかけたかったのだろう。

ワシントン・ポストは、すでに2月2日、イスラエルが二ヶ月から四ヶ月のうちにイランを攻撃する可能性があるとペンタゴンのレオン・パネッタ長官は考えていると報じた。米国の軍産複合体にとっては、イラクとアフガニスタン戦争のあとにどこかで別の戦争が必要である。米国は、対イラン軍事攻撃の為の体制を早くから準備している。NATOの戦艦と共に、米国の二つの艦隊がペルシャ湾に配備されている。石油産出首長国と中東の米国の傀儡諸国には、ミサイルが展開されおり、アメリカ軍はイスラエルとクウェートに配備されている。

イランは攻撃されるのだろうか?

 

米国の対イランプロパガンダは、イランのシャーがイラン革命で打倒された1979年以来、一貫して継続している。イランは中東の米軍基地によって包囲されている。実際は、米国とイスラエルによって絶えず軍事的威嚇を受けているのだが、イランを無謀なならず者国家として描き出すのが、米国・イスラエルのプロパガンダの常套手段である。しかし、イスラエルの対イラン攻撃への報復を除けば、イランが、自らイスラエルを攻撃することはまず考えられない。丁度、北朝鮮が米韓日によって絶えず軍事的威嚇を受けながら、無謀なならず者国家として貶められているのと似た構図である。

 

オバマ政権が対イラン軍事攻撃に踏み込むかどうかは、ロシアの大統領選挙及びオバマ自身の大統領選挙の行方が影響する可能性が高い

ロシアの大統領選が混乱なく、プーチンの勝利で終わるかどうか。もし、混乱状態になれば、今春がイラン攻撃には一つのチャンスである。ロシアの反プーチン派は、ワシントンから資金を提供されており、ワシントンの声明、特にヒラリー・クリントン国務長官による声明で勇気づけられている。プーチンが勝利しようが、あるいは、はっきりしない結果となって、決選投票になろうが、ワシントンの金が、何万人ものロシア人を街頭に繰り出させることは確かである。今、100,000人を超える人々が、“公正な選挙”を要求し反プーチンの抗議デモを行っていると盛んに報じられている。3月にプーチンが勝利すれば、それは不正選挙を示すものでしかないと、反プーチン派に主張させる用意が既にワシントンにはできているのだ。

 

今の段階で、米国の大統領選挙の行方を予想するのは難しい。しかし、オバマが大統領選挙で負けそうな情勢が生まれた場合、イラン戦争の危険性が高まる。愛国的な有権者は、戦争中の大統領を追い出さないのが通例であるからだ。

 

シリアの内戦も気になるところである。シリア反政府運動が「アラブの春」の一環である民主化闘争として始まったことから、米欧メディアは一斉に反体制側・スンニ派勢力を支援する側に回っている。日本のメディアも「民主化運動を弾圧するアサド独裁政権への批判」を基調とする報道を続けている。だが、事態はそれほど単純ではない。シリアのアサド政権が倒れて喜ぶのはイスラエルであり、アメリカであり、ヨーロッパである。なぜなら米欧・イスラエルが最も敵視しているイランにとって、アサド政権退場は大きなマイナスになるからである。シリア情勢はイランをめぐる緊張と連動する形で中東全域の緊張をいっそう高めている。偶発的な不測の事態が大動乱に点火しないとも限らない状況である。


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