プロメテウスの政治経済コラム

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安倍内閣支持率続落  なぜ「頼りない」か  安倍政権が抱える矛盾と困難

2007-01-23 20:39:21 | 政治経済
「朝日」の世論調査では、昨年9月の発足直後、63%だった内閣支持率はその後、じりじりと低下。4カ月弱で不支持と伯仲する水準まで下がった。支持政党別では、自民支持層の支持率が前回の80%から74%、公明支持層の支持率が前回の67%から58%と、ともに減っている。無党派層の支持率も24%と前回の27%から目減りした。 不支持と答えた人のうち、理由は「政策の面」が58%と6割近くに達し、企業重視の経済政策への批判もうかがえる。今回、男性の支持率が前回の45%から36%に減る一方、不支持率は46%まで増え(前回39%)、不支持が支持を初めて上回った。女性は支持42%、不支持29%で、女性の方が支持が高い“安倍女性人気”は続いているようだ。
佐田前行政改革担当相に端を発した政治資金の処理をめぐる問題が松岡農林水産相、伊吹文部科学相にも明らかになったが、これらの問題について実態が「解明されていない」は85%にのぼり、「解明された」は2%しかなかった。安倍内閣が「強力な内閣」との見方は12%にとどまり「頼りない」が67%と多数を占める。「頼りない」は内閣発足直後の34%から倍増。不祥事が続発するなか、力量に疑問を感じている有権者の姿が透けて見える(「朝日新聞」同上)。

「朝日新聞」は上記のように表面的な政治現象の解説以上に本質に突っ込まないが、安倍政権が抱える矛盾と困難をつかむためには、小泉政権5年半の総括から始めなければならない。
小泉は新自由主義的構造改革と軍事大国化という現代の支配層主流の意思に徹底して忠実であった。
小泉政権は従来の自民党利益誘導型政治を「抵抗勢力」として押さえ込みながら、新自由主義的構造改革の強行を一貫して自覚的に進めた。不良債権処理で大銀行を救済するとともに多国籍大企業中心の産業構造の強制的再編を強行した。小泉政権は、企業リストラを進めやすい法規制の緩和・創設を行い、法人税減税や社会保障改革で企業負担の軽減を強行し、大企業の競争力を飛躍的に高めた。しかし、構造改革で生み出された社会統合の破綻、格差拡大、貧困層の拡大にたいしてブレない小泉は、放置し、まったく手をつけなかった。
小泉政権は軍事大国化を新段階に進めたが、憲法9条の改正による正面突破をすることはできなかった。東アジア経済圏でリーダーシップをとりたいという支配層主流の意思に結果的に応えられなかったばかりか、大きな後退を余儀なくされた。国民的人気を確保するためには、ブレない小泉が必要だったからである。

安倍政権は、小泉がやり残した軍事大国化の完成や東アジア外交の改善、社会統合の破綻を糊塗ししつ構造改革をさらに前進させるという課題の解決を迫られた。安倍自身の新保守主義思想は一見、これらの課題と矛盾はないようだが、政権の担い手、ブレインを含めて考えるとその支持基盤との間にはさまざまな矛盾がある。安倍をコアで支持しているブレインの新保守主義は、悲惨な戦争体験をまったく問題にしない、専制的天皇制の評価を回避、反アジア主義と親米思想の点で中曽根ナショナリズムとも大きくことなる。彼らの侵略戦争と植民地支配に対する無反省、反中国、反北朝鮮の思想は、東アジア外交の改善という支配層主流の意思と両立しない。安倍政権の担い手のタカ派的新保守的政策が現代のグローバル大国化をめざす財界やアメリカの意思と対立しかねないのだ(渡辺治「安倍政権論」『ポリティーク』Vol.12旬報社2006・12)。
支配層主流の意思は新自由主義的構造改革の恒常的推進である。しかし、たとえば教育改革で全国一斉テストによる学校の格差化と統廃合、教員や学校への評価制度の導入などは新保守派が夢想する家庭や地域の再建には決してつながらない。安倍自身のなかでは新保守主義と新自由主義が野合しているかもしれないが、支持基盤は新保守主義派と新自由主義派のふたつに割れているのだ。それだけでなく小泉政権5年半で打撃をうけた地方を中心とした「抵抗勢力」は安倍政権になっての変化に期待を膨らませ支持している(渡辺治 同上)。郵政民営化造反組の復党がその象徴である。
安倍政権の支持基盤は新保守主義派、構造改革推進派、構造改革反対派が入り乱れており、あちらもこちらも顔をたてようとすると「頼りない」といわれる矛盾と困難をもともと抱えているのだ。

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