プロメテウスの政治経済コラム

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ワシントン反戦50万人集会  アメリカの自由と民主主義はまだ死んでいない

2007-01-29 19:08:16 | 政治経済

全米最大の反戦組織の連合体「平和と正義のための連合」の呼びかけで27日、ワシントンでイラク撤退を米政府と議会に求める集会とデモ行進が行われ、50万人(主催者発表)が参加した。「トゥループ・ホーム・ナウ」(兵士をすぐに戻せ)―米各地から集まった人たちの声が米議会を覆った。市内中心部の広場での集会では、イラク帰還兵とその家族、民主党のジョン・コニヤーズ下院司法委員長ら反戦の立場を表明している連邦議員、人権活動家のジェシー・ジャクソン師、労働組合指導者らさまざまな人たちが登壇。女優のジェーン・フォンダさんがベトナム戦争以来初めて、屋外での大規模な反戦集会で訴えた(「しんぶん赤旗」2007年1月29日)。

ますます泥沼化するイラク情勢に、ブッシュ米政権が出した答えは、米軍の増派であった。このまま撤退すれば、ブッシュ米政権の敗北が明らかであり、石油利権、イスラエルの安全、そしてなによりも戦争で儲けている米軍産複合体にとって次の儲け=次の先制攻撃を始めるチャンスが相当困難になるからである。軍産複合体にも、石油にも、イスラエルにも関係のないアメリカ一般国民がこれに反発した。戦場で死ぬ米兵の間での不満も高まっている。そうした声に押されて、米議会では撤退を求める声が与党・共和党の中にも広がり、撤退要求や増派反対の法案・決議案が24日までに上下両院に15件も提出された(「しんぶん赤旗」同上)。
ブッシュ大統領の対イラク政策に対する米国民の不支持率は、米軍がバグダッドに侵攻した2003年4月には22%(米紙ワシントン・ポスト、ABCテレビ世論調査)だったが、泥沼するにしたがい高くなり、今年の一般教書演説直前の19日には70%で、これまでの最高となった。それに対し、03年4月には77%だった大統領支持率は下がる一方で、中間選挙直前には40%、19日には33%と最低を記録した(「しんぶん赤旗」同上)。

民主党も共和党も基本的にはアメリカの支配階級を代表しており、石油利権が手に入り、米軍産複合体の儲けが拡大し、イスラエルの安全保障にも寄与するイラク戦争開戦に賛成であった。どうせ死ぬ兵士は、貧困家庭の黒人やアメリカ国籍がほしいヒスパニックが中心である。
世論を動かし、議会を動かしたのは、反戦活動家たちの行動であった。米軍内でもイラク政策に対する不支持が広がっており、現役兵士を対象に行った世論調査では、不支持が42%で支持の35%を上回った(ミリタリー・タイムズ社)。イラクからの米軍の即時撤退を求める現役米兵の「訴え」への賛同署名も広がり、千二百人を超えた。デモ行進では、反戦行動に立ち上がったイラク帰還米兵たちが、力強く「占領をやめろ。今すぐ兵士を帰せ」と唱和、行進を引っ張った(「しんぶん赤旗」同上)。
ブッシュ政権のイラク政策に対する批判は米国内にとどまらない。英BBC放送が今月、世界二十五カ国で実施した世論調査で、73%がイラク戦争に反対と回答。49%が「米国は世界で否定的な役割を果たしている」と答えている。そうしたなかで、イラクに軍隊を派兵してきた「有志連合」も38カ国から17カ国に減少。第二の派兵国、英国も段階的撤退を決めた(「しんぶん赤旗」同上)。

テロ容疑者への盗聴や無差別逮捕など「戦時国家」としてアメリカの自由と民主主義が死んだとよく言われるが、これだけ国民が自由にものが言える懐の深さはアメリカにはまだ残っている。日本が「戦時」になったときこれだけの自由が残されるであろうか。イラク「人質」事件の自己責任バッシングを思い出しただけでゾットする。日本では「非国民」の大合唱ではないだろうか。
私たちは、いまこそ、イラク開戦に抗議して米国務省を辞職した元外交官のアン・ライトさんの「日本には、海外で武力攻撃にかかわらないとしてきた60年の歴史を無にしてほしくありません。日米両国の国民がそれぞれ自分たちの政府に、海外で無謀な軍事行動に加担すべきでないと立ち上がらなければなりません」という訴えに真摯に応えなければならない。


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