プロメテウスの政治経済コラム

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ケニー司令部ジャパン  進む日米戦闘司令部の統合 米軍の戦時作戦統制権返還で揺れる韓国

2007-01-28 19:22:52 | 政治経済
ブッシュ米政権は、02年に打ち出した先制攻撃戦略にしたがって、「地球規模のテロとの戦い」に対応するための司令部機能の強化を目的として、全世界で「戦闘司令部」の設置・再編を実行している。第五空軍(在日米空軍)司令部と、当時グアムにあった第13空軍司令部は、当初計画では、統合のうえハワイに移転することが検討された。しかし、第五空軍司令部の国外移転計画に驚いた日本政府は残留を懇願。そこで、第五空軍司令部はそのまま日本に残り、今回、ハワイの第13空軍司令部=ケニー司令部から「ケニー司令部ジャパン」が分遣隊として設置されることになった。第五空軍司令部は移転せず、ケニー司令部ジャパンの新設で基地機能が強化され、自衛隊との融合・一体化をいっそう進めるという重大な変化を日本政府が、周辺自治体に通知したのは司令部発足の前日(1月4日)であった(「しんぶん赤旗」同上)。

韓国は朝鮮戦争開始直後の1950年に軍の統制権を米軍に委譲。1994年に平時の統制権は返還されたが、戦時の統制権は米軍が保持したままとなっている。盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領は、この状態を変えるべく、2003年の就任当初から「自主国防」と「戦時作戦統制権の返還」を重要政策の一つに掲げてきた。初めは慎重な姿勢を示していた米国政府は2006年7月、ソウルで行われた米韓安全保障政策構想会議で「戦時作戦統制権を韓国軍に返還する時期は2010年以前が望ましい」との立場を表明した。
逆にこれに慌てたのが韓国の返還反対派である。特に昨年10月9日に北朝鮮が核実験を強行した後、反対は保守派だけでなく、盧政権下で国防相、軍高官を務めた者にまで広がった。作戦統制権が全面的に返還されれば米韓連合司令部は解体され、米韓相互防衛条約に基づく米国の韓国防衛義務が弱体化するので、北朝鮮と緊張関係にあるいまは、時期尚早というわけだ。

さらに韓国の世論が気にしているのは、日米の作戦統合強化の動きである。米本土から米陸軍第1軍団が座間に移転し、駐日米陸軍司令部および陸上自衛隊中央即応集団と合体して、米陸軍の統合作戦司令部、アジア最大の統合基地となることが在日米軍再編で予定されている。米陸軍第1軍団は日本敗戦後に占領軍として日本に駐屯し、朝鮮戦争時は釜山に司令部を置いて北進戦に参加し、その後も韓国や日本での米軍との共同演習に投入されている米陸軍の最精鋭機動軍である。
韓国では、在韓米軍の戦時作戦統制権の返還に伴い解体される韓国-米国軍連合司令部に代わって座間の米第1軍団が在韓米軍をも指揮する北東アジアの拠点司令部になる可能性があると見ている。米軍と自衛隊との一体化、日本の軍備増強、米日共同演習が北朝鮮をターゲットするものである以上、韓国にとっても穏やかではない。 まして、安倍首相は5年以内に憲法を改正して「自衛隊が海外での活動をおこなうことをためらわない」と言っているのだから。

米国の本音は、これを機会に反米感情の強い韓国から可能な限り手を引くことにあることは間違いない。米国が韓国に代わるものとして期待するのが、デモも少なく、従順な日本である。韓国政府が、韓国から出撃する米軍の行動に一定の足かせをかけているのも、アメリカにとっては面白くないところである。
米国は、戦時作戦統制権の韓国軍への返還を機会に、日本に軍事機能を集中させるつもりである。ともに米軍の占領から始まった日本、韓国がそれぞれの戦後レジームを戦争屋米国から自立する方向に進めるか、ますますのめりこむ方向に進めるかは、今後の北東アジアと世界の平和の情勢を大きく左右する。日本人民の歴史的任務は大きい。

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