プロメテウスの政治経済コラム

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小沢氏無罪判決をどうみるか  政治闘争の階級的側面と法律的側面

2012-04-29 20:33:19 | 政治経済

政治資金規正法違反の虚偽記載の罪で強制起訴された小沢一郎・民主党元代表に対し、東京地裁は、26日、無罪の判決を言い渡した。同じ虚偽記載では、会計責任者などを務めた小沢氏の秘書3人に対し、昨年すでに有罪の判決が言い渡されているから、秘書は逮捕・起訴され有罪、議員本人は検察審査会で強制起訴されても、無罪というのが、今回の法律的側面である。今回の裁判の他方の側面は、政治闘争の階級的側面である。小沢氏は、かつて、自民党「経世会」時代、“剛腕”と称されたように、階級的には財界を代表する保守政治家である。しかし、2006年、“ニセメール問題”で前原氏辞任のあと、第6代の民主党代表に選出されたとき、両院議員総会の演説で小沢氏は、「変わらずに生き残るためには、変わらなければならない」という19世紀のイタリア貴族の没落を描いた映画『山猫』の一節を引用し、「まず、私自身が変わらなければなりません」と述べ、“アメリカいいなり・財界中心”(いわゆる「新自由主義的構造改革」政治)の自公政権に対決することを鮮明にした。そして、2007年参院選挙、2009年総選挙で「構造改革」政治から逸脱するマニフェストをかかげ、ついに、民主党政権が、自公政権にとって代わった。このような政治的激動の最中に生起したのが、小沢政治資金裁判であり、鳩山政治資金スキャンダルであった。新自由主義「構造改革」政治からの逸脱は、支配階級にとっては、何としても阻止すべき大問題である。これが、今回の小沢裁判における政治闘争の階級的側面である。

 

マイケル・グリーンらのジャパンハンドラーズが外務・財務官僚らと協力して、小沢、鳩山氏追い落としに暗躍したことは、彼ら自身の言明からも明らかである。このことが今度の小沢裁判を巡って、あたかも検察の謀略裁判であるかのように、多くの弁護士や進歩的知識人が小沢氏擁護の論陣を張った背景にあるように思われる。政治資金規正法がザル法であることを不問に付したまま、ただ検察の不当性を批判し、小沢氏を擁護した。

確かに、鳩山氏が辞任し、小沢氏が党員資格を停止されている間に、菅、野田首相と交代するたびに、「消費税は4年間上げない」「コンクリートから人へ」「国民生活が第一」など多少とも“アメリカいいなり・財界中心”からの脱却をめざすマニフェストは、すべて総崩れとなり、いまや、民主党は、新自由主義「構造改革」政治という面では、自公政権となんら変わるところがないところまで逆戻りしてしまった。小沢、鳩山氏が主導した「政権交代」は、こうして支配階級によって無残にも破壊されたのだ。

小沢氏無罪の判決に合わせるように、経団連の米倉弘昌会長は26日、野田首相と首相官邸で会談し、社会保障と税の一体改革(消費税増税)、エネルギー問題(原発再稼働)、経済連携推進(TPP)への取り組みを「激励」した。米倉会長は会談後、記者団に対し「首相のリーダーシップは素晴らしい」と改めて評価した(時事通信)。
小沢氏のグループは消費税率引上げ法案反対の急先鋒だ。今回の無罪判決でその勢いは高まるのは当然で、民主党内での小沢氏の存在感は高まるだろう。小沢氏による「政権交代」の原点回帰を何としても阻止しなければ、支配階級にとって、この間の検察を使ってまでの努力が徒労となってしまうのだ。

 

秘書有罪、本人無罪の小沢裁判の法律的側面をどう考えるか。

小沢氏は陸山会の代表者でありながら、「秘書任せ」が裁判で結果的に通用し、少なくとも一審では逃げ切ったことになる。いまの政治資金規正法がザル法であるからである。上場会社の粉飾決算で会計担当だけが有罪となり、代表者が無罪などということはありえない。密室での「共謀共同正犯」を立証するのは極めて難しい。東京地検特捜部は、4億円の土地購入原資がゼネコンからの裏献金であるとの見立てをしながら、小沢氏の岩手の自宅も東京の自宅も家宅捜索しなかった。裏金の資金の流れについての解明を始めから諦めていた。これでは小沢氏本人を法律的に裁くことが目的ではなく、多くの弁護士や進歩的知識人が、検察の謀略裁判であるかのように小沢氏を擁護したことも肯けるというものだ。


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