14、15日にワシントンで開かれた緊急金融サミット、G20会議(20カ国・地域首脳会議)は、投機的な金融活動への規制強化の方向は明確に打ち出されたが、実効性のある具体策は、来年4月までに開く次回会議に先送りされた。1944年に戦後のドル本位制を決定したブレトンウッズ会議は、2週間も議論が続けられたわけだから、「ブレトンウッズ2」について実質1日の会議だけでなんらかのまとまった結論が出ると考える方がもともと無理な話であった。しかし今回のG20サミットは、世界の構造変化という意味では、象徴的な意味をもったのではないか。そのなかで、アメリカの主張にすりよる姿勢―旧態然たる対米追随路線しか示し得ない日本政府の方向は、明らかに世界の変化を理解しない誤った方向だといわざるを得ない。
今回のG20会議は、これからの世界を主導するのは、英米主導のG7から、BRIC(特に中露)とEUと米国の共同運営による多極型のG20へ移行するのだろうということを明瞭に示すものであった。政権末期の米国のブッシュ大統領の存在感はうすかった。晩餐会で、ブッシュ氏の両脇のブラジルのルラ大統領と中国の胡錦濤国家主席がブッシュ氏の面前を通り越して盛んに乾杯していたのが印象的だった。
G7は、1971年のニクソンショック=金ドル交換停止によるブレトンウッズ体制の崩壊と73年の石油危機によって行き詰まった西側先進諸国の政治経済の立て直しをめざして1975年からはじまった。世界経済での比重の高まりを受けて、近年は、BRIC諸国もG7サミットに呼ばれるようになっていたが、いよいよBRICsが主導するG20会議が歴史の表舞台に出てきた。G7諸国はもはや世界を主導することができず、中国などBRIC諸国の経済成長力や資金力に頼らないと、世界経済を回していけなくなったのだ。
国内で、「マンガばかり読んでいたら、総理大臣みたいになっちゃうよ!」と笑いものにされているわが麻生首相は、「日本の経験を発信する」と緊急金融サミットで大見得を切って次のように強調した。「自由な市場原理に基づく競争、資本フローが、今後とも成長の基礎であり続けることは言うまでもない」。「米国の経済力が低下し、世界最大の債務国となった現在、果たしてドル基軸通貨体制は今後とも安定的に持続するのか、という声がある。しかし、我々としては、現在の国際経済・金融システムが依拠している、ドル基軸体制を支える努力を払うべき(である)」。アメリカ発の「カジノ資本主義」の破綻を受けた会議であったから、これまでの対米従属関係を見直す発言が出るかと思ったが、旧態然たる対米追随路線しか示し得なかった。
G20会議の直前、仏サルコジと露メドベージェフの2人の大統領がフランスで会合し「G20会議での仏露の方針は、ほとんど一致している」との声明を発表した。G20の中では仏露に限らず、中南米諸国でも中国でもどこでも他の各国と連携して意見調整をしたうえで、主張を通そうとしているのに対し、日本は単独である。対米従属だけで、仲間のいない日本は、世界から重視されない。独り悦に入っているのは、わが麻生首相だけである。
日本がG20で何か提案したければ、事前に中国や韓国と話をつけて日中韓でやるのが効果的だ。だが、日本はいまだに米英中心で、G7しか見ていない。アメリカの主張にすりよる提案をしたら米国が歓迎し、ドル本位制と日本の対米従属を維持できると思っている。それは、全くの夢物語である(田中宇の国際ニュース解説「転換期に入った世界経済」2008年11月18日)。
今後、ドル基軸通貨体制がどのように崩壊していくのかは、予断をゆるさない。一方で、中国の米国債保有高が9月末時点で5850億ドル(約56兆7千億円)となり、首位を続けていた日本(5732億ドル)を抜き、世界最大の米国債保有国となったという。米国債とドル通貨の破綻の可能性が高まる中、日本と中国はもっと連携しなければならない。「新しい歴史教科書をつくる会」のメンバーに自衛隊幕僚学校の講師を任せているようなトボケタことでは、これからの世界を生きて行けない。これからの世界で生きていく日本の国益を本当に守る真の愛国者は誰か。日本国民は目覚めるときだ。
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