プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

「タレント知事」の露出に貢献するマスコミ  筋違いのパフォーマンス

2009-07-05 21:59:06 | 政治経済

総選挙を目前にして、宮崎県の東国原英夫知事や大阪府の橋下徹知事らいわゆる「タレント知事」が騒々しい。自民党の断末魔を利用してそれぞれの思惑で動いているようだが、地方自治体の首長の役割も心得ない筋違いのパフォーマンスが目立つ。さらにひどいのが彼らをもて囃し、思考停止に陥っているマスコミである。小泉劇場をもて囃したことを反省したはずだったが、口先だけである。彼らのもくろみ、計算にまたしても乗せられている。

それにしても情けないのは、自民党の断末魔。総選挙の大敗を恐れ、それが少しでも食い止められそうなら何でもすがりつく。自民党の古賀誠選対委員長がわざわざ宮崎県に出向いてまで東国原知事に出馬要請をした。そして「総裁候補にすること」を条件に突きつけられて帰ってきた。さすがに自民党内は、自分たちのふがいなさを棚に上げて、「虚仮にされた」と怒っている
マスコミは東国原知事をさも英雄であるかのようにもて囃すが、彼が何のために、短期間で知事職を“投げ出し”国政に出たい=首相になりたいのかよくわからない。「宮崎を変えるため」「自民党を変えるため」と言うが、変えてどういう日本をつくりたいのか何も語らない。最近は、橋下知事の向こうを張って盛んに「地方分権」とか言っている。しかし、彼の「地方分権」は、行政権や立法権などの権限をすべて地方に移し、好き勝手をやらせよというだけで、そこには住民主権にもとづく生活や暮らしはまったくない。失礼だがこの人は、タレントなので口八丁であるが、マンゴーを売るぐらいしか能力がないのではないか。

目立ちたがりでは、ひけをとらないのが大阪府の橋下知事である、「地方分権」の推進を掲げ、新たな政治グループ「首長連合」の結成を目指すとかまびすしい。地方自治体の首長の役割も心得ず、首長連合で政党支持を明らかにするといきまいている。この人、本当に司法試験に合格した人なのだろうか。
知事個人が何党を支持するかは自由だ。しかし、知事というのは、どの党の推薦を受けようが当選すれば、住民全体の奉仕者である。そういう人が、グループをつくって特定の党を支持するうんぬんというのは、首長失格である。
確かに地方分権も大事だが、橋下知事が言う「地方分権」も住民主権にもとづく本来の地方自治とは、縁も所縁もない。財界・大企業が「究極の構造改革」と狙う「道州制導入」そのものである。

地方分権ということばは、保革を問わず甘い響きをもつ。しかし、いま橋下氏らが推進する「地方分権」とは、日本経団連が「究極の構造改革」とたたえる道州制にほかならない。道州制の導入は、日本経団連の「第二次提言」が明記しているように、そのねらいは、「官の役割をゼロベースで見直し」、「小さな政府、民主導の経済社会」めざして、「規制改革の推進や官業の民間開放…を徹底する」ことである。道州制は、国の仕事を外交・軍事・司法などに限定し、社会保障や福祉などの行政サービスを地方に押しつけ、自立自助の名で住民負担に切り替えることで、自治体を財界・大企業のための開発政策や産業政策の道具に変えてしまおうというものだ。憲法の地方自治の原則とは縁も所縁もない代物だ。

「タレント知事」の騒ぎに便乗している横浜市の中田宏市長や松山市の中村時広市長らの思惑もはっきりしない。彼らは、日本新党出身の元衆院議員の仲間である。当面は「地方分権」を争点にさせながら、次を狙っているのかも知れない。彼らの目的は来年の参院選挙との指摘もある。今回は、東国原、橋下知事に便乗して、自分たちの露出度を増し、名前を売る。そして総選挙後の政治情勢や勢力分布を見ながら来年の参院選に打って出ようという思惑だ。

それにしても、彼らのもくろみ、計算に乗せられて、彼らの一挙手一投足を後生大事に報道するマスコミは、ほとんど思考停止である。東国原知事や橋下知事らそれぞれは、われこそは、われこそはの目立ちたがりばかりであって、内容がない。だから結局ばらばらで目指すところもはっきりしない。橋下知事は、国政転出に意欲を示す東国原知事との連携について、「やり方が違う。自民党からの出馬が無理な場合でも、直ちに参加を求めることはない」などと、連携はしないと言い出している。
あくまで支持政党表明にこだわる橋下知事に対して、全国の多くの知事、市長も、「先走り」と冷ややかに見ている。どの党の推薦を受けようが当選すれば、住民全体の奉仕者であるという地方自治体の首長としては、当然だろう。 

郵政解散のときに小泉劇場に加担したマスコミは、再び「地方分権」だけの「タレント知事」劇場に加担するのか。国民の暮らしや外交など重要な争点が山積するときに、小泉劇場の郵政解散のときのようなシングルイシューで、それ一本で今度の選挙の争点を絞ってしまうことは、自民党の窮地を助けることにしかならない。 国民の側の冷めた対応が求められる


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