プロメテウスの政治経済コラム

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与党・民主合意の水俣病特措法案  患者団体が抗議の座り込み

2009-07-06 20:36:35 | 政治経済
自民、公明、民主各党の政調会長、国会対策委員長らは7月2日午前、水俣病未認定患者の救済に関する特別措置法案について、救済範囲に全身性感覚障害などを加えるとともに、補償費用を捻出するための原因企業チッソの分社化を民主党が容認する修正内容で合意した。そして特別措置法案は3日、自民、公明、民主3党の委員しかいない衆院環境委員会で審議もせず可決されたあと、3党の賛成多数で衆院本会議を通過した(日本共産党、社民党は反対)。
先月から国会前で座り込みを続けていた不知火患者会の大石利生会長は「私たちは、民主党の鳩山党首に面会と説明を求めたのに、何時間も待たされたあげく会えないと追い出された。しかし、私たち被害者は民主党のようにフラフラしていない。加害企業のチッソを法律(特措法)で守るような幕引きは絶対許さない」とこぶしを高く上げた「しんぶん赤旗」2009年7月3日)。患者団体を代表して、病の体をおして何度も何度も、国会近くの民主党本部に足を運んだ水俣病患者らは、民主党がチッソを免罪する「分社化」容認に豹変したにことにたいし「被害者への背信だ」と強い不信を募らせている

1956年に水俣病が公式確認されてからでも半世紀以上が経つ。それでもなお遠い解決の道のり。支配層の被害者に対する対応は、常にどの案件でもお座成りで、司法で断罪されるとその都度またお座成りの対応を繰り返す、この国の政治の貧困そのものだ。何一つとして、被害者の声を聞こうとしない。常に何事も「お上の都合」なのである

不知火海の魚を食べた人に手足の痺れや言葉のもつれが見られて十数年経ってから政府は、やっと公害病と認定。しかし、その対象や被害補償の内容が場当たり的なために訴訟に何度も持ち込まれる。とくに77年にはチッソの懐具合(認定患者への一時金、年金支払い負担がある)を思いやって基準を狭め、95年には自社さ連立政権が「最終決着」を図ろうとする。裁判が長引き、高齢化にあせる被害者団体の多くは一時金260万円の政治決着に応じるほかなった。しかし、関西訴訟の原告団は、屈することなく裁判を続け、04年に最高裁判決が出る。原告家族に認定患者がいるなど、一定の条件を満たせば感覚障害だけでも賠償を受けられる、とした。しかし、国も県も認定基準を見直そうとしなかった。そこで最高裁判決に従わない政府に対し被害を訴える人が急増した。

今回の修正特措法案もまたまたお座成りの繰り返しである。だから、体調がよくないにもかかわらず、患者団体の人びとが抗議の座り込みを続けざるを得なかったのである。たしかに、これ以上裁判を続けるには高齢になりすぎた人びとを中心に、一日も早い解決を願い、法案成立を望む患者団体もいる。しかし、お座成りの繰り返しは、問題を先延ばしするだけである。これまでの失敗の教訓を生かそうとしない自公民には、本気で問題を解決する気があるのか!後は野となれ山となれの無責任そのものである
法案の中身を一口でいえば、多くの被害者を切り捨て、加害企業を免罪して幕引きを図ろうとするものだ

現在、公害健康被害補償法にもとづいて水俣病の認定を申請している被害者だけでも6300人を越える。水俣病関西訴訟で水俣病の発生と拡大の責任がチッソだけでなく国と熊本県にもあると断罪した04年の最高裁判決をうけて、認定申請する被害者が増えたのは当然であった。しかし今でも差別を恐れ、声をあげられない被害者もいる。今、必要なことは(なぜ今までやらなかったのか呆れるのだが)、水俣病の原因となったチッソの工場排水が流された不知火海沿岸全域で住民の健康調査をやることだ。被害の全容がわからいままでの被害者の救済はありえない少々救済範囲を広げて(手足の先ほどしびれる感覚障害のほかに、民主党の主張を取り入れ全身や口、舌の感覚障害、求心性視野狭窄の4つの症状を法案に明記)しても「被害者を大量切り捨てにする幕引き」の可能性が高い(認定申請者や訴訟提起者は見せしめ的に排除)。しかも救済窓口の期限を区切ろうとしている。こんなことが許されるわけがない。

チッソの分社化も大きな問題だ。加害企業は被害者全員の救済が終わるまで当然責任をもたねばならい。だからこそ国や熊本県は公的資金を貸し付け、チッソが倒産しないように支援してきた。好採算部門を分社化しておいて持ち株を売って親会社(加害企業)が清算消滅する。補償・救済責任を会社消滅でうやむやにしようとするのだなぜ補償・救済責任と別個の問題であるべき分社化を同じ法案に盛り込むのか。これでは「被害者救済法」ではなくて「加害者救済法」ではないか!民の利益よりも資本の利益を優先する日本のこれまでの政治の貧困そのものだ

支配階級とその政治的代理人らの「お上の都合」が勝ったかのように見える。しかし、自公民の誠意のなさが関係者の間でまた明白となった。水俣病の苦しみを背負ってきた人たちは決してへこたれない

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