プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

世界的株価の動揺続く  いま求められる世界的な景気対策の中身は?

2008-10-23 16:52:27 | 政治経済
欧米を中心とする世界的な景気悪化懸念の広がりを背景に内外の株価が再び揺れ動き始めた。世界の政策当局は金融危機への対応に追われており、大規模な景気対策まで手がまわらない状態だ。市場は、金融危機への対応から進んで、世界各国の大型景気対策を催促する相場となっているようだ(「ロイター」10月23日14時33分配信 )。迫る恐慌の性格・求められる景気対策の中身は何か。

23日の東京市場では日経平均が10日につけた年初来安値を更新、午前中に一時8000円割れ寸前まで下落した(終値は前日比213円71銭安の8460円98銭)。金融危機への対応に追われる各国政策当局は景気対策でも後手にまわるとの見方が強く、株式市場は景気悪化に焦点を合わせている。市場参加者の間ではバブル後安値である7603円が意識されている(「ロイター」同上)。
外需依存型経済の日本の場合、海外景気の悪化による需要減少がマーケットに大きく響く。9月の貿易黒字額は前年比94.1%減。エネルギー価格高騰による輸入拡大もあるが、対米・対EU輸出の減少が目立つ。対米黒字は前年比マイナス28.1%、対欧州連合(EU)黒字はマイナス25.6%に落ち込んだ。欧米だけでなく、これまで堅調だった対アジア輸出にも減速が目立ってきている。これに、円高が追い討ちをかけ、日本の輸出産業を追い込んでゆく。これまで値を保っていたユーロまでもが急落し輸出採算は一段と悪化する(「ロイター」同上)。

ここで必要なことは、日本のみならず世界各国が協調して内需拡大策を打ち出すことだ。ところが、弱肉強食の資本主義では、企業業績が悪化すると、大企業は、労働者や中小企業・業者へいっそうしわ寄せしようとする。「日経」10月3日付によると、トヨタ自動車は国内工場で働く期間従業員を9月末までの半年間で約二割削減した。直近3カ月で約1500人を削減。ピークの05年6月に比べ期間従業員は四割減った。トヨタグループでは、子会社のトヨタ自動車九州が8月までに派遣800人を雇い止めにした。トヨタのある下請け企業の経営者は、どんな状況になっても、年二回の部品単価切り下げの「定期便」は続いていると嘆く(「しんぶん赤旗」10月19日)。

ツケを雇用や中小企業に回わせば、景気をさらに悪化させることは明らかだ。世界的景気後退は、世界的規模での「資本主義の根本矛盾」=「生産と消費の矛盾」の現れである。米国型「金融モデル」のもとで「金融の自由化」と市場原理主義の経済政策を世界に広げて、基軸通貨ドルの特権によってアメリカに資金を集中し、ドル高、株高を続けることで米国経済は繁栄してきた。バルブ経済のもとで、莫大な貧困層を抱えながらもアメリカ国民は、「過剰消費」を謳歌してきた。米国の「過剰消費」を支えたのが、日本、中国などの輸出であった。その意味で、米国の「過剰消費」は、海外での「過少消費」(=「過剰生産」)の裏返しであった。米国だけでなく、日本や中国、その他の新興国もふくめグローバルな規模で展開されてきた資本蓄積の矛盾(グローバルな「生産と消費の矛盾」)が、まず米国で噴き出したのだ(友寄英隆「米国発の金融危機」「しんぶん赤旗」10月21日)。

皮相な株価対策ではなくて、世界的な過剰生産恐慌の危機に歯止めをかけることがいま求められている。
第一。国民生活密着型の緊急対策― 恐慌の犠牲を勤労者、中小業者にしわ寄せしない需要・供給の両面からの対策。とくに低所得者・失業者・自営業者を救済する政策。
第二。米国型「金融モデル」の改革― 金融にたいする民主的な規制の再確立。金融の投機化の規制・透明化。金融制度の民主化。新興国を含むルールある通貨・金融秩序を構築するための国際協調。
第三。新自由主義的資本蓄積の改革― ワーキングプアを解消する労働改革。物づくりを重視、市場まかせ・金融優先でない産業政策。大企業・富裕者への公正な負担で医療・福祉制度の確立。環境重視の「成長モデル」の構築。
(友寄英隆 同上)。

大企業・大銀行や大資産家の救済を最優先する、麻生自公政権の「追加景気対策」がいかに的外れであるかは明らかであろう。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。