プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

新テロ法延長案 給油活動を停止すれば日本の国際的信用力は低下するか

2008-10-22 19:06:39 | 政治経済
海上自衛隊のインド洋派兵を一年間延長する新テロ特措法改定案が、21日の衆院本会議で自民党と公明党の賛成多数で可決され、衆院を通過した。参院では否決される見通しだが、民主党が早々と採決に応じる方針のため(民主党の出鱈目については、10月9日付参照)、衆院の3分の2以上の多数でただちに再可決され、月内にも成立する可能性が高い(「朝日」10月21日)。給油活動継続の賛否については世論がわかれている。アメリカ軍やNATO軍の空爆で犠牲になる子どもたちなど無辜(むこ)の人々の運命を想像する力を持つ人々は、反対である。米軍の軍事作戦に協力しないことは、テロとの戦いからの離脱だと煽る政府や大マスコミに同調する人々は、賛成である。テロと戦う国際社会の取り組みに積極的に貢献するということは、即、アメリカ軍やNATO軍の軍事作戦に協力することなのか、じっくり考えてみなければならない。

米軍による侵攻開始から7年を迎えたアフガニスタンで、米欧諸国の侵攻軍と武装勢力タリバンとの武力衝突が激しくなり、双方の兵士だけでなく民間人にも大きな犠牲が続出している。国連事務総長は、今年9月、「治安情勢は著しく悪化し、8月の治安事件数はタリバン政権崩壊以降最多」と報告している。国際人権団体も、米軍の空爆による犠牲者が急増し、「アフガン国民の反発を招いている」と指摘。米軍の掃討作戦が新たな憎しみと暴力を生み、さらなる情勢悪化を招く悪循環に陥っているいまや7年を迎える戦争が米軍に見通しのないものとなるもとで、誰と何のためにたたかっているのかさえはっきりしない状況なのだ。米国は軍事力による制圧をめざし、地上軍の増派を進めている。大統領選挙を控え、オバマ、マケイン両候補も増派を主張している。マケイン氏がイラク戦争も重視するのに対して、オバマ氏はイラクからアフガンへ焦点を移すという程度の違いしかない(「しんぶん赤旗」2008年8月24日)。

しかし、戦争でテロはなくせないのではないか――これが、心ある人びとの国際的な共通認識となりつつある。
米傀儡であるアフガニスタンのカルザイ大統領さえ、タリバンとの政治的和解をよびかけ、交渉をはじめている。イギリス軍の現地司令官は、軍事的な勝利は「不可能」として「政治的解決」を求め、国連の現地特別代表は、いま必要なのは「軍の増派」ではなく「政治の増派」だと強調している。アフガニスタン駐在の英国大使は9月、同駐在の仏次席大使との懇談で、「米国の(アフガニスタン)戦略は失敗の一途をたどっている」と述べ、増派すれば「われわれが占領軍としていっそうはっきりと認識され、標的にされる人数も増えることになる」と警告していた(「しんぶん赤旗」2008年10月3日)。

インド洋での給油活動を停止することは、日本の国際的信用力の低下となるのだろうか。
新テロ特措法の成立前、大手マスコミは、仮に自衛隊によるインド洋での給油活動がストップすれば、日本の国際的信用力は低下すると盛んに書きたてた。しかし、昨年11月から今年1月まで艦船2隻が日本に戻ってきている間も、インド洋でのオペレーションは変わりなく行われ、日本政府の国際信用が低下する事態とはならなかった。新たな情勢下でも、引き続き給油の継続は必須なのか。また、給油活動だけが国際貢献なのかが真剣に問われなければならない。
日本政府は90年代以降、憲法9条を真っ向からふみにじって、アメリカとともに海外で戦争できる体制づくりをすすめてきた。とりわけ9・11テロ以降、インド洋や戦地イラクに自衛隊を派兵し、米軍に協力しないことは、国際貢献からの離脱であるかのように世論を欺いて、日米軍事同盟を地球的規模に拡大・強化してきたしかし、その内実は、米国の先制攻撃戦略につき従うことなので、こうした日米同盟強化路線の行きづまりと破たんはいわば必然であった。
いまや米国流は、軍事的にも経済的にも国際的孤立を深めつつあることを肝に銘じるべきだ

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