プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

金融不安に加わる世界的な実体経済悪化 カンフル剤だけではなく、長期戦略を

2008-10-05 18:52:45 | 政治経済
日本銀行が1日発表した9月の企業短期経済観測調査(短観)は、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が、代表的な指標である大企業・製造業でマイナス3と、6月の前回調査のプラス5から大幅に悪化した。金融危機に直面している米経済の後退観測は日に日に強まり、その波は欧州から新興国に押し寄せ、外需依存度の高い日本経済は、正念場を迎えようとしている(「ロイター」 10月 3日)。麻生・自公内閣は、補正予算、景気対策と騒ぎ立てているが、「構造改革」路線と「外需頼み・内需ないがしろ」の体質を根本的に見直す戦略を持たない。いくら「カンフル剤」を打ち、「ばらまき」をやっても矛盾を深めるだけだ(「しんぶん赤旗」10月5日)。

3日のニューヨーク株式市場は、米下院で緊急経済安定化法(金融安定化法)の修正案が可決されるとの期待感が高まり、ダウ平均は一時、313ドル高まで上昇した。しかし、法案可決後は、同日発表された米雇用統計の悪化で景気先行き懸念が再燃し、取引終了にかけて売りが優勢となり、ダウ平均株価の終値は前日比157・47ドル安の1万325・38ドルと3日連続で下落し、約2年11か月ぶりの安値となった(「読売」10月4日)。
国際通貨基金(IMF)は2日、世界経済見通しの分析部分を公表。過去30年間、先進17カ国で発生した銀行、証券、為替市場での113の金融混乱の事例を調査。その結果、米国が現在直面する金融危機は「最も深刻な事例の一つ」で、米国経済が急激に悪化する可能性が極めて強いと結論付けた(時事通信10月2日)。

米国経済の景気後退が日に日に明確になりつつあるなか、対米輸出に大きく依存している日本企業は、この先かなりの打撃を受けるのは間違いない。設備投資も減少傾向である上、個人消費もさえない。もともと「外需頼み・内需ないがしろ」路線できた日本経済は、ここにきて総崩れの様相だ。日銀の9月の生活意識調査によると、81%の人が景気は「悪くなった」と答えている。「ゆとりがなくなってきた」人は65・2%に上る。所得の低迷が長引いているところに、投機マネーの流入による石油や食料品など物価の高騰が、生活と営業に大きな打撃を与えている「構造改革」路線と「外需頼み・内需ないがしろ」路線のもと、最近の日本経済は、トヨタやキヤノンなど大企業が過去最高の利益を上げ、経済が成長しても、国民の家計にはまったく波及しない体質になってしまった(「しんぶん赤旗」同上)。

それは、なぜか。安い使い捨て自由の労働力をあらゆる分野に蔓延させて、コスト破壊を実現し、超低金利で利子所得を強奪し、多国籍大企業は史上空前の利益をあげながら、税負担は減税措置によって、ほとんど横ばいである。一方、小泉「構造改革」以来の国民の負担増は、定率減税の廃止や社会保障改悪などで年13兆円(7年累計で50兆円近く)。4人家族で年40万円の負担増である。同じ期間の大企業・大資産家減税は年5兆円、10年前と比べると7兆円だ。超低金利とコスト破壊で搾取・収奪されたうえのこれだけの負担増では、経済が成長しても、国民は不景気のトンネルから抜け出せないのは当たり前だ(「しんぶん赤旗」同上)。

「日本の企業の公的負担(税と社会保険料の合計)は、政府税制調査会の資料によっても、自動車製造業では、フランスの73%、ドイツの82%にすぎない。表(おもて)の法人実効税率は約40%であっても、日本の大企業は、研究開発減税や外国税額控除などの数々の優遇税制をフルに活用して、トヨタ自動車の07年度の実法人税負担率は28%だ。また、大銀行13行の負担率は繰越欠損金控除を行い、なんとわずか4%だ(「しんぶん赤旗」同上)。

「構造改革」路線と「外需頼み・内需ないがしろ」の財界本位の経済政策にメスをいれない限り、日本経済の安定的成長はありえない。大企業のもうけを最優先にした政治を根本から転換し、雇用、社会保障、農業や中小企業を立て直し、国民の生活を応援することによって、土台から経済の体質を改善することが求められている(「しんぶん赤旗」同上)。

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1 コメント

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Unknown (Unknown)
2008-10-05 19:27:46

『椿事件』

1993年9月21日、民間放送連盟の「放送番組調査会」の会合の中で、
テレビ朝日報道局長の椿貞良が、選挙時の局の報道姿勢に関して

「小沢一郎氏のけじめをことさらに追及する必要はない。
今は自民党政権の存続を絶対に阻止して、
なんでもよいから反自民の連立政権を成立させる
手助けになるような報道をしようではないか」

との方針で局内をまとめた、という趣旨の発言を行う。

(ウィキペディア「椿事件」)
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