プロメテウスの政治経済コラム

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財界・富裕層のために消費税大増税を国民に押し付けた民自公党首会談  民主連合政権の樹立を!

2012-08-09 20:54:59 | 政治経済

国民世論を受けて8月7日、野党6党・7会派が、衆議院に野田内閣不信任案を、参議院に問責決議案を提出し、これに慌てた自民党が野田政権に解散・総選挙を要求して、一時は、消費増税法案は廃案かという局面となったが、最後は民自公党首会談で決着。これで、増税法案は早ければ10日にも参院で採決され、成立する見通しとなった。一番喜んでいるのは、財界とその手先ども―財務官僚及び大手マスコミであろう。3党密室談合体制は、民主党の自民党化で破綻してしまった保守二大政党制を補い、新自由主義「改革」と軍事大国化を強行するための支配階級にとってなくてはならない砦である自民党は長年にわたって統治を担ってきた経験から、支配階級の政党として、今の日本の階級抗争の焦点が何かを承知していた。土壇場で3党密室談合に戻った所以である。
民主党政権の変質の3年間の経験は、たとえ新自由主義の被害の是正を掲げる政権ができたとしても、それだけでは新自由主義の政治に終止符を打つことができないということである。新自由主義の政治に終焉をもたらすには、新自由主義の政治を変え、大企業と富裕層に負担と規制を課し、新しい福祉の政治を実現するという目標をはっきりと掲げた政治、そうした綱領と具体的な対抗構想を持った民主連合政権を実現することが不可欠である。民主党は再び新自由主義の政治に回帰してしまった。大手マスコミや優秀な官僚・学者を手先に使う支配階級の権力は強大なのだ

 

どの世論調査を見ても、5割から6割の国民は消費税大増税に反対と答えている。とりわけ今国会での採決には6割から7割の国民が反対だとの声をあげている。それでも、民意にも公約にも反する大増税を3党党首会談で国民に押し付けた。

民自公3党が消費税増税法案の早期採決で合意したことについて、国民の生活が第一、日本共産党、みんなの党、社民党、新党きづなの5党の国対責任者は8日、国会内で共同記者会見を行い、3党による増税談合を厳しく批判した。
第一に、「これまで国会では、民自公3党で合意すると後は問答無用という運営が多く行われてきた。今回の3党首での増税法案成立の合意は、3党談合体制の最も悪質なものだ」。
第二に、「9日中にも行われる内閣不信任案の採決において、自公両党が欠席もしくは反対すると伝えられているが、それは事実上、野田内閣を信任する行動であり、強く抗議する」。 
第三に、「そもそも消費税増税法案は廃案にすべきものだ。国民生活にきわめて大きい影響のある法案を成立させて、その後に国民の信を問うのではなく、成立の前にこの法案が是か非か、国民に即問うべきだ」。

 

日本で、新自由主義の政治が本格的に開始されたのは、22年前、1990年代初頭のことである。冷戦が終わり、世界の政治と経済のグローバル化が一気に進んだ。大企業が「活躍」する自由な市場が世界に広がり、グローバル競争が激化する中で、大企業が大競争のもとでも利潤を確保できる体制をつくる「構造改革」、新自由主義「改革」が先進諸国の政治課題となった。日本ではそれに加えて、今まで海外派兵できなかった自衛隊の派兵、改憲を求める軍事大国化の要求も同時に起こった。

新自由主義の政治は、大きく3つの柱から成り立っている。

一つは、大企業が大儲けするための労働規制の緩和、賃金引き下げである。

二番目は、大儲けした利益を税金として徴収されないような体制、大企業負担の軽減、そのための小さな政府、公務員給与の削減、社会保障など福祉の「構造改革」である。大企業減税のかわりの国民負担増の強制。3党の隠れ大連立による「社会保障と税の一体改革」は、まさに第二の柱の実践である。

三番目は、大企業が大儲けの結果溜め込んだ内部留保の投資先、成長戦略である。TPP、原発輸出などである。

 

新自由主義「改革」と軍事大国化の政治に対し、私たちは、さまざまな分野で「反貧困」の社会運動や「9条の会」の平和運動、最近では「反原発」の市民運動をおこなって対抗してきた。平和運動と反「構造改革」の運動が民主党のマニフェストを変え、その変わった民主党の政策を支持することで、私たちは「政権交代」を実現したのだった。

民主党政権の誕生で焦ったのは財界とアメリカだった。「普天間の国外・県外移転」「密約の公開」に焦ったオバマ政権は、鳩山政権に露骨な圧力をかけた。財界も、民主党に対し、「構造改革」の停滞を危惧し、大手マスコミを動員して財源問題などで集中砲火を浴びせ、鳩山政権をつぶした。

 

「社会保障と税の一体改革」、TPP、原発輸出・再稼働、日米同盟の強化は、いずれも国会を通すとなると民主党単独では不可能である。二大保守政党制の破綻を覆い隠しながら大連立を組ませることが支配階級の死活的な戦略となる。民自公3党が衆院段階で「「一体改革」の「修正」で合意したとき、大新聞は「政治を進める転機に」(「朝日」)、「『決める政治』を評価する」(「毎日」)などと手放しで評価した。今回、消費税増税法案成立の雲行きがあやしくなったときの大新聞の慌てぶりは尋常ではない。「(3党合意を)今になって蔑ろにすることは到底許されない」(「読売」)「ここで改革を頓挫(とんざ)させることは許されない」(「朝日」)「民自公3党合意の…破棄は政党の責任放棄に等しく、断じて許されない」(「毎日」)「3党は…成立を最優先すべきである」(「日経」――支配階級の手先は国民に対してここまで言うのだ。

国民本位の政治を実現する道は、財界とそれに協力する保守政党、高級官僚、大マスコミの抵抗と攻撃に立ち向う、険しいがけれども偉大な事業である。それには、日米軍事同盟と新自由主義「構造改革」に反対する広範な国民連合を基礎にした民主連合政権の樹立が不可欠なのだ。


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