プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

「ねじれ国会」総括   そこから見えてきたものは?

2008-01-17 18:30:12 | 政治経済
07年9月10日に召集され、14年ぶりの「越年国会」となった臨時国会は15日、128日間の会期を終えて閉会した。明日から通常国会がはじまる。「ねじれ国会」は、与党の思い通りにならないために、さも効率が悪いように言われた。しかし、小選挙区制のもと多様な国民の意思が反映されていない衆院が異常であって、国会は与野党が常に伯仲しているほうがより民主的である。この機会に「ねじれ国会」を総括してみよう。そこから見えてきたものは、階級的基盤が同類政党の与野党伯仲の危うさである。階級社会の国会が真に民主的であるためには、階級的基盤を異にする政党が伯仲しなければならない。

参院の与野党逆転状況から、福田康夫首相は、「国会はいわゆる『ねじれ現象』となり、世界のスピードに合った運営ができていないというのが現実です」(「自由民主」一月一・八日合併号)などと嘆いてみせたが、実際にはどうだったのか。

今国会で成立した法案は26件。06年秋の臨時国会を1件上回った。国民生活にとってプラスになるものは、衆参の「ねじれ」は障害ではないというのが、「ねじれ国会」の総括から見えてきた第一の特徴点である。
改正被災者生活再建支援法は、当初、政府は、2008年の通常国会に法案を提出する予定でしあったが、参院選挙後、民主党が改正案を提出したのをうけ、与党も提案。日本共産党がすみやかに成案を得るよう与野党間協議をよびかけるなどして、住宅本体支援を盛り込んだ改正案が全会一致で実現した。薬害肝炎被害者救済法、改正「中国残留孤児」支援法も関係者の長年のたたかいが全会一致での可決となって実った。

政府・与党案が、国民の利害に反するものなら、与党は「ねじれ国会」で法案を通すためには、野党と妥協して修正するほかなく、民意を無視して多数横暴をくり返す事態こそ問題である。なぜ、こんな当たり前のことがつい最近まで実現しなかったのか。
国民がこのような「ねじれ国会」状況を生み出した背景には、多くの国民の生活状態の悪化がある。戦後長い間の日本型開発主義国家体制のもと、大枠として自民党政治を根本から批判しなければならないほど、階級対立は先鋭化しなかった。90年代以降になって、本格的なグローバル資本主義化とともに、資本と労働とういう本質的な階級対立が徐々に先鋭化しはじめた。小泉・竹中構造改革は、資本の搾取と収奪にたいする規制を緩和し、階級対立を先鋭化するものであったが、その時でも、人びとは、その本質を見抜くだけの眼力を備えていなかった。企業の成長が、国民生活の向上と対立するものだという経験は、貧困と格差拡大という形が誰の目にも見え始めた、つい最近のできごとである。

この与野党修正ということにかかわって、「ねじれ国会」のもう一つの特徴点も見えてきた。階級的利害が敏感にかかわる法案では、与党と野党・民主党との修正は、中途半端で国民の利益を真に実現するものとはならないということである。
一例が、中途半端な「改定」最低賃金法、「改定」放送法。使用者が一方的に労働条件を引き下げることができる労働契約法の強行。「改正」政治資金規正法は、収支報告書への不必要な「監査」の義務化や「適正化委員会」の設置など、税金のムダ遣いにつながる規定を盛り込み、政党助成金の支出の全面公開や企業・団体献金の問題は不問。
なぜこうなるのか。それは、自民党も民主党もその階級的基盤を財界、アメリカ政府という日本を支配する二つの支配層においている、同質・同類の政党であるからである。表面での「対決」の裏で、ともすれば「政策協議」の名での談合政治に流れる根拠はここにある。新テロ特措法をめぐる最終盤の攻防で「迷走を重ねた」民主党は、廃案から継続審議を求める方針に転換。「対案」提出とあわせ、政府に「助け舟」を出した。小沢代表にいたっては同法再議決の採決の直前に退席、敵前逃亡までやってのけた。

「ねじれ国会」の総括から見えてきた教訓はなにか。
国民の民意を国会に反映するためには、与野党伯仲の「ねじれ国会」は障害になるどころか、より民主的であるといえる。ただし、与野党伯仲といっても階級的基盤を同じくする同質・同類の二大政党はでは、階級的利害が敏感にかかかわる点では、支配層の利害を代弁する政治が続くだけであるということだ。これでは、国民の利益との「ねじれ」は決して解消されることはない。
階級的基盤を国民の側に置く共産党のような政党・政党連合と階級的基盤を支配層に置く自民・民主のような諸政党が与野党伯仲になってはじめて日本の政治に支配層と対抗勢力が拮抗した民主的緊張関係が生まれたといいうるのだ。

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