プロメテウスの政治経済コラム

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野田内閣発足  庶民派「ドジョウ内閣」の大ウソ

2011-09-03 21:19:55 | 政治経済

衆参両院で首相に指名されてから3日、野田内閣がようやくスタートした。早速、大手マスゴミ(植草一秀さんに倣って、私もこれから大手マスゴミと呼ぶことにする)は、庶民派「ドジョウ内閣」などと、もて囃している。「…泥臭く国民のために汗をかくドジョウの政治をとことんやりたい」――何が、どこが、国民のために汗をかくドジョウの政治か !! 菅の後を承けた野田に託された政治的役割はなにか。なぜ、野田は、組閣前に経団連詣でを行い、自民、公明両党と党首会談を行ったのか。そのことを分析するのが、大手マスコミの仕事だろう。

 

菅前首相の後を承けて野田代表が誕生したとき、米倉弘昌経団連会長は、「(菅直人前首相とは)要するに首から上の質が違う」「大連立でも緩やかな協調でも、どんな形でもいいから挙国一致体制で臨んでもらいたい」と手放しの喜びようである。この人、同じワルでも本当に正直な人だ。福島第1原発の事故が起きたとき、「千年に1度の津波に耐えているのは素晴らしいこと。原子力行政はもっと胸を張るべきだ」と述べ、「政府は不安感を起こさないよう、正確な情報を提供してほしい」と国と東京電力を激励してみせた。今度の野田内閣誕生時には、これまた野田に託された政治的役割をズバリ正直に明らかにした

 

自公政権に対抗するために、小沢、鳩山は民主党のマニフェストを保守の枠組みから逸脱するものに変えた。焦った財界、アメリカは官僚、大手マスゴミ、検察権力まで動員して、菅を政権に据えることに成功した。法人税の引き下げ、消費税の増税、TPPへの参加、普天間基地移転などなど、構造改革政治推進、日米同盟深化路線に回帰させることに成功するかに見えた。しかし、財界とアメリカが安心したのも束の間、菅政権の支持率は低下する一方である。

 

そこに降って湧いたのが、3・11の大震災と原発事故であった。財界と菅政権は、この国難を停滞していた構造改革政策強行の好機とつかまえた。大規模災害からの復興のためには、福祉のムダを削減しても国民が痛みを分かち合う財源が必要だ。たんなる「復旧」ではなく、「創造的復興」のためには、農地の集約化、大規模化が必要であり、漁業の再建のためには、漁協に沿岸漁業権の管理を任せるのではなく、企業の参入が必要だというわけである。しかし、震災対応・原発事故対応の不手際もあって、菅政権の支持率は落ち込む一方。菅首相の看板のもとでは、財界が望むような消費税の引き上げや復興構想ができないことが明らかとなるや、政局は一気に菅降ろし、「菅抜き大連立」の一色となった。こうして、このたび、やっと粘る菅が辞めてくれたのである

 

さぁ、これからは、いよいよ「菅抜き大連立」で財界本位の税制改革、復興構想に邁進するときであるそれが、先の米倉会長の「(菅直人前首相とは)要するに首から上の質が違う」「大連立でも緩やかな協調でも、どんな形でもいいから挙国一致体制で臨んでもらいたい」発言となったのである。その財界の苛立つ気持ちをもっともよく理解しているのが、“エセ庶民派”の野田であった。それが、組閣前の経団連詣であり、自民、公明両党との党首会談であった

野田首相は、2010年代半ばまでに消費税率を10%まで引き上げるとした税と社会保障の一体改革「成案」について、「具体的に実行するべく、与党内での議論を具体的制度設計に向けて進めるとともに、与野党の協議を進めていきたい」と意欲を見せた。来年3月までに消費税増税法案を国会に提出する準備を進めることも改めて示した。東日本大震災の復興財源については「足りない部分については時限的税制措置をとる」と、増税に向けて作業をすすめることを明言した。米倉会長との会談では、官邸主導の経済政策を行うための新たな会議の創設を提起し、財界代表の参加を要請した。財界首脳を政府の中枢に迎え入れ、「構造改革」路線を推進した自民党小泉内閣時代の「経済財政諮問会議」の“復活”を目指すものだ

 

自民・公明両党との党首会談では、民主党の「マニフェスト(政権公約)」見直しを約束した「3党合意」の堅持を約束し、震災復興や税制、円高対策などでの協議機関設置を話し合った。3党の密室会議で、事実上の「大連立」をめざすものである「大連立でも緩やかな協調でも、どんな形でもいいから挙国一致体制で臨んでもらいたい」という財界の要求に応えるものだ。

野田内閣は、庶民派「ドジョウ内閣」どころか、財界直結・民自公翼賛体制内閣である。

 

このよう危機的状況に際して、政治革新の司令部の役割を果たすべき、日本共産党は組織的にも、理論的にも依然、弱小である。労働組合を中心とした変革主体も十分に形成されていない。唯一盛んなのは、昔、革新青年であった、おじさん、おばさんたちの各種の分野での市民運動である。こうなったら、脱原発でも、復興増税や法人税減税、消費税増税に反対する運動でも、TPPの推進に反対する運動でも、米軍普天間基地の問題でも一致できる課題ごとに、大同団結して、ゲリラ的にたたかうほかない。われわれは、今、悪政に反対するたたかいとともに「国民が主人公」の政治への道を切り拓く重大な岐路に立っているのだ。大手マスゴミの“庶民派”攻撃にユメユメ騙されてはならない。


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