プロメテウスの政治経済コラム

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ドバイ・ショック  投機マネーが跳梁する現代経済の脆さ

2009-11-27 19:22:05 | 政治経済
27日の東京株式市場で日経平均株価は急落。終値は前日比301円72銭(3.22%)安の9081円52銭だった。。アラブ首長国連邦(UAE)ドバイ首長国政府の政府系持ち株会社、ドバイワールドの資金繰り懸念から前日の欧州株式相場が大幅安となった流れや円相場の上昇を嫌気した売りが膨らんだ。「ドバイショック」を受けてアジア株式相場や米株価指数先物が軒並み急落。世界的な株高や商品高をけん引してきたリスクマネーが今後、資産圧縮を急ぐとの見方が売りに拍車をかけた。外国為替市場では、円高が加速し、1ドル=84円台に突入した。(「日経ネット」2009年11月27日15:26)。急激な円高は、輸出企業を中心とした日本経済に大きな影響を与えることを必至である。投機マネーが跳梁する現代経済の脆さを制御する術をわれわれは未だ獲得していない。

 アラブ首長国連邦(UAE)を構成する首長国の一つであるドバイで、政府の投資機関として機能してきたドバイワールド社の資金繰りの行き詰まりが急浮上した。ドバイワールドは、不動産事業などの資金調達のために発行した債券の満期償還ができなくなり、12月14日に満期を迎える35億ドル分の債券(イスラム債)の満期を半年延期するよう債権者に要請した。
ドバイワールドは、ドバイの首長(君主)であるシェイク・マクトゥームが株式の大半を持ち、事実上ドバイの政府投資機関である。同社は持ち株会社で、傘下に20社以上を保有する。その中の一つが、不動産事業を手がけるナヒール社(Nakheel)である。同社は、ドバイ市の前面のペルシャ湾の海上に、椰子の木や世界地図をかたどった巨大な人工島をいくつも造り、リゾート風の高級マンションを無数に建てて世界中の金持ちに売ったり、世界一の高層ビルを建てたりする派手な不動産事業を展開してきた。

 世界の投機マネーがドバイの不動産バブルを煽ってきた。椰子の木をかたどった人工島の一つ、パームジュメイラのプールつきの高級コンドミニアム(4ベッドルーム)の平均的な価格は、2001年に売り出しを開始した時には150万ドルだったものが、07年には400万ドルまで高騰した。世界的な金余り現象の中、欧米の投資家や著名人らがこぞって購入していた。だがその後、リーマンブラザーズ倒産を皮切りとした金融危機によって世界的な資金収縮が起こり、分譲価格は半年間で半値になり、その後さらに下がって、今では往時の10分の1の価格である40万ドルで投売りされている。
ドバイは中東の国際金融センターとなることを目指し、金融関係者の人口増加を見込んで高級住宅の建設を進め、パームジュメイラなど4つの人工島に合計200万人が住める住宅を新築する計画だった。しかし、昨秋以来の世界危機で金融商品の取引は激減し、ドバイは金融センターになれず、外国人の人口は減少し、来年にはドバイの住宅の25%が空き家になり、不動産価格はさらに3割下がると予測されている。ナヒール社がこれ以上の住宅やオフィスビルを作っても売れないのは確実で、同社の資金調達は難しい。海外の投機マネーが引き上げたら、ドバイは不動産や事業を切り売りするしかないが、世界不況の折、買い叩かれることは必至だ(田中宇の国際ニュース解説「ドバイの破綻」2009年11月27日)。

 ドバイショックは、日本の関連企業の足元の業績にインパクトを与えると同時に、市場が縮小傾向を示す国内に代わって大きな成長分野と捉えてきた中東地域の混乱は、国内建設、建機業界の成長戦略にも大きな影響を与えそうだ。ドバイ関連の工事では、大林組と鹿島のドバイ都市交通システム建設工事をはじめ、多くの工事受注残高を抱えている状況である。各社の案件をみると、ナヒールが発注した工事も目立つ。これまでもドバイ関連工事については資金回収リスクを指摘する声が出ていたが、今回の政府系企業の返済延期要請で深刻度が増す可能性もある。開発ラッシュとなっていたドバイなど中東地域は、大手ゼネコンにとって今後の成長戦略を描く上で重要な地域に位置づけられた経緯がある。足元の危機に対する対処のみならず、今後の展開にも影響を及ぼすと想定される。ゼネコンが苦境に陥れば、建設機械業界にもその影響が波及する。そのほか「原油価格の上昇によって、中東諸国の投資についての姿勢が前向きに変わってきた」と回復が期待され始めたプラント業界や、同地域で各種プロジェクトに参画する大手商社にも暗雲を漂わす(「ロイター」2009年 11月 27日 14:01)。

 主要な生産力設備がすでに整った先進資本主義国を中心に投資先を失った過剰貨幣資本が投機化し、あちこちでバブルを生み出し、銀行危機や通貨危機を生み出すことが常態化する現代の国際金融市場を健全化することは、ほとんど不可能である。しかし、経済を制御・計画化する理論も技術もわれわれ人類は、まだ獲得していない。各国政府の協調で投機マネーの跳梁に制限を加えるという経済問題の政治決定で満足するほかない

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