プロメテウスの政治経済コラム

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普天間基地問題  沖縄から第2安保闘争の萌し 21世紀の日米関係のあるべき未来

2010-05-10 19:11:41 | 政治経済
普天間基地問題をめぐり、鳩山・民主党政権は、前政権と同じく、「日米同盟」堅持の立場から一歩も前進できず、「県外・国外移設」の公約を投げ捨てざるをえなくなり、いよいよ袋小路に追い込まれた。普天間基地を抱える宜野湾市の伊波洋一市長の「あくまで米国が普天間代替基地を県内につくれというなら、われわれは沖縄からの米軍撤退を訴える」という言明にみられるように、2010年4月25日、沖縄は「歴史的な転機」を迎えた。沖縄から「第2安保闘争」(森本敏・拓殖大教授)の萌しが確実に芽生え始めている。日本共産党の志位和夫委員長が7日、全米法律家協会ワシントン支部での講演で示した「21世紀の日米関係のあるべき未来」を予感させる動きだ

 訪米中の日本共産党の志位委員長は7日、米国務省内でケビン・メア同省日本部長、多国間核安全部ジョナサン・サンボア氏と会談し、普天間基地をめぐる沖縄の現況について次のように説明した(「しんぶん赤旗」2010年5月9日)。
「普天間基地を返還する代わりに、別の場所に『移設』するという方針は完全に破たんした」。志位氏自身も参加して開かれた4月25日の沖縄県民大会には、県知事、県内41市町村長すべてが参加し、9万人が集って「普天間基地撤去、県内移設反対」の「島ぐるみの総意」が示された。「この沖縄県民の総意は揺るがない」。
鳩山由紀夫首相が4日に沖縄を訪問し、「県内移設」という政府方針を伝えたが、「これは怒りの火に油を注ぎ、沖縄県民の島ぐるみの団結をいっそう強固なものとする結果となった」。
「私は、4月21日、ルース駐日大使との会談で、『沖縄の情勢は決して後戻りすることはない限界点をこえている』と述べたが、それはいよいよ決定的なものとなっている。『県内移設』という方針は、県民の理解を得ることが絶対に不可能な、展望のない方針だ」。

その上で、志位氏は、「移設先」に名前があがった鹿児島県・徳之島でも島民の6割が参加して1万5千人規模の空前の反対集会が開かれ、三つの自治体の首長がそろって基地を拒否する姿勢をつらぬいていることをあげ、「もはや沖縄県内はもとより、日本国内のどこにも、『地元合意』が得られる場所はない。普天間問題解決の唯一の道は、移設条件なしの撤去しかない。これが私たちの主張だということを伝える」と沖縄県民、日本国民の民意を代弁した。

 第1安保闘争のころ、戦後15年経っていたが、多くの日本国民には二度と戦争に巻き込まれたくないという体験的平和主義が幅広く共有されていた。改定安保条約によって戦争の危険が再び広がるのではないかと懸念をもった多くの国民が敏感に反応して、歴史的な大闘争を繰り広げたのだった。その後、安保闘争に衝撃を受けた支配階級の系統的な融和策(経済優先、軍事小国、アメリカ友好のイデオロギー操作)と戦中派世代の体験的平和主義の忘却が進み、70年前後の沖縄復帰闘争に絡んだ安保論議の盛り上がりも後退していく中で、朝日新聞が「安保と、憲法9条とを巧みに組み合わせる選択は、国民に安心感を与え続けてきた」(今年元旦の社説)というとんでもない的外れの議論を臆面もなく発するところまで、多くの日本国民は、眠り込んでしまった。そして、歴代日本政府は、「日米同盟」を前にすると立ちすくみ、「思考停止」に陥った。
しかし、長年の基地の重圧、悲劇に耐えてきた沖縄県民の怒りがついに爆発した。
サンフランシスコ条約が締結された1951年以降、米軍は銃剣とブルドーザーで、抵抗する住民を強制的に排除し、民家と農地を押しつぶして基地を拡張した。沖縄の基地は、生まれながらにして、占領下における略奪や私有財産の没収を禁じた国際法違反の基地なのだ。

 共産党の志位委員長は、全米法律家協会ワシントン支部での講演で次のように述べた(「しんぶん赤旗」2010年5月10日)。
「米軍基地によって、戦後65年間、沖縄県民は、耐えがたい苦しみを背負わされてきました。沖縄県民の心に共通して刻まれている痛ましい事件・事故があります。1955年には、6歳の少女が、強姦(ごうかん)され、殺されて、海岸に打ち捨てられました。1959年には、小学校に米軍ジェット機が墜落・炎上して、児童11人を含む17人が亡くなりました。1965年には、米軍機から落下傘で降下されたトレーラーに、少女が自宅の庭で押しつぶされて死亡しました。1995年には、小学校6年生の少女への暴行事件が、島ぐるみの怒りをよびおこしました。2004年には、普天間基地に隣接する沖縄国際大学に米軍ヘリが墜落し、あわや大惨事という事故がおこりました。これらはどれも沖縄県民ならば誰もが知る、忘れることができない、共通して心に刻み込まれた悲劇です。」
この長年の基地の重圧、悲劇の累積が、4月25日の9万人が集った県民大会なのです。」

「いま日本政府は、県内の名護市・辺野古沖に海兵隊の新基地を建設する方針をすすめようとしています。しかし、美しいサンゴとジュゴンのすむ海を破壊しての新基地建設の計画は、県民の怒りの火に油をそそぐものとなっています。普天間基地をかかえる宜野湾市の市長は『県内移設を押し付けるなら、沖縄の米軍基地撤去を求めることになる』と言明しました。広大な嘉手納基地に町の面積の実に83%を占有されている嘉手納町の町長は、『安保条約の是非を正面から問うてほしい』とのべました。 もはや日米両政府がどんな合意をしても、沖縄に新基地を建設することは不可能だということを、両国政府は直視すべきだと思います。それを強行するならば、全米軍基地撤去、日米安保廃棄へと怒りはさらに高まるでしょう。

私たちは、日米安保条約を、このまま続けることの是非を、正面から問うべき時代に入ったと考えています。パッカード氏(ジョージ・パッカード米日財団理事長)がいうように、『日本の新しい世代』は、巨大な外国軍駐留への疑問を深めていくでしょう。在日米軍は『日本防衛のため』というが、横須賀を母港とする空母が、沖縄を本拠地とする海兵隊が、出撃しているのは、イラクであり、アフガニスタンではないか。これほどまでに沖縄の人々に犠牲をしいる『同盟』が果たして必要なのか。多くの人々のこうした疑問に、納得のいく答えをもはや示せないでしょう。」
「日本共産党の立場は、もとより反米主義ではありません。私たちは米国、米国民とのほんとうの友情を心から願っています。しかし、ほんとうの友情は、支配・従属のもとではけっしてつくることはできません。対等・平等の関係のもとでのみ、それは可能になります。

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