プロメテウスの政治経済コラム

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消費税増税だけでない菅・民主党の裏切り  消えた公約、変わった公約

2010-06-21 18:33:39 | 政治経済
菅・民主党がマスコミの応援を受けて、首相交代のドサクサに紛れ、急速に保守二大政党への先祖帰りをしている。財界の法人税引き下げの要求に応えるために、消費税増税に舵を切っただけではなく、社会保障改革でも新自由主義・構造改革への傾斜を強めている。同党の参院選マニフェスト(政権政策=公約)の中身は、総選挙当時の公約から様変わりした。鳩山政権誕生前後からの支配階級の民主党に対する政権政党としての陶冶作戦が成功したかのようだ。問題は、参院選挙で国民がこのような支配階級の巻き返しに屈した民主党を前にして、どのような選択をするかである。自民党とその亜流に戻っても政治の中身は変わらない

 「しんぶん赤旗」2010年6月21日より
昨年の総選挙のマニフェストで民主党は、「すべての予算を組み替え、子育て・教育、年金・医療、地域主権、雇用・経済に税金を集中的に使います」と訴え、小泉「構造改革」路線が国民生活にもたらした結果を強く意識し、国民生活改善に大きく比重を移していた。「国民の生活が第一」「コンクリートから人へ」のスローガンは、同党に圧倒的な総選挙勝利をもたらした。民主党の勝利が確実と思われるころから、それまで、民主党の反構造改革政策、とくに福祉への財政出動に不信を募らせていた財界や、同じくその安全保障政策に懐疑の念を高めていたアメリカは、民主党が政権を取ることを前提に、民主党を保守政党の枠内に引き戻すための陶冶の方針に変わった。その結果、鳩山政権は当初の公約より、ズルズルと後退し、国民の期待への裏切りにたいする怒りのなかで、ついに退陣に追い込まれた。支配階級は、民主党の鳩山、小沢という二枚看板を付け替えることによって、国民の怒りを鎮め、同党のマニフェストを変更させるところにまで巻き返したのである

 今回のマニフェストで民主党は、「国民生活」より、消費税増税と米軍基地を押し付ける「大連立」の方向を打ち出した(「しんぶん赤旗」2010年6月21日)。

「強い経済」では、「法人税率引き下げ」を掲げ、「国際競争力の維持・強化…の観点から見直」すとしている。そのほかにも、「総理、閣僚のトップセールスによるインフラ輸出」、「規制改革」、「総合特区」、「新たな成長分野」への支援など、国民がノーをつきつけた「小泉構造改革」への回帰が目立つ。
「4年間は上げない」としてきた消費税も、「強い財政」の柱として「消費税を含む税制の抜本改革」と明記され、「超党派」による協議で「早期に結論を得る」としている。菅首相は「自民党が提案した10%を一つの参考にする」と明言。玄葉光一郎政調会長は「導入時期は最速で2012年秋」と導入時期まで示した。
 
米軍・普天間基地問題では、「米軍再編や在日米軍基地のあり方についても見直しの方向で臨む」とした総選挙公約はすっぽり姿を消し、代わりに、名護市・辺野古への新基地建設と米軍訓練の全国への拡大という「日米合意に基づいて」対処することが明記された。

後期高齢者医療制度の「廃止」公約も180度変質。今回は新たな老人医療制度が「スタート」するまでは「存続させる」と明記。介護労働者の賃金の月額4万円引き上げという公約も削除された。
労働者派遣法問題でも、「製造現場への労働者派遣の原則禁止」という公約は削除され、大穴だらけの労働者派遣法改定案をそのまま押し通す腹のようだ。

 保守二大政党制への回帰の究極は、民意を切り捨てる国会議員の定数削減。総選挙で掲げていた衆院比例80削減に加え、新たに「参院定数40削減」を公約し、菅首相は「できるだけ早期に」実行するとした。

 民主党が支配階級の期待に応えて保守二大政党制への先祖帰りを鮮明にするなか、有権者は「政権交代」から「政治の中身」を模索する段階に直面することになった民主、自民とその亜流では、「政治の中身」が変わらないことだけは確かである。市民はその政治リテラシーにふさわしい政治しかもちえない。いつもにも増して、国民の賢明で適切な選択が求められているのだ。

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