プロメテウスの政治経済コラム

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NHK経営委員3人を不同意  選任プロセスに視聴者の声を反映できる仕組みを

2008-11-21 19:16:05 | 政治経済
「皆さまのNHK」だとかなんとかいって視聴者に対して受信料の「支払い義務」のみを強要するNHK。最近では、福田首相が辞任表明した9月1日以降、自民の総裁選を扱った番組を9月14日までに推定で約15時間流し続け、政権党の広報役を忠実に果たした「不偏不党」と定めた放送法を、最も忠実に実行しなければならない公共放送が、視聴者そっちのけで、政権党、政府の広報TVと成り下がっている。受信料を支払う視聴者が「私たちのNHK」を目指して声をあげるときだ。

参院は21日午前の本会議で、政府が提示した6機関19人の同意人事案を採決した。NHK経営委員会委員4人のうち、みずほフィナンシャルグループ(FG)の前田晃伸社長ら3人と、国家公務員の再就職あっせんを監視する再就職等監視委員会の委員長と委員計5人の2機関8人は、民主、共産、社民各党の反対多数で否決された。午後の衆院本会議では、それぞれ与党の賛成多数で可決されたが、人事案は衆参両院の同意が必要なため、不同意となった。NHK経営委員のうち旅館「玉の湯」の桑野和泉社長は、衆参両院で同意された(「時事通信」2008/11/21-13:34)。

NHK経営委員会委員について、政府は再任の二人(多賀谷一照、篠崎悦子両委員)のほか、前田晃伸氏(みずほフィナンシャルグループ社長)と桑野和泉氏(湯布院温泉「玉の湯」社長)を指名していた。とくに注目されたのは、日本経団連の副会長の前田氏である。いま減益を口実に日本経団連の大企業が非正規の首切りを大々的にすすめ、地球温暖化問題でも、税・社会保障費の分担でもその社会的責任を投げ捨てている。経団連副会長を経営委員に迎えて「皆さまのNHK」が、自主・自立の立場で視聴者に現代の問題や課題を公平に伝えることができるのか。財界首脳のもとでNHKが放送の自主・自律を本当に貫くことができるのかどうかNHKがジャーナリズムとしての役割を発揮しようとすれば、財界の利害と対立せざるをえないのが現実である。

日本経団連といえば、最近、経団連前会長の奥田碩(ひろし)氏が「厚生労働行政の在り方に関する懇談会」で、厚労省に関するテレビなどの報道について、「朝から晩まで年金や保険のことで厚労省たたきをやっている。あれだけたたかれるのは異常な話。正直言ってマスコミに報復してやろうか。スポンサーでも降りてやろうかと」と露骨に放送批判を繰り広げた。財界首脳と放送ジャーナリズムとは利益相反の関係にあることを如実に示す発言だ。前田氏がNHK経営委員としてふさわしくない人物であることは明らかである。

現在、「皆さまのNHK」から視聴者主権の「私たちのNHK」を目指して、いくつかの市民団体が活動している。NHK問題京都連絡会、NHK問題を考える会(兵庫)、NHK問題大阪連絡会、NHK問題を考える大阪の市民の会、放送を語る会、NHKを監視・激励する視聴者コミュニティなどである。安倍元首相の肝いりで昨年6月に経営委員長に就任した古森重隆氏は、これまで、公共放送の監督機関の長としてはあるまじき言動を繰り返してきた。そこで、今春、兵庫、大阪、京都の視聴者団体とNHKを監視・激励する視聴者コミュニティは古森氏の経営委員罷免を求める署名運動を呼びかけ、6,280筆の賛同署名を集めた(私も実は参加した)。

今回、新しい経営委員の選任が行われるのに際して、上記6つの視聴者民団体は、連名で3項目の申し入れを、任命権者である内閣総理大臣と国会での同意人事に参画する衆参国会議員、及び各政党宛てに提出した。
1.経営委員の選任(4人)にあたり、公募や視聴者による推薦を受け付けること
2.古森重隆氏を経営委員として再任しないこと
3.両院による同意人事に先立ち、経営委員候補者に視聴者への所信表明を行わせること

そして、11月14日には「開かれたNHK経営委員会をめざす会」として公募・推薦制を推進する趣旨から桂敬一さん(マスコミ研究者、元東大教授)と湯山哲守さん(NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ共同代表・元京都大学人間環境学研究科専任講師)を、経営委員として推薦した。

NHKは受信料を負担している視聴者のものであり、経営委員ポストを財界人の指定席としてたらい回しする政府の委員選考は改めるべきである。経営委員の公募・推薦制を求める声をいまこそあげようではないか。

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