プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

岩国住民投票―市民の思いを示す絶好の機会

2006-03-04 18:28:55 | 政治経済
米空母艦載機部隊の岩国基地移駐の賛否を問う岩国市の住民投票が5日告示されます(12日投票)。住民の声を聞きたくない勢力がさまざまに住民投票の意義を否定するなか、保守系の岩国市議が住民投票を成功させようとビラを配り始めたり、別の市議も住民投票学習会を予定、参加を呼びかけるなどの変化が出てきています。住民投票は、市民の思いを日米両政府にはっきり示す絶好の機会です。

政府は、岩国基地に厚木基地(神奈川県)から空母艦載機57機と1600人の兵員を移駐させる計画です。岩国基地は、米軍機100機以上、兵員約5千人の国内最大規模の基地に変わります。空母への離着艦能力を維持・向上させるための昼夜を問わない地上離着陸訓練(タッチ・アンド・ゴウ)の増加は避けられず、生活の平穏をますます脅かします。米軍機が増えれば墜落の危険はより大きくなります。米兵が増えれば、横須賀市で女性が殺害されたように、米軍の凶悪犯罪が増えるのは目に見えています。

住民投票に至った経緯について井原勝介岩国市長は、「移転反対決議をした議会で、移転受け入れ前提の議論が行われ始めた」と、議会の多数と市長の意見が乖離して岩国市として統一した方針を示せなくなったと指摘。「岩国の将来を決める重要な問題ですから、直接住民の意思を確認し、住民投票の結果を踏まえて地元の声をしっかり国に届けることが必要だと判断したものです」と述べています。
「基地問題や国防は国の専管事項。住民投票はなじまない」という意見にたいし、市長は「基地や米軍再編全体は国の問題かもしれませんが、岩国基地に関係する部分は、地元に理解を求められている問題であり、市民の安全・安心にかかわる事項です。市民の意思を確認した上で地元の声を国に届けるのは市長の責任です」と答えています。
「国が決めた以上白紙撤回は無理。住民投票は無意味で、費用二千五百万円も使うのは無駄だ」との意見に対しては、市長はこうのべました。「国は今の案の変更は考えてないと言いますが、住民の理解と協力なくして基地の安定的運用はないというのが、政府も米軍も共通の認識のはず。その意味で住民の声は重いし、まして、住民投票で示される市民の明確な意思は重いものであり、政府も尊重すべきもの。沖縄・普天間基地の移転問題は十年前に合意されましたが住民投票の反対の結果は重く、いまだに実現できていません。岩国は移転案が示されてわずか二―三カ月。本格的な交渉が始まるのはこれからです」
保守議員から「賛成、反対二者択一の意味は」と問われると「確かに一部で『条件闘争を選択肢に』という意見がある。しかし住民投票は市の基本姿勢を聞くものです。条件闘争はそもそも不確かなものだ」と「条件付き賛成」や「条件付き反対」は選択肢になじまないとする考えを示しました。
3月20日に岩国市が周辺7町村と合併し、現在の市はなくなるのだから、「合併後に市民の意思を確認すべきだ」という意見に対しては 「(3月20日に岩国市と)合併する他町村も米軍再編問題に重大な関心を示しており、これまでも首長会議などを通じて逐次情報提供し理解を求めて進めてきました。しかし、3月末には日米最終報告が取りまとめられる予定であり、現岩国市として早急に責任ある対応をする必要があることから、その意思決定の一つの手段として、住民投票が必要であると判断しました。なお、住民投票条例は合併とともに失効し、合併後に住民投票はできません」としています。

米空母艦載機部隊の神奈川県・厚木基地から山口県・岩国基地への移転に反対する、岩国市内の三つの市民団体は、12日の住民投票へむけ、それぞれ運動を広げ、「投票に行こう」と呼びかけています。三つの市民団体とは、「艦載機受け入れ反対に〇をする会」、「住民投票を成功させる会」、「岩国への空母艦載機と夜間離着陸訓練(NLP)移転反対の市民の会」です。。

岩国住民投票は、今回の米軍再編にかかわり、初めて住民の意思を示すものとなります。政府は、「国家・国民の安全、地域の安定のためにやらなければならないことはやっていかなければならない」(額賀防衛庁長官)という態度ですが、アメリカのために国民・市民の意思をふみつけにする態度は許されません。岩国住民投票の成功が各地の基地強化反対闘争に大きな影響を与えることは間違いありません。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。