プロメテウスの政治経済コラム

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日本の財政危機と税制の空洞化(その2)

2011-01-30 20:18:21 | 政治経済

次に、財政危機をもたらした原因について考えてみよう。

【日本の財政危機の原因】

いま、国の一般会計予算の中で、構成比率がもっとも高いのは社会保障関係費(生活保護費、社会福祉費、社会保険費、保健衛生対策費、失業対策費)である(2011年予算案で約31%)。しかし、これを理由に、社会保障費が財政危機の原因であるかのように言うのは当たらない。憲法25条を持ち出すまでもなく、現代国家の主な仕事は、国民の生存権を保障することである。そして生存権は、教育権、労働権、団結権、環境権などの社会権を保障することと一体でもあるだから社会保障費が、歳出の大部分を占めるのは、先進資本主義国としては当たり前のことである(ヨーロッパ先進国にくらべて、日本はむしろ少ない)。

日本の財政危機の原因は、90年代までは、ほとんどが公共事業のバラマキだったと言って間違いない財政危機でも年50兆円もの公共事業が続いたのは、バブル崩壊後の景気対策に加えて、「公共事業(しかも日本の競争力向上にならないようなリゾート開発などの)で内需拡大をはかれ」という宗主国アメリカからの強い要求があったからである。10年間で430兆円」「630兆円」といった公共投資計画が策定された。料金などの収入のない公共工事は、償還能力がないにもかかわらず、「建設国債」という名で「赤字国債」が累増した。

2000年代に入り、公共事業のバラマキはやっと止まったが、歳入不足が深刻になってきた。歳入不足を補う真正の「赤字国債」の増発が続き、財政危機がますます進行した

2000年代に入ってからの財政悪化の原因は、一言でいえば、政府の施策と一体となった多国籍大資本の搾取と収奪が進み歳入不足が慢性化したからである。これは、2つの面に現れた。一つは、深刻な内需不足に陥り、日本が長期にわたって「経済成長が止まった国」になってしまったことである。成長が落ちたら、税収は当然に落ち込む。もう一つは、この間に大企業や富裕層への減税がおこなわれ、税収に大穴を開けたことである。税制の空洞化こそ、現在の日本の財政危機の最大の原因なのだ。

 

【税制の空洞化】

戦後日本の税制の原点は、シャウプ勧告税制である。当時の日本は、戦費調達を目的として非常に多くの種類の間接税が課されていたが、これらの複雑な税を整理し、直接税中心の税制を勧告した

<所得税 >所得税は累進税率であったが、最高税率が高率すぎ、脱税の動機となりうることから、最高税率を引き下げ、全体として所得税は減税となるようにする。<富裕税>富裕層には、資産に対して別途富裕税を課す。<有価証券>それまで非課税だった、有価証券譲渡益に課税する。<法人税>法人税は、法人擬制説に則って、35%の比例税のみとする。<相続税等>贈与税・相続税は、財閥等への富の集中を防ぐため、最高税率を高くすることとする。<分離課税>分離課税を認めない。

所得税は、累進税率という仕組みをもち、所得の高い者ほど負担が重くなる所謂「応能負担」の税である。「応能負担」を公平原則とする考え方は、世界各国の人民による民主主義運動の歴史的成果であった。


1989
年、竹下内閣が税率3%の消費税を導入した。消費税導入は、租税構造の転換、すなわち税負担のあり方を根本的に変えることを目的に導入された。つまり、「応能負担」から「国民皆が分かち合う」という税の「公平理念の根本的転換」をはかることが真の狙いであった国民皆が分かち合う」という公平論は、金持ちの公平論であって、現代民主主義国家が克服してきた民主的公平観念とは相容れない租税感である
消費税は財政上の必要に迫られて導入されたものではなかった
現に、消費税の導入つまり大衆増税と同時に、大企業や富裕者向けの減税が行われた。その後も、消費税増税を引き当てに、大企業や富裕層の減税が続いている。所得税の最高税率引き下げ(70%→50%→37%、07年から地方税のフラット化と合わせて、40%に手直し)と法人税の税率引き下げ(42%→37.5%34.5%→30%)が進んだ。また、研究開発税制、証券優遇税制などの租税特別措置による減税が今も続いている

富が大企業と富裕層に集中し、貧富の二極化が進んでいるときに、大企業や富裕者向けの減税が行われたら、税収に大穴が開き、財政危機が深刻化するのは、当たり前である。【続く】

 


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