プロメテウスの政治経済コラム

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キヤノン 派遣解消  相対的過剰人口の労働者を思いのまま搾取する構図は不変

2008-03-21 18:52:57 | 政治経済

キヤノンは、製造現場で子会社を含めて1万2千人に及ぶ労働者派遣契約を年内に見直し、半数の6千人を期間工として直接雇用し、残りを業務請負に置き換えるという(「しんぶん赤旗」3月21日)。キヤノングループでは、これまでに8件の偽装請負が発覚している。周知のとおり、日本経団連の会長である御手洗富士夫氏はキヤノンの会長でもある。御手洗会長は、偽装請負の問題を追及されながら、一向に反省しようとしない。野党4党の国会対策委員長会談で御手洗会長の参考人招致が決まっても、自民党の反対で実現していない今回の派遣解消の方針も御手洗流の世論対策に過ぎず、相対的過剰人口の労働者を搾取し尽すというキヤノンの労務政策は不変である。

2月8日の衆院予算委貝会で日本共産党の志位委員長は、キヤノンの100%子会社の長浜キヤノンの実態を示して、福田首相に改善を要求した。志位質問は、キヤノンの内部資料をとりあげ、大企業による正社員から派遣労働者への置き換えの具体的な実態を追及した。志位氏は、詳細な調査をもとに、「人間をモノのように使い捨てにする働かせ方」を告発し、「キヤノンは1999年の派遣労働の原則自由化以後、8年連続で増収、増益、史上最高の利益をあげ」、「2007年の純利益は、99年の何と7倍にもなっている」と指摘した。
キヤノンの御手洗会長は、キヤノンUSAで23年間、米国流の経営方法を徹底的に学んで帰国し、95年にキヤノン社長に就任してからは、米国流の利益最優先の経営改革を断行してきた。キヤノンの高利潤の秘密は、一言でいえば、従来の日本流の「ルールなき搾取のやり方」に、米国流の「労働者を効率的に流動させる搾取のやり方」を結びつけて、利益最優先の企業体質を徹底させたということだ(「しんぶん赤旗」3月1日)。

「労働者を効率的に流動させる搾取のやり方」とは要するに“固定費の変動費化”、必要な人間を必要なときに必要量だけ調達するということである。加えて人事部門の調達コストと人事管理コストを削減するのに派遣会社ほど手軽で便利なものはない。
ところが、先の志位質問に対し、福田首相は、(非正規雇用増は)中長期的には決して好ましくないと答弁した。そこで御手洗氏としては、とりあえず若干の調達コストと人事管理コスト増になるが、派遣会社丸投げスタイルをやめることとした。 派遣会社丸投げスタイルをやめたからといって、製造業の派遣制限期間3年以内に相対的過剰人口の労働者を入れ替えて(あるいは入れ替えの脅しをかけて)、労働者同士を競争させ搾取し尽すという「労働者を効率的に流動させる搾取のやり方」に変更はない。
現在契約している1万2千人の派遣労働者のうち6千人は、派遣会社を通さない直製契約とするが、最長2年11カ月の期間工である。残りの6千人は、業務請負に切り替える。キヤノンが派遣から切り替えるとしている期間工は「解雇つきの雇用」といわれているもの。業務請負への置き換えも新たな偽装請負の温床になりかねない(「しんぶん赤旗」同上)。

派遣労働者が、不安定・低賃金で、そのうえ使い捨てのような扱いをうけていることは周知のとおりである。しかし、不安定・低賃金で、使い捨てのような扱いをうけているのは、派遣労働者だけではない。直接雇用であっても短期契約で使い捨てができる期間工・契約社員は同じ運命である。
景気過熱などで一時的に労働力不足が生じることがあっても、基本的に資本主義システムのもとでは、職を求める労働者が常に過剰である。すべての非正規の労働者が団結して解雇規制のある直接常用雇用を要求しなければ、相対的過剰人口の労働者搾取は資本の思いのままである。不安定・低賃金を改善しようとすれば、団結して“固定費の変動費化”に対し真正面からたたかうほかないのだ。


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