プロメテウスの政治経済コラム

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「世界難民の日」 世界の難民、5年ぶりに1千万人突破   米英の責任重い

2008-06-21 19:01:39 | 政治経済
6月20日は、国連総会が決議した「世界難民の日」であった。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は17日、紛争などが原因で祖国を追われた世界の難民の数が07年末に前年比150万人増の1140万人と、5年ぶりに1000万人を上回ったとする調査結果を発表した。米軍の軍事作戦や爆弾事件などで混乱が続くイラクやアフガニスタンからの難民増が主な要因で、増加は2年連続となった(「毎日」6月18日 18時37分)。紛争や災害によって被害者が何人発生したかは、わりと逐一報道されるが、事件の陰でそれより、はるかに多数の一般市民が難民として過酷な生活を強いられていることに思いをはせる機会は多くない。国連難民高等弁務官事務所が発表した「グローバル・トレンド」報告は、そんな情報の空白を埋めるものだ(「しんぶん赤旗」6月21日)。

国連難民高等弁務官事務所などの推計によると、昨年末時点での世界の難民の総数は約1600万人(1140万人+パレスチナ難民460万人)。また、国内避難民の数も、前年の約2440万人から約2600万人に増えた。グテレス高等弁務官は「われわれは将来さらなる難民増加に結びつく、複合的な地球規模の課題に直面している」として、紛争のほか、気候変動問題、食糧危機なども新たな難民を生むと警鐘を鳴らしている(産經ニュース2008.6.20 03:34 )。

報告は、難民増加の原因として「イラク情勢の不安定さ」をあげている。難民が多いのは、アフガンとイラクである。アフガンからは約310万人がパキスタンやイランなどに、イラクからは約230万人がシリアやヨルダンなどに逃れ、UNHCRの支援を受ける難民の「ほぼ半数」にあたる。周知のように、パレスチナ難民は、長期にわたって難民生活を強いられている。コロンビアは約300万人と最大の国内避難民を出している。治安部隊や極右武装勢力の暴力がその大きな要因になっていることは、同国に軍事支援している米国務省自身が指摘している(「しんぶん赤旗」6月21日)。

死の恐怖を逃れても、難民の多くは衣食住にも困る生活を強いられている。国内の紛争が続き帰還の見込みもないまま、将来の展望もない生活を送っている。難民として合法的に外国に居住できても、仕事に就けない場合が多いからである。医療や教育などのサービスを受けるにも困難がある。
難民には、UNHCRをはじめとする国際機関やNGOが支援している。しかし、財政に限りがあるなかで、世界的な食料価格の高騰が新たな障害をもたらしている(「しんぶん赤旗」同上)。

アフガンとイラクに侵攻し、難民を生み出した米英両国と「有志連合」などとして侵攻にかかわる国々の責任は重い。とりわけ米国は直ちに、アフガンとイラクで難民流出の原因である戦争を終わらせ、コロンビアでも難民流出の背景にある軍事支援と干渉をやめるべきだ。そして、真の復興支援にこそ力を注がなければならない。
自然災害による難民問題も深刻である。UNHCRはミャンマーのサイクロン被害救援でも大きな役割を果たしている。気候変動は自然災害を拡大し、資源をめぐる新たな紛争につながる危険も指摘されている。難民の増加を防ぐためにも、実効ある温暖化防止対策が必要だ(「しんぶん赤旗」同上)。

平時において、日本では「構造改革」政治によってさまざまな難民が発生している。
元いた所にいられなくなり行き場を失った人を、難民に喩えることがある。不安定・低収入労働のために定住する住居が持てず、日雇い労働などをしながらインターネットカフェに寝泊りする人を指して、ネットカフェ難民という。必要な医療や介護へのアクセスから排除された人びとを医療難民、介護難民という。

純粋に自然災害もあるだろうが、長期にわたって過酷な生活を強いられる圧倒的多数の難民は、人為的につくられたものだ。その意味で、政治の民主的変革と難民問題は表裏一体なのだ。


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