プロメテウスの政治経済コラム

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米価暴落への緊急対策   日本農業をどうするのかの国民的議論を!

2007-10-18 18:56:56 | 政治経済
米価暴落の原因は、政府が需給調整の役割を全面的に放棄し、流通段階でも大手流通業者の買い叩きを野放しにし、そのうえ備蓄目的の政府米を安く放出して市場価格の引き下げを促進していることにある。政府は、米価暴落は過剰が原因、いまの制度には価格対策はないなどといって、要するにすべて市場原理に任せる態度である。日本の米は、国民の主食であるとともに、農業生産の主柱として「旧い自民党」時代には、一定の保護の下、農家の生活と地域経済を支えてきた。それが、1994年のWTO農業協定の受け入れと価格政策の全面的な放棄などによって生産者価格が大暴落し、06年産米で農家が受け取った家族労働報酬は時給換算で256円にすぎないなど、生産の維持さえ危うくなっている。米価格の下落に伴い、全国の米総生産額は95年の3兆1861億円から、06年には2兆396億円にまで激減した。国内農業部門の劇的な衰退は地域経済の危機招来の主な要因のひとつとなっている。

いまの米価暴落を食い止め、適切な生産者価格を保障することは、農家、農村をこれ以上疲弊させないという点からも、国政上の緊急課題である。17日の参院予算委員会で日本共産党の紙智子参院議員は、農家から「担い手も集落営農も育たない」「来年は米づくりをやめなければならない」と悲鳴があがっていることを強調し、生産者から強い要望が出ている「備蓄制度の活用による政府買い入れ」の実施を厳しく迫った。これに対し、若林正俊農水相は「備蓄制度の趣旨の範囲内で、その適切な運用をはかっていく余地はある」と述べ、米の政府買い入れに、前向きな姿勢を示した。政府は、これまで「価格を支える意味で、備蓄制度は活用しない」として、備蓄制度の活用による米の政府買い入れに否定的な見解を示してきたから、一定の前進である(「しんぶん赤旗」10月18日)。

最近の世界情勢は、異常気象で農業生産が不安定化する一方、人口の増大、バイオ燃料への利用拡大などで需要が増大し、穀物の期末在庫が過去最低となり、国際価格の上昇が続いている。そのため、小麦や大豆、トウモロコシなど輸入原料を使用している食品の値上がりなど、幅広い分野で国民生活への影響が出始めている金さえあれば食料はいつでも輸入できるという考え方だけでいいのか、国産農業をどの程度維持し、輸入をどの程度に抑えるか、国民的コンセンサスが必要だ。
06年度の日本の食料自給率(カロリーベース)は13年ぶりに40%の大台を割り、前年度比1ポイント低下の39%になった。1960年度に79%あった自給率は年々下がり続けて先進国で最低水準になり、98年度から05年度までは8年連続で40%だった。40%を割るのは、コメの凶作で37%に落ちた93年に続いて2度目で、“平時”では初めてである(「毎日」8月10日15時34分配信)。


コメを中心とした日本型食生活が大きく変化したことは確かである。しかし、食料自給率を50%程度に維持するための抜本的な農業政策が必要なことは、国民的コンセンサスを得られるのではないか。農産物を工業製品と同じように「貿易自由化」の対象として扱ってよいのか。自国の食料・農業政策を決める権利「食料主権」は、WTOとは別個に認められるべきだという考えが国連諸国のなかでも広がっている。国連人権委員会(2004年)は「食料に関する権利」として「食料主権」(食料の確保は各国の権利)を採択した。輸入自由化一辺倒を大前提にした農業政策では所詮、彌縫策にしかならず、財政の無駄を累積するだけである。「食料主権」のもと、農業を国の産業構造のなかに適切に位置付け、保護育成する国民的コンセンサスを確立するべきだここでも、財界、アメリカいいなりの政治からの脱却が切実に求められている。

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