プロメテウスの政治経済コラム

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07年度予算財務省原案―大企業は「成長強化」、一方庶民の家計は細るばかり

2006-12-21 18:40:35 | 政治経済
安倍内閣の経済政策について、自民党の中川秀直幹事長は「『成長政策+歳出削減+適切な金融政策』のポリシーミックス(政策の組み合わせ)」だと説明し、これを「上げ潮政策」と呼んだ。
「成長政策」での最大の目玉として来年度の税制改定で大企業向けに数千億円規模の減税を用意する一方で、庶民には、所得税・住民税の定率減税が全廃され、06年に続き、厚生年金保険料も引き上げられる。「歳出削減」では母子家庭の生活保護、私学助成、雇用関連の予算を削減する一方、先端技術や成長力押し上げ期待分野にはばらまきを実施。「金融政策」では、引き続き超低金利政策で、国民の利子所得を銀行・企業に移転することを狙っている。大企業・財界には「上げ潮」政策でも国民には「引き潮」政策そのものである(「しんぶん赤旗」2006年12月21日)。

多国籍企業の「国際競争力強化」を口実に、生活関連・地方公共事業を削減する一方で、大型公共事業については軒並み大幅増額。三大都市圏環状道路は1859億円(対06年度当初予算比9・7%増)、スーパー中枢港湾プロジェクトは524億円(同37・5%増)などとなっている。
社会保障分野では高齢化で見込まれた6800億円の自然増分を、生活保護の「見直し」や雇用保険の国庫負担の縮減で2200億円圧縮。生活保護の母子加算を三年かけて段階的に廃止するとともに、雇用保険の国庫負担金を約1800億円削減する。すでに決められている厚生年金保険料や国民年金保険料は引き続き07年度も引き上げが続く。庶民の再チャレンジを支えてきた制度を切り詰めるもので、安倍「再チャレンジ」政策の矛盾を露呈するものである(「しんぶん赤旗」同上)。

2007年度予算財務省原案の軍事費(防衛関係費)で最大の特徴は、在日米軍再編経費を初めて計上するとともに、その一部については軍事費予算と「別枠」扱いにしたことである。「別枠」扱いになっているのは、在日米軍再編のうち「地元負担軽減に資する措置」とされている約166億円(契約ベース)。「地元負担軽減」とは名ばかりで、その内訳は、米海兵隊基地であるキャンプ・シュワブ沿岸部(沖縄県)にV字形滑走路の新基地を建設するための調査費約82億円や、米空軍嘉手納基地(同)の戦闘機の訓練を本土に移転させるための経費約3億7千万円、米海兵隊岩国基地(山口県)に米空母艦載機部隊を移駐させるための調査費約23億円などで、負担の沖縄県内たらい回しか、移転先地元住民に新たな負担を押し付けるものばかりである。日本国民全体としては負担軽減どころか基地強化される分だけ、負担増である。在日米軍再編の日本側負担について、米側実務責任者のローレス米国防副次官は、総額が三兆円にも達することを明らかにしている。こうした経費を「別枠」扱いにするのは、今後大きく膨れ上がる同経費によって自衛隊の装備調達費などが圧迫されないようにするとともに、在日米軍再編推進のために制約なく資金を投入できるようにするためである。それは、際限のない軍拡に道を開くものである(「しんぶん赤旗」同上)。

安倍内閣が強行採決した改悪教育基本法関連では、同法の具体化として「教育再生」を掛け声にした全国学力テストの実施や学校評価の推進などに予算が重点配分された。一方、教育現場を支えてきた義務教育国庫負担金や私学助成、国立大学法人運営費交付金は軒並み削減されている。

雇用を守るルールを確立し、福祉と暮らしを優先する予算に切り替え、税財政の所得再分配の機能を再建する以外に、われわれ庶民の生活を守る道はない。経済政策の民主的転換によって、多国籍大企業本位の構造改革にストップをかけ、憲法の平和理念に基づく外交で軍事大国化に歯止めをかけるためには、支配階級に牛耳られている政治を国民の手に取り戻すことがどうしても必要である。四カ月後に迫ったいっせい地方選と半年後の参院選は、そういったわれわれの意思を示す重大な機会である。

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