プロメテウスの政治経済コラム

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軍の“天領”横須賀に新しい風が吹くか―4万超える住民投票条例制定を求める直接請求署名

2006-12-20 18:30:36 | 政治経済
横須賀市の蒲谷亮一市長は6月14日、それまでの原子力空母の配備は「容認できない」との立場を覆し、市議会全員協議会で、「原子力空母の入港はやむを得ない」と述べ、米海軍横須賀基地に配備されている通常型空母キティホークの後継艦として、原子力空母ジョージ・ワシントンの配備を容認する考えを表明した。この市長の裏切りが今回の住民投票条例を制定させ、住民投票で政府・横須賀市の一方的母港化決定の是非を問うべきだという直接請求署名運動となった。

投票署名活動のなかで基地に依存する基地前商店街の人々にも変化が現れた。米海軍横須賀基地正面ゲートの真向かいにある横須賀市本町商店街(約九十店)、通称「どぶ板通り商店街」。商店街は明治時代から旧日本海軍の軍港街として栄え、通りの真ん中を流れるどぶ川を海軍工廠から提供された厚い鉄板でふさいだことから、「どぶ板通り商店街」と呼ばれるようになった。第二次世界大戦後に米軍が駐留して以降、米軍基地と共存してきた。
商店街のある男性(57)は、「放射能漏れの心配はあるけど、ベース(基地)があることによって商売が成り立っている」と語る。米兵の勲章などの縫い付けもする洋服屋の女性(38)は「本当は、原子力空母や基地があることには反対です。でも、空母が停泊しているときは、そうでないときの二倍くらい客足が多いんです」という。
「(空母配備は)いいも悪いも上の人が決めればいいと思う」と話していた飲食店を経営する女性は、「…考えてみると、人間のつくったものに絶対安全なものはない。住民投票は大事だね。いいのか悪いのか、いろんな人の意見を聞いて結論を出した方がいい。私は、原子力空母はない方がいいと思う。平和が一番です」と思わず本音を打ち明ける。花屋スタッフ(27)も「原子力空母は良くないけど、空母がこなくなってベースがなくなると人がこなくなってしまう。ノーとは言えない」と言いつつ、「住民投票でみんなの意見を聞くというのは、悪くないと思います」と複雑な心のうちを語る。
また、自民党市議のリーフを置いている飲食店の男性店主(73)は「うちの店で、地元の人がお客さんから署名を集めていて、みんな署名してたよ。今度の空母はやばいよ。米兵のトラブルも心配だ。今でも米兵が大声を出してケンカしたり、表に出ない事件がたくさんある。『住民で決める』っていうことを広げなきゃ」(「しんぶん赤旗」2006年12月8日)。

現在進められている米軍再編には、二つの大きな狙いがある。第一は、ブッシュ政権の「長期戦争」戦略にそって、米軍自身の戦争遂行能力を効率的に強めることである。第二は、同盟国の軍隊、とくに日本の自衛隊を米の世界戦略により深く組み込み、米軍とともに戦争できる体制をつくることである。原子力空母の横須賀母港化も、こうした動きと一体となったものだ。
アフガニスタン戦争とイラク戦争では、首都圏の東京・横田基地も横須賀基地も重大な役割を果たした。横須賀からは空母キティホークが出港し、艦載機がアフガンを空爆する一方、米陸軍特殊部隊も乗せて、陸上戦闘に投入された。

原子力空母は、戦争目的で稼働する「動く原子炉」であり、その実態は徹底した秘密主義のベールに覆われている。外務省が、住民運動に対抗して米海軍が用意した「安全性資料(ファクトシート)」の受売り資料を横須賀市で大量配布し、いくら安全性を強調しても、元々が機密情報なので真偽のほどを検証しようもない。よく言われるように米原子力艦は事故がないのではなく、米軍が「事故を一度も発表してこなかった」から、安全なだけである。今年9月、米原子力潜水艦(ホノルル号)が横須賀港を出港したさい、海水から放射性物質が検出されたが、これも米海軍の機密保持の壁のまえに真相はうやむやになったままである。

これまで「軍事基地との共存」を受け入れてきた市民が「住民投票には理がある」と署名に取り組んだ。横須賀に新しい風が吹くことを期待したい。

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