プロメテウスの政治経済コラム

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米国のゼロ金利政策導入 ドル暴落の危機  日本経済の構造転換が必須の課題

2008-12-24 20:22:48 | 政治経済
米連邦準備制度理事会(FRB)は16日の公開市場委員会(FOMC)で、政策金利を年1.00%から過去最低の0.00~0.25%に引き下げ、とうとう日銀顔負けの事実上のゼロ金利政策に入った。アメリカ経済の先行きがいよいよ見えなくなってきた。自動車ビッグスリーに続いて米金融・旅行大手アメリカン・エキスプレスにも、金融安定化法に基づき33億9000万ドル(約3100億円)の公的資金が注入されるという。一方でアフガンに現在駐留している米軍約3万1000人を来年夏までに2倍に増強するという。2008年度(07年10月─08年9月)の米国政府の運営収支は1兆ドルの赤字となり、赤字額は前年度の2755億ドルから約3.6倍に膨れ上がった。金融安定化法のもと投入される総額7000億ドルの公的資金は08年度の会計報告に含まれないため、米政府の運営収支は今後さらに悪化することが必至である。このままでは、いつドル暴落があってもおかしくない。トヨタに代表されるように、これまで日本経済の中核はドル特権の基礎であるドル過大評価(円安・ドル高)に依存してきた。いまやこの構造が崩壊の危機に立っているのだ

11月17日、米ワシントンでのG20金融サミットがドル体制についての見直しを来年に先送りして終わった2日後、欧州のLEAP/E2020(2020年の欧州)というシンクタンクが「ドルを基軸とした今の国際通貨制度(ブレトンウッズ体制)は、根本的な改革がなされない限り、09年(来年)夏までに制度崩壊する。この体制の中心にいる米英が急速に弱体化し、米財政は破綻して、世界は非常に不安定になり、戦争や暴動が起きる」「世界がドルを見放したら(米国債を買わなくなったら)、通貨制度改革の交渉もできなくなり、手遅れになる。世界の指導者は、3カ月以内に現状を把握し、6カ月以内に対策を決定する必要がある」などとする予測を発表した。LEAP/E2020は、今回の世界的な金融危機が起きることを察知した欧州の分析者が、2006年1月に作ったシンクタンクで、07年夏に金融危機が起きる前から、米不動産市況の崩壊による危機の懸念、ドルや米財政の潜在危機などを指摘し続けてきた。06年3月に米連銀がドルの通貨供給量M3を発表しなくなった直後、すでに「ドルが危機的状態に入ったので、連銀はM3発表を止めたのだ。いずれドルは崩壊する」と指摘していた(田中宇の国際ニュース解説「09年夏までにドル崩壊??」2008年12月6日)。

日本政府も中国政府も民間が稼いで売却したドルを、買い支えるために大量のドルを保有している。だから、ドルが暴落すると、大損をする。仮に1ドルが100円から50円になったら、6000億ドル持っているとすると60兆円から30兆円になり、30兆円の損をする。

ブラジルEU首脳会議のため同国訪問中の欧州連合(EU)議長国フランスのサルコジ大統領は、来年4月にロンドンで開かれる金融サミットで、EUとブラジルが国際金融システムの改革も含めた共同の提案を行うことで合意したと語った。EU内部では、米の覇権崩壊(ドル下落)と多極化が既定の事実として定着しつつある。EUは、先のG20金融サミットに先立って事前に加盟国の首脳会議を開き、意見を調整したうえで、すべての金融分野の規制や監督を強化することなどの5原則をまとめ、新興国と連携して、抜本的金融改革を米国に強く求める立場を明確にしていた来年4月の金融サミットでどのような具体的提案がなされるか注目される。なんとしてもドル暴落というようなハードランディングは避けなければならない。

日本も中国もアメリカ市場を中心とした外需依存で経済成長をしてきた。だからアメリカとドルを大切にし、ドル特権を支えてきたのだ。この気持ちの悪い相互依存関係がいまや崩壊の危機に立っている。中国は、農民工(出稼ぎ農民)の就業支援や低家賃住宅建設など成長維持のための内需拡大策を打ち出している。両国とも外需依存から内需中心に経済構造を転換することが必須の課題である。同時に両国とも素原材料の調達のための外貨が不可欠である。輸入量が増え、原油価格は現在急落しているが、原材料の価格が高騰すれば巨額の外貨準備も簡単に吹き飛ぶ。日本の11月の貿易統計は、2234億円の赤字となった。2か月連続の赤字は、第2次石油危機後の1980年10~11月以来、28年ぶりである。

中国も日本もアメリカ市場が当てにできないとなると、発展しつつある東南アジア、韓国を一緒にしたアジア共同市場・共同体の結成がますます現実的な課題として浮かびあがってくる。日本は、アメリカの真似をするのではなく、アジア諸国と結び、製造工業を大切に、維持、育成しなければならない。そのための新製品や新技術などを創り出していくためには、たえず製造現場の人びとを大切にしなければならない。
株主配当のために労働者の首を切ることなどまったく倒錯しているのだ


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