プロメテウスの政治経済コラム

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新テロ法「自公・民主対決」の舞台裏  ダメおやじ福田の勝ち 立法改憲が重大問題に

2008-01-15 19:13:09 | 政治経済
第168臨時国会は15日、衆参両院の本会議で会期末処理を行い、閉幕した。昨年9月10日に召集されながら、安倍の突然の政権投げ出しで時間を空費した挙句に、インド洋への海自派兵をなんとしても復活させるために、越年で128日間に及ぶ異常国会となった。安倍のあとを引き継いだ福田は週刊誌などでダメおやじと揶揄されているが、小沢民主党を揺さぶって、改憲の布石をちゃんと打つところなど、なかなかのものである2008年は、自衛隊の海外派兵、集団的自衛権をめぐる改憲策動が、自公・民主一体となって強まりそうだ。憲法を現実の政治に生かす国民運動のいっそうの高揚が求められる。

昨夏の参院選で与党が大敗し、衆参で与野党が逆転する「ねじれ国会」となったが、最大の焦点だった新テロ対策特別措置法は参院での否決を経て衆院の再可決で成立した。民主党の小沢代表は、臨時国会の最初の頃には「インド洋での給油・給水活動は立派な軍事行動であって、日本国憲法に違反し、許されない」と述べていた。ワシントンに「ノー」と明言する立派な正論であった。しかし、そのような正論は長くは続かなかった。もともと改憲派の彼は、すぐに10月9日発売の雑誌『世界』に「国連決議があれば派兵、武力行使も可能」と憲法のうえに国連をおく彼独特のかねてからの珍説を再確認し、日米同盟への忠誠と対米信頼を取り付ける意思を明確にした。

新テロ特措法をめぐる最終舞台の11日昼過ぎの衆院本会議は予定通りの運びだった。福田内閣・与党が再議決を強行し、数の力で押し切った。一方、民主党の小沢代表は採決前に中途退席し、“逃げ”の姿勢を見せた。本会議場で与党席から「(政府案に)賛成なんだ」「造反だ」のヤジが飛んだ。マスメディアが描き出す自民、民主「対立」の「二大政党」政治の本質を象徴する出来事だった。
2008年1月14日付「しんぶん赤旗」は、担当記者の話し合いで新テロ法をめぐる「自公・民主対決」の舞台裏を暴露している。小沢代表の性格、ダメおやじ福田の粘りなどなかなか興味深い。

昨年秋、臨時国会で新テロ特措法が審議入りした当時、ある自民党長老が指摘していた「小沢君という人は自分の方が相手より強いと思うと強くなり、(自分が)弱いと思うと逃げちゃうんだよ。だから最後はどう出るか…」。案の定、小沢代表は逃げた。ダメおやじ福田が勝ったのだ。
自民対民主の対立の裏の本質は日米軍事同盟にたいする双方の忠誠度を競い合うところにあるわけだが、結果として政権の座にあり、衆院で数を握る福田首相の方が上手(うわて)だったというわけだ。 福田首相側は、小沢・民主党に日米同盟の「踏み絵」を踏ませようとした。福田、小沢両党首会談があり、「大連立」構想が浮上したのも一連の仕掛けだった。同じ日米同盟路線に立つ小沢代表は拒めなかった。そのうえで、福田首相は、海自の撤退をはさみ二度の会期延長で時間を確保した。小沢民主党を揺さぶり、話し合いに向ける誘い水だった。最後の衆院再議決を覚悟しながら、いわば持久戦の構えをとった。
福田首相は、いったんインド洋給油が中断に追い込まれ、ブッシュ政権から不信を買うかもしれないが、その原因が参院で多数を握った民主党にあることへ目を向けさせた。「日米同盟を軽くみるような民主党には政権は任せられない」とアメリカが判断することになるなら2カ月や3カ月くらい給油を止めてもいい、と福田は計算した。一時的に給油ストップすると福田政権へのアメリカの心証は悪くなるだろう。しかし、それ以上に「民主党の小沢は駄目だ」と思わせる効果はあるというわけだ。
小沢は、次の総選挙で政権奪取をにらむ政権戦略上は、「対決」姿勢をとりながら、日米同盟関係堅持なしの政権はないという二つのテーマのバランスをはかり、うまく立ち振る舞おうとした。しかし、日米同盟の「踏み絵」には勝てなかった。小沢民主党は、そこでこんどは対米信頼の回復を急いだ。民主党は昨年末ぎりぎりになって「対案」とよぶ「アフガンへの新たな自衛隊派兵法案」をあわてて提出した。政府・与党の新テロ特措法よりも踏み込み、派兵の恒久化を可能にする中身だった。

民主党の対案は日本共産党などが反対したが参院で可決、衆院へ送られた。自公与党は参院で反対しておきながら、15日の会期末処理で抜かりなく継続審査の手続きをとった。かくして、政府・与党と民主党とが結んで海外派兵恒久法を制定できる足がかりをつくりあげた。ダメおやじ福田の薄ら笑いが目に浮かぶ憲法を現実の政治に生かすことをめざすわれわれにとって2008年は、自民・民主合作による自衛隊海外派兵の恒久法づくりという「立法改憲」とのせめぎあいが喫緊の闘争課題となるだろう。

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