プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

「拉致問題の解決」とは何か?

2018-06-22 20:49:35 | 政治経済

定義を明確にしないまま「拉致問題の解決」を多用(流布)しているのは「朝日」や報道ステだけではない。安倍首相を筆頭に日本のメディアすべての傾向だ。

米朝会談(6月12日)後の社説でも、「トランプ米大統領が金正恩朝鮮労働党委員長に拉致問題を提起したことはプラスではあるが、根本的な解決にはならない」(14日付毎日新聞社説)、「拉致解決へ米韓と連携を深めよ」(15日付読売新聞社説)、「拉致解決へ真剣勝負せよ」(15日付産経新聞社説)など、「拉致(問題)の解決」を前面に出しているが、それはどういう意味で言っているのか曖昧なままである。

このええ加減さが日本人の論理思考のレベルを示している。そのような日本人に囲まれて安倍首相は辞任もせずに生き延びているのだろう。

拉致被害者全員の即時帰国」とはなにか。「政府認定」の「拉致被害者」は「17人」(うち5人はすでに2002年に帰国)。そのほかに「拉致の可能性を排除できない人」が「883人」いるとしている。すべて即時帰国しないと解決しない!?ということか。

2002年の日朝首脳会談においての北朝鮮側の回答は、その時点で日本政府として調査を求めていた拉致被害者13名のうち4名は生存、8名は死亡、1名は北朝鮮入境が確認できないということだった。そのほか、調査依頼をしていなかった1名(曽我ひとみさん)について拉致を認め、その生存を確認した(他方、その後の調査で北朝鮮側は、同時に行方不明となった同人の母親については、入境の事実はないと回答)。

拉致被害者17名についての北朝鮮側の回答は、うち13人(男性6人、女性7人)について、日本人拉致を公式に認め、5人が日本に帰国しているが、残り12人については「8人死亡、4人は入境せず」ということである。日本政府は「全員が生存しているとの前提で対処する」というが、北朝鮮政府が、死亡と回答した被害者が生き返るのはむつかしい。あくまでも「全員」生存しているという前提に立ち、その「帰国」がない限り「解決」にはならないと言い続けるのか?!

安倍首相(および大手マスコミ)が内容をあいまいにしたまま、あるいは朝鮮が到底受け入れない意味のまま「拉致問題の解決」を流布するのは、朝鮮への「経済支援」や「国交正常化」に進みたくないということと裏返しなのだ。

政府が生存情報を持っているなら、北朝鮮政府に示し、一定の解決ラインを出す時期に来ている。


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