プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

教基法改悪 衆院強行通過 安倍政権の弱さが出た

2006-11-16 19:18:01 | 政治経済
安倍首相は世論と野党の攻勢を受けて、自らが最重要法案だと明言した法案をこのまま今国会で成立させられない場合の政権の求心力の急速な低下を恐れ、強行突破に出た。安倍首相は強固な党内基盤を持つわけでもなく熟達した政治家でもない。政権の周辺を自分のお友達・仲間で固めてしまった。小泉首相のように党内に“抵抗勢力”を作って批判の矛先をそらせて、うまく立ち振る舞う術もない。
教育学会の歴代会長が連名で反対し、管理者である現職の校長の66%が反対している新「教基法」をたとえ強引に成立させることに成功したとしても、安倍政権の思うようにことが進まないことは目に見えている。

憲法に準じる法律としての教育基本法の審議であれば、政権の求心力云々の前に、可能な限りの合意をつくる努力がなされてしかるべきである。13日放送のNHKの世論調査でも、政府案に「賛成」41%、「反対」10%、「どちらともいえない」40%で、4割の人々は態度を保留している。賛成のなかでも「時間をかけて議論すべきだ」が66%で、7割近くの人が慎重審議を望んでいる。現行教育基本法は前文と10条、新「教基法」は前文と18条である。日本PTA協議会の調査では、新「教基法」の内容について保護者の88%が「内容をよく知らない」という結果もある。論より証拠。そんなに長くない条文なのでまず読み比べてみることだ。普通の感覚の持ち主なら新「教基法」の内容には“ちょっと待ってくれ”と言いたくなるであろう。

現行の教育基本法は、個人の尊厳を実現する教育を国家との関係で保障し、真理に開かれた普遍的な教育を教師と国民で実行していくことを核心にしている。憲法の国民主権とは国家は国民のためにあるのであって、その逆ではない。国民より国家を優先させ、権力に都合のよい国民をつくろうとする企ては憲法の国民主権、立憲主義にまったく反する。教育は学問的方法、真理に立脚して行われなければならいない。多数決原理の政治を押し付けてはならないのだ。
新「教基法」は現行の教育基本法とまったく逆である。教育の国家統制を強め、競争と格差の教育をつくり、政府が勝手に決めた日本の伝統や文化の調教を内容とするものである。とても現憲法のもとで並立できる代物ではない。 反憲法の内容をもつ新「教基法」が基本法としての力を持つとは言い難いし、国民の広範な合意のない「基本法」が今後、基本法として生命力を持つとは考えられない(世取山洋介・新潟大助教授「しんぶん赤旗」2006年11月16日)。

安倍政権は、権力に都合のよい国民をつくろうとすれば、必ず改憲に向かうほかないであろう。安倍政権は脆弱ではあるが、それだけにきわめて危険な内閣でもある。参院で論点を明らかにして国民的論議を深めることだ。廃案も十分展望できる。

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