プロメテウスの政治経済コラム

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国民投票修正案を国会提出 憲法改定を急ぐ狙いはなにか 第一歩を許さない意思を選挙で

2007-03-29 18:59:18 | 政治経済
安倍首相は就任以来、繰り返し任期内の改憲実現を言明してきた。安倍氏の自民党総裁としての任期は最長で2期6年、2012年がその期限である「自民党で“安倍状況”ということばがはやっている。機能不全、機能がまひしているという意味。要するに心臓(晋三)まひ状態だということだよ」(自民党議員)といわれる状況で安倍はなんとしても祖父岸信介以来の改憲の野望実現を急いでいるのだ。
安倍のご主人のひとり、日本経団連も元日に発表した新しい御手洗ビジョン「希望の国、日本」で「2010年代初頭までに憲法改正の実現をめざす」と発破をかけた。もう一人のご主人、アメリカはかねてより強い改憲圧力をかけている。アーミテージ元国務副長官は、九条を「日米同盟の邪魔」と公言して九条改憲による集団的自衛権の実現を急ぐよう要求している。
自公民が合意した「修正」国民投票法は成立から三年後に施行されることになっている。2010年改憲を目指すとすれば、今年法案を成立させれば2010年には国民投票を実施する法律上の条件が整う。今国会でなんとしても、手続き法案を成立させたいといのうは、上記のような諸事情があるからである。

自公与党はこれまで改憲手続き法案を民主党と一緒に成立させることに腐心してきた。改憲発議には、両院3分の2の議員の賛成がいるから、改憲第一歩の段階から民主党を抱き込みたいと考えたからである。しかし、スケジュールが切迫してくるなか、民主党を待っておれないと与党単独も辞さないという強硬な態度に転じたのだ。民主党は、しょせん「参院選対策」のポーズとして、修正案の共同提案に乗らなかっただけであり、選挙後は手続き法によって国会に設置される「憲法審査会」での改憲論議には戻ってくると踏んでいるのである(渡辺治「九条改憲の条件づくり」「「しんぶん赤旗」2007年3月20日」)。

国民を改憲に動員しようとして憲法改正手続き法をつくって、国民主権を発揮して「みんなの選択」でけりをつければよいではないかという議論がある「改憲のためでも護憲のためでもない、公正中立なルール」を創ろうという誘いである。しかし、この議論がいかに出鱈目であるかは、与党「修正」案を一瞥しただけで歴然としている。国民投票法案は、改憲を通すための文字通りの手続き法案である。憲法96条は改憲が必要でないときでも法律で手続きを定めよというようなことは一言もいっていない。改憲を必要とする者が定めるルールが公正なはずがない。与党国民投票修正案は、改憲案を通しやすくするために不公正・非民主的な仕組みをつくるという同法案の本質をあますところなく示している。

支配者階級がいま、改憲を必要とする理由、狙いは、(1)グローバル資本主義の市場秩序を軍事力で管理しようとするアメリカからの軍事分担要求に応えるために、九条第二項を改定し、自衛隊の海外での武力行使を可能とすること、そのための軍事裁判所の設置、靖国国家護持合憲化の道を開き、自衛隊を自衛軍とすること(2)グローバル資本主義のもとでの競争激化にともなって、新自由主義改革を遂行しやすい態勢をとること、新自由主義改革の結果生じている格差社会化、貧困の増大、家族の崩壊、治安の悪化など壊れかけた社会統合を締め直すため、ゆきすぎた個人主義や自由主義を制限し、共同体の再建、地域を強化する国民の責務をうたう新保守主義的規定を入れることである。そしてアメリカ、財界の最小限改憲要求はいうまでもなく(1)の九条第二項の改定である。自衛隊はあってもいいが、海外で戦争をはじめるのはチョッと言う人は、皆こぞって今度の選挙で共産党などの護憲政党を選択することが求められるのだ。

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