プロメテウスの政治経済コラム

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米メディアに酷評される鳩山首相 「移設先探し」は完全に破綻 足下を見られては、交渉事は成り立たない

2010-04-16 15:51:25 | 政治経済

核安全保障サミットに出席した鳩山首相が、米紙ワシントン・ポストに酷評された。鳩山首相を擁護するつもりはない。しかし、いくら指導者としての資質が国民から疑われているとはいえ、「不運で愚かな日本の首相」とまで言われて、ワシントン・ポストに抗議もせず、ヘラヘラしている外務省と日本のメディアは異常である。日本のメディアなどは、オバマ大統領から「きちんと責任取れるのか」と厳しく迫られたと、叱られる首相が悪いと言わんばかりである。ここまで足下を見られたら、交渉事は成り立たない

 14日付の米ワシントン・ポスト紙は、「このサミットでの最大の敗者は、日本の鳩山由紀夫首相だ。哀れで、ますます愚かさが増している」と、オバマ大統領に首脳会談を断られ、わずか10分の非公式会談に終わった鳩山首相を酷評した。核サミットの最大の勝者は約1時間半にわたり首脳会談を行った中国の胡錦濤国家主席であり、最大の敗者は日本の鳩山首相だというのだそして、「鳩山さん、あなたは同盟国の首相ではなかったか。核の傘をお忘れか。その上で、まだトヨタを買えというのか。鳩山首相を相手にしたのは、胡主席だけ」だとまでバカにしたいまこそ日本の右翼は、ワシントン・ポスト紙に公式に伝えなければならない。「軽率で悪意のある記事が日本国民を怒らせた。日米同盟なぞクソ食らえ!」と。日本のメディアは、世界に発信しなければならない。「ワシントン・ポスト紙の軽率で悪意ある記事が日本国民を激怒させ外交関係に発展しつつある」と。

 自分たちの指導者がここまで扱き下ろされたのだから、国民の怒りを外務省と日本のメディアが公式に発信しなければならない。ところが、政府や外務省は、オロオロするばかりだ。平野官房長は15日の記者会見で、「いささか非礼だ」と不快感を示すだけで精一杯。藤崎一郎駐米大使は、「記事はコラムであり、ポスト紙の考え方を反映しているとは思わない」とし、同紙に対して抗議するのではなく、日本の立場を説明する機会を設けるかどうか検討するという情けなさ。もともとこの人、ホワイトハウスを自分で訪問しながら「異例の呼び出しを受けた」といって大騒ぎし、日本のマスコミもアメリカがさも怒っているかのように騒いで喜ぶ根っからの対米従属派である。とてもアメリカに向かってモノ申せそうではない。

 鳩山首相がさきの総選挙で、ともかくも「県外、国外」(移設)といったとき、新政権は少しは、アメリカに向かってモノ申すのかなと思ったが、まったくの期待はずれであった。日米安保「密約」が次々明るみ出ても、「密約」があったというばかりで、「密約」の相手方の米政府には何もアクションを起こさない――当然、相手方はすべてこれまでどおり、有効と受け取ることになるだろう。
なぜ、こうまでアメリカに対してモノ申すことができないのか。一言で言えば、敗戦に伴う米軍の占領体制は、日本の支配階級にとっても都合がよかったからである。日本では、15年戦争を推進した支配層の人びとが、アメリカの占領政策の都合で、東京裁判にもかかわらず生き残り、戦後も主要な指導層となることができた。ここに同じ敗戦国で、アメリカ軍に駐留されながら、日本と異なる道を歩んだドイツとの違いがある(戦後ドイツの首相を長くつとめたアデナウアーもその次のブラント首相も反ナチの自由派であった)。
軍事力でアジア覇権を維持するという人びとにとって、アジアに君臨するためには、昔と違って「副官」でしかないけれども、アメリカ軍の庇護下にあった方が都合がいいのだ。

 GHQのマッカーサーは、日本の独立後も米軍を駐留させることを天皇との会見で表明した(49年11月26日)。その際、米軍の性格について、「エジプトにおける英軍……と同様の性格のものになりましょう」とのべたという(通訳の松井明氏の手記より)。当時のエジプトは、形のうえでは独立国家であったが、事実上の英国の保護国で、外交権を奪われていた。今に至るまで、日本で占領と旧安保条約下の状態が続いているのはそのためである対米外交権がないのだから、外務省のなかでは、アメリカの言うことは、抵抗せずにそれらを受け入れるのがいわば慣習であって、疑問を差し挟んではならないということになる。

 普天間問題で、鳩山首相がこれまで口にしてきた5月末決着は残り50日を切り、その「決着」の意味自体が怪しくなってきた。平野官房長官は「5月末までに、すべて技術的な詳細も含めて、全部終わっていなきゃ合意でないと、あるいは理解でないという認識には、私は立たないと思います」と逃げを打ち始めた。鳩山政権の「移設先探し」は、完全に破綻である。沖縄県内のキャンプ・シュワブ陸上部にしても、ホワイトビーチ沖の埋め立てにしても、鹿児島の徳之島にしても、住民からごうごうたる非難がわき起こっている。名護市辺野古沖の『現行案』でも、きっぱりと反対する新市長が誕生している。5月どころか、いつまでたっても、地元の合意が得られないのは明らかである
こうなれば、米側に無条件撤去を求めて交渉するほかないのだが、米側にモノ申さず、従うだけの日本の足下を見る米国と交渉するのは容易でない。鳩山政権には、無理である。マスコミに騙されない国民世論を背景に腹をくくって立ち向かう革新政権に以外ないだろう。


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