日本維新の会共同代表の橋下大阪市長は６日午前、官邸で安倍首相と菅官房長官と会談し、米軍普天間飛行場に配備されている垂直離着陸輸送機ＭＶ２２オスプレイの訓練に関し、八尾空港（大阪府八尾市）での訓練の一部受け入れを提案した。会談には維新幹事長の松井大阪府知事や沖縄の地域政党「そうぞう」の下地代表も同席し、大阪維新の会とそうぞうの連名で、日米地位協定の改定を求める要望書も提出した。受け入れ先とされる八尾市には事前の調整、説明をまったくしなかった。「『地元との調整を先にやれ』とか『構想の中身を具体的に詰めてから』というのはばかげている」という橋下市長のコメントが事態の真相をすべて物語っている。八尾空港は普天間と同じく、周囲に住宅が迫り、学校や保育所が隣接する。給油施設、格納庫、土地不足、訓練環境など少し考えれば、初めから本気で実現するつもりはない。７月に第２陣の配備が行われようとしているオスプレイ問題は、参議院選挙前に話題となる。オスプレイの「訓練受け入れ」は、橋下市長と下地代表にとっては参議院選挙対策として、なくてはならぬ格好の宣伝材料なのだ。安倍政権にとっても沖縄のことを心配しているポーズをとれることは有難い。すべては参議院選挙のためのパフォーマンスだ。
橋下氏には、「従軍慰安婦」や風俗業活用をめぐる自身の発言から話題をそらし、支持率低下に苦しむ日本維新の会を今一度マスコミの話題に乗せなければならない事情がある。二枚舌を弄して県民を振り回し、愛想を尽かされ落選した下地代表にとって、国政に返り咲くためには日本維新の会にすがりつくしかない。
大阪維新の会の橋下代表と、沖縄の地域政党「政党そうぞう」の下地代表は５月１日、那覇市で会談し、夏の参院選の沖縄選挙区（改選定数１）で、そうぞう側が独自候補を擁立し、維新の会が支援する方針で合意するとともに、憲法改正や米軍普天間飛行場の辺野古への「移設」推進など５項目からなる政策協定に調印した（ちなみに、橋下氏の「風俗業活用」発言は、この協定を結ぶために沖縄を訪れた際に飛び出した）。自民党沖縄県連が党中央に逆らってまで普天間基地の「県外移設」を選挙公約に掲げようとしているときに、辺野古「移設」推進では、「そうぞう」も「維新の会」も旗色が悪い。選挙期間中に、辺野古「移設」推進について追及されることは、橋下市長と下地代表にとって大きなマイナスだ。オスプレイの「訓練受け入れ」をめぐる問題にマスコミの話題を集中させ、日米地位協定の改定にも心を砕いていると見せたいところだ。
大阪維新の会と政党そうぞうの政策協定－普天間基地の辺野古「移設」推進と普天間基地司令官への「風俗業活用」発言は、一つながりのものなのである（沖縄・ヤンバルより…目取真俊「参院選に向け沖縄を政治利用する橋下市長と下地代表」2013年6月6日）。辺野古「移設」＝県内たらい回しを進めようとするとき、米兵による事件・事故、とりわけ性犯罪が起こることは、県民の反発を高じさせ、大きな障害となる。辺野古「移設」推進のためには、米兵の性犯罪を減らす必要がある。そこからの連想で下種の橋下氏らしく「海兵隊の猛者たち」の性衝動をコントロールするために「風俗業の活用」をと司令官に訴えた。
＜橋下市長が言っているのは、「沖縄の基地負担」はそのままにした上で、沖縄の女性たちに「風俗業」で働いて米兵の性のはけ口まで「負担」しろということだ。それはまた、「移設」先の名護市辺野古に風俗店を乱立させろ、と言っているに等しい。こういう人物がオスプレイの「訓練受け入れ」や「沖縄の基地負担軽減」を口にしたところで＞（目取真俊 同上）、沖縄県民を騙すことはできない。怒らせるだけだ。
＜橋下市長と下地代表という組み合わせは、どう見ても政界プロレスの悪役コンビでしかない。いくら沖縄のことを考えているかのように装っても、化けの皮はすぐに剥がれる。
橋下市長や下地代表が、本当に沖縄のことを考えているというのならまず真っ先に、普天間基地の司令官に「風俗業の活用」を求めたことを、沖縄県民に謝罪すべきだ。その上で、オスプレイの一部訓練の「受け入れ」ではなく、県民の圧倒的多数が求めているオスプレイの撤去のために力を尽くすべきだ。そして、辺野古「移設」推進という政策協定を破棄して、普天間基地の「県外移設」もしくは無条件返還のためにとりくむべきだ。沖縄県内に「移設」して、どうして沖縄の「負担軽減」になるのか！＞（目取真俊 同上）。
