Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

広範囲脳梗塞に対する浸透圧利尿薬

2015年09月18日 | 神経
Ong CJ, Keyrouz SG, Diringer MN.
The Role of Osmotic Therapy in Hemispheric Stroke.
Neurocrit Care. 2015 Oct;23(2):285-91. PMID: 26130406.


アメリカの1施設後ろ向き研究。前方循環の大きな脳梗塞で、NIHSSが10点以上で、浸透圧利尿薬の投与を受けた30例。
結果はまあ、どうでもいい。興味のある方はアブストラクトをどうぞ。

アメリカの大学病院からの研究というのもあるだろうけど、それでもこのデザインでそれなりの雑誌(神経集中治療と言えばこの雑誌、impact factor 2014は2.44)に掲載されるのって、特に日本人から見ると驚きじゃない?

つまりは、脳梗塞(脳出血も)に対するマンニトールやグリセロールの効果って、ほとんど情報がないということなんだよね。
使う人は普通に使ってるでしょ?
不思議な薬。

ちなみに、この施設ではNIHSSが10点以上だった489例中、438例は浸透圧利尿薬が投与されていないので除外されてます。日本人的にはここも面白い。
あ、そっか。そういう臨床スタイルが普通だと、30例でもすごいということなのかな。

そうそう、やってみたことがない人は、一度やってみたら楽しいよ。Strokeと、mannitolとかglycerolとかと掛け合わせたり。ついでにreboundとかも掛けてみたり。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ABDO-MIXに対する反論

2015年09月17日 | 感染
そうそう、ICMを一つ忘れていた。
ちなみに昨日のやつと著者が同じ。

Antonelli M, Cutuli SL, Ronco C.
Polymyxin B hemoperfusion in septic shock: just look at the evidence!
Intensive Care Med. 2015 Sep;41(9):1731-2. PMID: 26197847.


PMXが腹腔内感染に対して無効であることを示したABDO-MIXに対する反論。
・28日死亡率が極端に低い
・消化管穿孔に限定していて、EUPHASに含まれたようなその他の重症感染を除外している
・PMXをちゃんと2回施行した症例数が少ない、抗凝固が不十分だった可能性
などなど。
結論として、ABDO-MIXはnot conclusiveであると。

まあ、そりゃそうだ。
EUPHRATES、楽しみだわ~。
ネガティブだったら、もう無駄なお金を使わないで済むし、ポジティブだったら、日本発信の治療で敗血症の予後が良くなるし。
どっちに転んでも良い。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

イタリアのAKIガイドライン

2015年09月16日 | 腎臓
Ronco C.
Italian AKI Guidelines: The Best of the KDIGO and ADQI Results.
Blood Purif. 2015;40(2):I-III. PMID: 26316177.


イタリアの腎臓学会、麻酔集中治療学会、集中治療学会(ふーん、二つあるんだね)の合同で、KDIGOのAKIガイドラインをイタリアで使えるように、翻訳およびアップデートをしたそうだ。そのやり方は、
1:正確に翻訳し、推奨やエビデンスレベルはそのまま
2:KDIGO発表後から2014年12月までの文献検索
3:複数の学会から発表されたKDIGOガイドラインに対するコメントを収載、異なる視点があることを利用者に示す
4:薬やデバイスなどが利用できるかどうかが違うので、イタリアの臨床に合わせられるようにコメントを追加
5:定義や略語のためのチャプターを追加
6:ガイドラインの使い方についてのガイドラインを追加

多くの国際的なガイドラインは、エキスパートたちによって相当な手間をかけて作られる。
KDIGOのAKIガイドラインもそうで、エビデンスレビューのためのチームを大学の疫学講座に作り、それをAKIの世界的な有名人たちが集まって吟味・議論して、約三年かけて作られた。
せっかくそういうものがあるのに、わざわざ各国で全部をやり直す必要はないし、やり直すことによって質が向上するとはとても思えない。

日本でもAKIのガイドラインを作成しようという話があるらしい。良いものを作りたいのであれば、是非このやり方を見習って欲しいと思います。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

挿管時のHFNC

2015年09月15日 | 呼吸
ICMで僕が一番面白かったのはこれ。

Vourc'h M, Asfar P, Volteau C, et al.
High-flow nasal cannula oxygen during endotracheal intubation in hypoxemic patients: a randomized controlled clinical trial.
Intensive Care Med. 2015 Sep;41(9):1538-48. PMID: 25869405.


フランスの6つのICUで行われた多施設RCT(N=124)。急性呼吸不全患者を挿管するときに、high flow nasal cannula(HFNC)を使うかどうかでRCT。Primary outcomeは手技中の最低SpO2。その結果、最低SpO2はHFNC群で91.5%、高流量酸素マスク群で89.5%(p=0.44)。その他、挿管困難、人工呼吸期間、挿管に関連した合併症、死亡率など、すべて差を認めなかった。

面白いと思ったのは実はこの研究ではなく、editorial。

Demoule A, Rello J.
High flow oxygen cannula: the other side of the moon.
Intensive Care Med. 2015 Sep;41(9):1673-5. PMID: 26077054.


このeditorialの内容を一文で示すとしたら、
A given treatment may not suit every patient and that we should give the right treatment to the right patient.
この研究で、HFNCが無効だという結果になったRCTがICMに掲載されたのは3つ目だそうだ。

振り子は揺れる。
うーん、この場合は、適応がちゃんと決まりつつある、という表現の方が妥当かな。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

EGDTのメタ解析

2015年09月14日 | 感染
先週は、とにかくICMが濃かった。
まだ読んでない人は、タイトルだけでもチェックすべし。
多施設研究とかsystematic reviewとか、とにかく執筆者の数が多い研究がたくさん。
例えばこれとか。

Angus DC, Barnato AE, Bell D, et al.
A systematic review and meta-analysis of early goal-directed therapy for septic shock: the ARISE, ProCESS and ProMISe Investigators.
Intensive Care Med. 2015 Sep;41(9):1549-60. PMID: 25952825.


EGDTを評価したRCTのメタ解析。研究は5個、N=4395。EGDT群とコントロール群で死亡率に差は無し(OR 1.01)。実際はARISE, ProCESS and ProMISeの3つでN=4063になり、もちろん結果は変わらず(OR 0.99)。

以前、ICMで予告された解析、だと思う。
なんで3つじゃなくてsystematic reviewにしたかは分からないけど(全部読んでないし)。
執筆陣が豪華です。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

JSEPTIC-CTGの文献第5弾

2015年09月08日 | その他
先日、4つ目を紹介したばかりですが、
早くも5つ目がPubMed収載されました。

Ohnuma T, Uchino S, Toki N, et al.
External Validation for Acute Kidney Injury Severity Scores: A Multicenter Retrospective Study in 14 Japanese ICUs.
Am J Nephrol. 2015 Aug 22;42(1):57-64. [Epub ahead of print] PMID: 26337793.


これもCRRTのデータベースからの文献。
あっ、今気がついたけど、JSEPTICの名前が抜けている。。。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

今週もパス

2015年09月07日 | ひとりごと
今週もインバランスのまま。
でもそれ以上に、先週の文献は面白いのが全然なかった。
だからまたパスします。
申し訳ない。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

完全にインバランス

2015年09月02日 | ひとりごと
仕事量が。
ということで、残念ながら今週はこれ以上の紹介ができまへん。先週はそんなにゾクゾクする文献もなかったし、まっ、いっか。

せめて、リンクだけ貼っておこっかな。
すべて、家族・倫理関係。
本当はじっくり読みたいのだが、時間がねー。

Jensen HI, Gerritsen RT, Koopmans M, et al.
Families' experiences of intensive care unit quality of care: Development and validation of a European questionnaire (euroQ2).
J Crit Care. 2015 Jun 16. [Epub ahead of print] PMID: 26169545.


Di Bernardo V, Grignoli N, Marazia C, et al.
Sharing intimacy in "open" intensive care units.
J Crit Care. 2015 Jun 3. [Epub ahead of print] PMID: 26160723.


Honeybul S, Ho KM, Gillett G.
Outcome Following Decompressive Hemicraniectomy for Malignant Cerebral Infarction: Ethical Considerations.
Stroke. 2015 Sep;46(9):2695-8. PMID: 26243228.


Creutzfeldt CJ, Holloway RG, Curtis JR.
Palliative Care: A Core Competency for Stroke Neurologists.
Stroke. 2015 Sep;46(9):2714-9. PMID: 26243219.
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする