Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

二週分まとめて

2013年07月22日 | その他
今日から日常生活にカムバック。
二週分ということで、ちょっと多めに。

Agnelli G, Buller HR, Cohen A, et al.; the AMPLIFY Investigators.
Oral Apixaban for the Treatment of Acute Venous Thromboembolism.
N Engl J Med. 2013 Jul 1.[Epub ahead of print] PMID: 23808982.


静脈血栓症(うち約35%はPE)症例5395例に対し、通常の治療(急性期は低分子ヘパリン、その後ワーファリンに移行)と、Xa因子阻害剤であるアピキサバンを半年投与するかでRCT。静脈血栓症の再発もしくは死亡は通常群で2.7%、アピキサバン群で2.3%。メジャーな出血は1.8%と0.6%で有意に少なかった。
当然、製薬会社がスポンサーの研究。これが本当なら便利ですけどね。

Shen J, Pan JW, Fan ZX, et al.
Dissociation of vasospasm-related morbidity and outcomes in patients with aneurysmal subarachnoid hemorrhage treated with clazosentan: a meta-analysis of randomized controlled trials.
J Neurosurg. 2013 Jul;119(1):180-9. PMID: 23641823.


SAH後の血管攣縮予防についてクラゾセンタン(エンドセリン受容体阻害剤)の有効性を検討した4つのRCTのメタアナリシス。合計2181例が対象。遅発性脳虚血(DIND)および脳梗塞は有意に減少(オッズ比は0.76と0.79)。でもGCS(オッズ比1.12)と死亡率(オッズ比1.02)は改善無し。合併症(呼吸器系、貧血、低血圧)はクラゾセンタン群で高かった。
スパズムを予防してもSAHの長期予後はよくなりません、という話。

Spetzler RF, McDougall CG, Albuquerque FC, et al.
The Barrow Ruptured Aneurysm Trial: 3-year results.
J Neurosurg. 2013 Jul;119(1):146-57. PMID: 23621600.


SAHに対し、クリップとコイルを比較したRCT。ISATとは異なり、除外基準を軽くして、より臨床に近い状況を作ることを念頭において行われた研究の、3年後のフォローアップ。予後不良となった頻度はクリップで35.8%、コイルで30%で、1年後フォローのときとは異なり、有意差がなくなった(p=0.25)。動脈瘤の再発、再治療の必要性についてはクリップの方が良かった。
長期にフォローアップすると侵襲性の低い治療方法の有効性が低くなるというのは納得がいく結果。それよりも面白いのは、editorialがISATの筆者によって書かれていること。すべてBarrow studyの文句で、最後の文章は、"The present paper is scientifically flawed"。で、その後に今度はBarrow studyの筆者による反論。感想は各自で。

Saquib N, Saquib J, Ioannidis JP.
Practices and impact of primary outcome adjustment in randomized controlled trials: meta-epidemiologic study.
BMJ. 2013 Jul 12;347:f4313. PMID: 23851720.


インパクトファクターがトップ25の雑誌に2009年に発表された684のRCTから無作為に200を選択。そのうち、29%では修正した解析結果のみが発表されており、21%では修正前の結果と両方が発表されていた。修正前の結果と修正した結果の両方が発表された文献のうち、18%では修正するかどうかで有意差の有無が異なった。
この話で思い出すのは敗血症性ショックに対するステロイド。この研究、ステロイド投与群で予後が改善したとなっているけど、実際には患者背景で修正されていて、粗死亡率には有意差はない。つまり、もともと怪しかったんだよね。

Chen LM, Nallamothu BK, Spertus JA, et al.
Association Between a Hospital's Rate of Cardiac Arrest Incidence and Cardiac Arrest Survival.
JAMA Intern Med. 2013 Jul 8;173(13):1186-95. PMID: 23689900.


Get With the Guidelineのデータベースを用い、院内心停止の発生頻度と病院退院率について評価。年間の院内心停止が50例以上あった258の病院(102,153例)が対象。全体で、院内心停止の発生頻度は1000入院あたり4.02、退院時生存率は18.8%だった。院内心停止の発生頻度と退院時生存率には逆相関が認められた。
退院時生存率が高いのは、入院患者の管理が悪くて心停止が予防できていないために軽症例も心停止するからかも、という可能性を検証するための研究。実際は逆で、心停止が少ないと生存率も良い。

量が多い分、メインはなしで。
ご容赦。
うーん、まだ完全には日常に戻れない。眠いし。
コメント
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