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Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

日本のデータを用いた院外心停止に対するECPR

2023年12月01日 | 循環
Okada Y, Komukai S, Irisawa T, et al.
In-hospital extracorporeal cardiopulmonary resuscitation for patients with out-of-hospital cardiac arrest: an analysis by time-dependent propensity score matching using a nationwide database in Japan.
Crit Care. 2023 Nov 15;27(1):442. PMID: 37968720.


心停止に対してECPRをすればするほど助かる命が増えるし、元気に家に帰れる人も増える。それは正しそうだけど、当然のことながら、死んでいたはずの人が寝たきりになる。それって具体的にはどれくらいなんだろうと思っていたのだけど、この研究ではそれを綺麗に図にしてくれている。

まず結果の一部をDeepLしたものをコピペ。
「良好な神経学的予後については、ECPR群のオッズ比は対照群と比較して、ショック可能リズムで1.11[95%CI 0.82-1.49]、非ショック可能リズムで4.25[95%CI 1.43-12.63]であった。」

不良な神経予後については数字が書いてない。なので自分で図から読み取る必要がある。簡単にできるけど、そう言えばChatGPTは「眼を持った」ので、図をコピペして計算してもらった(実はこの結果を得るまでちょっと教育をする必要があったのだけど、まあ許してやろう)。
ーーーーーーーーーー
ショッカブル条件の場合:
ECPRグループ:生存率は約24%、神経予後良好は約12%で、神経予後不良の割合は約12%です。
コントロールグループ:生存率は約16%、神経予後良好は約11%で、神経予後不良の割合は約5%です。
これにより、ECPRはコントロールに比べて神経予後不良の割合を2.4倍に増やしていることになります。

ノンショッカブル条件の場合:
ECPRグループ:生存率は約12%、神経予後良好は約4%で、神経予後不良の割合は約8%です。
コントロールグループ:生存率は約2%、神経予後良好は約0.5%で、神経予後不良の割合は約1.5%です。
これにより、ECPRはコントロールに比べて神経予後不良の割合を約5.33倍に増やしていることになります。
ーーーーーーーーーー
数値が小さいのでオッズ比も割合も同程度。
特にshockableでは大幅に寝たきりを増やしていることが分かる。

だからEPCRするな、という話ではない。
改めてこの事実を認識しましょう、と言いたいだけ。
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VA-ECMO患者における年齢と予後の関連

2023年10月23日 | 循環
Fernando SM, MacLaren G, Barbaro RP, et al.
Age and associated outcomes among patients receiving venoarterial extracorporeal membrane oxygenation-analysis of the Extracorporeal Life Support Organization registry.
Intensive Care Med. 2023 Oct 4. Epub ahead of print. PMID: 37792052.


Figure 2が綺麗。
35歳くらいから80歳まで、死亡率が直線的に上がっていく。

あ、それだけでした。

無理やりコメントするなら、
やっぱ綺麗な図って文献を高く売るには重要だよな、と思う。
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ノルアドの投与量は文献によって数字の意味が違う!

2023年10月12日 | 循環
いやー、ビビった。文献読んでて声出して驚いてしまったよ。
この文献、しばらくフォルダに入れっぱなしになっていて、かつePubが5月なので、SNSとかでとっくに話題になってて僕だけ世間から置いていかれたのではないかと心配していたら、自治さいたまの人も誰も知らなかったようなので、ちょっとホッとした。

Kotani Y, Belletti A, D'Andria Ursoleo J, et al.
Norepinephrine Dose Should Be Reported as Base Equivalence in Clinical Research Manuscripts.
J Cardiothorac Vasc Anesth. 2023 Sep;37(9):1523-1524. PMID: 37291003.


日本のノルアドは塩酸塩で、ノルアドそのものに換算するには1.2で割らないといけない。ましてや欧米は酒石酸塩なので半分にしないといけない。
マジですか。。。
もう20年も前から、「フランスってノルアドの使い方がすごいなー」と思っていたら、これが一番の理由だったようだ(それでも多い気はするけど)。

これだけでも十分驚きなのだけど、
調べていくと、自分がもう何度も情報を見逃していることに気がついた。

まずこれに書いてあった。
Mongardon N, de Roux Q, Leone M, et al.
Norepinephrine formulation for equivalent vasopressive score.
Crit Care. 2023 Feb 16;27(1):62. PMID: 36797766.


ここにも。
Leone M, Goyer I, Levy B, et al.
Dose of norepinephrine: the devil is in the details. Intensive Care Med.
2022 May;48(5):638-640. PMID: 35290485.


そしてここにも。
Bitton E, Zimmerman S, Azevedo LCP, et al.
An international survey of adherence to Surviving Sepsis Campaign Guidelines 2016 regarding fluid resuscitation and vasopressors in the initial management of septic shock.
J Crit Care. 2022 Apr;68:144-154. PMID: 34895959.

表2に、"In your unit, which type of norepinephrine do you use?"と書いてあって、50%が"I do not know"と答えている。逆に言えば半分は知っていたということか?
他の文献は全部correspondenceとかなので気が付かなくてもしょうがないと言い訳できるかもだけど、これはoriginal article。そしてこの文献、持ってた。。。

さて。驚きはまだ終わらない。
日本のノルアドは塩酸塩らしいのだけど、ノルアドのインタビューフォームを読んでも、そうは書いてない。分子量は169(つまりノルアドそのもの)となっていて、塩酸という言葉はどこにも出てこない。このことについて知り合いがメーカーに電話して聞いたところ、なんと返事が「よく分からない」だったそうだ。多分塩酸塩なんだけど、じゃあアンプルに表示されている"1mg"はノルアドそのものなのか塩酸塩なのかは不明(下記)。

もうビックリしまくりで大変。
文献に書いてあるノルアドの投与量って何?という驚きと、
CCとかJCCとかICMとかに書いてあることにずっと気がつかなかった自分への驚きと、
メーカーがちゃんと答えてくれなかった驚きと、
何より、こんな基本的なことで知らないことがまだあったのかという驚きと。

ちなみに、ほぼ全ての文献にLeoneという方が出てくるので、どうもこの人とその周辺が騒いでいるようだ。
ちょー大事な話だもんね、当然だ。もっと騒いだ方がいい。今後は全ての文献でノルアドそのものに換算してあることが明記されるべきだもん。

そしてJCVAの執筆者は日本人。あなたは偉い。
ーーーーーーーーーー
追記:偉い人が、日本のノルアドはそのまま計算して良いだろうと教えてくれました
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心臓手術中の強心薬使用における患者、臨床医、施設レベルのばらつき

2023年10月06日 | 循環
Mathis MR, Janda AM, Kheterpal S, et al.; Multicenter Perioperative Outcomes Group.
Patient-, Clinician-, and Institution-level Variation in Inotrope Use for Cardiac Surgery: A Multicenter Observational Analysis.
Anesthesiology. 2023 Aug 1;139(2):122-141. PMID: 37094103.


心臓手術中の強心薬使用のばらつきの原因は、施設が22.6%、麻酔科医が6.8%、患者が70.6%、と。
おお、数字を初めて見たかも。

これは手術室の話だけど、ICUでも同様。ICUの7不思議の一つに数えてもいいんじゃないかと思うくらい、みんな好き勝手に使っている。そもそも心外(特に予定手術)は死亡率が他のICU患者に比べて極端に低いので、好き勝手にやっても予後は大きく変わらないし、研究もしにくい(大きなNが必要)。ここ20年でほぼ何も進歩していない分野ではないか?
医療と臨床研究のDx化がさらに進んで、RCTのサンプルサイズは数万〜数十万が普通、という状況にならないと、きっと決着しないんだろうな。

でも、さすがにドーパミンはいらないと思う。この文献でも1.2%にしか使われていないし。
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過去20年間の心停止後のTTMの変化

2023年09月30日 | 循環
と意訳してみたが、そもともTTMという言葉が普通に使われ出したのが10年ちょっと前からなので、実はこの訳は間違っている。昔は「低体温療法」と呼んでいたのですよ。あ、知ってるか、さすがに。

Nielsen N, Friberg H.
Changes in Practice of Controlled Hypothermia after Cardiac Arrest in the Past 20 Years: A Critical Care Perspective.
Am J Respir Crit Care Med. 2023 Jun 15;207(12):1558-1564. PMID: 37104654.


僕が集中治療を専門にしたのは26年前なので、この流れはリアルタイムで見てきたのだけど、知らない人は読むと面白いかも。
・1990年代は低体温がブーム、33度で1週間とかやっていた。免疫抑制のせいで全員肺炎になるんだよ、すごいでしょ。
・12-24時間でいいんかい!とみんなで驚いた。
・36度でいいんかい!とさらにみんなで驚いた。
というのがザックリとした流れ。

僕が、「あ、なるほど」と思ったのは、最後の段落のこの部分。
"However, the increased interest in the cardiac arrest population overall over these 20 years, to a certain extent triggered by hypothermia and targeted temperature management, has most likely saved many lives because of improved prehospital care, prolonged care in the ICU, and better long-term follow-up. "
(DeepLによる和訳)
「 この20年間で、心停止患者全体に対する関心が高まったことは、低体温療法と目標体温管理がある程度きっかけとなったが、病院前ケアの改善、ICUでのケアの延長、長期フォローアップの改善により、多くの命が救われた可能性が高い。」

集中治療って、他の分野に比べて変化の速度が遅い(多施設RCTが片っ端からネガティブだから)けど、心停止の世界は劇的に変わり続けているように思う。こういう研究の変遷、というか回り道が、人々の興味を誘い、さらに多くの研究が行われるという好循環に入っている感じ。

時には回り道も大事だね。
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心臓手術後出血に対する早期再手術は予後改善に関連する。

2023年06月26日 | 循環
Shou BL, Aravind P, Ong CS, et al.
Early Reexploration for Bleeding Is Associated With Improved Outcome in Cardiac Surgery.
Ann Thorac Surg. 2023 Jan;115(1):232-239. PMID: 35952856.


外科医は手術は好きだが再手術は嫌い。再手術も手術なのにね。
素朴に不思議だけどそうなんだから仕方ない。

外科医の説得はICU医の大事な仕事の一つ。
楽しくないけど患者さんのためだから仕方ない。

そういうことしたくない人は、セミリタイアしましょう。
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ショック時の微小循環の直接評価

2023年06月25日 | 循環
Bruno RR, Wollborn J, Fengler K, et al.
Direct assessment of microcirculation in shock: a randomized-controlled multicenter study.
Intensive Care Med. 2023 Jun 6:1–11. Epub ahead of print. PMID: 37278760.


乳酸が2mmol/L以上のショック患者に対し、通常の臨床に微小循環の測定値を加えるかどうかでRCT。測定を追加すると介入が増えるが、ショックの改善に差はなく、死亡率は有意差はないが高くなった。

検査・測定をすると介入は増える。それは当然。
問題はそれで患者さんのためになるかどうか。それは分からない。
分かっていることは、
・ICUで行われるモニタリングのうち、RCTで有益性を示した方法は多分ないこと
・Less is moreが重要というのが最近の考え方であること
の2点。
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入院高齢者における血圧管理の臨床的アウトカム

2023年06月24日 | 循環
集中治療とは関係ないけどね。
ちょっと考えるきっかけにはなるんじゃないかな、と思って。

Anderson TS, Herzig SJ, Jing B, et al.
Clinical Outcomes of Intensive Inpatient Blood Pressure Management in Hospitalized Older Adults.
JAMA Intern Med. 2023 May 30: Epub ahead of print. PMID: 37252732.


65歳以上の高齢者に対し、入院48時間以内に静注薬か新規の内服薬で血圧の管理をした患者さんは、血圧が高くても介入されなかった患者さんに比べて院内死亡やICU入室や合併症の発生が多かった。

血圧がちょっと高いという理由で降圧剤を開始したり、外科医に「SBPを〇〇以下で」と言われて素直に従ったりしているICU医へ。
本当にいいの、それで?
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A-lineとNIBPの値が違ったら:パート2

2023年06月06日 | 循環
血圧の話をするのは久しぶり。考える機会があったのでね。

まずこちらをお読みください。
A-lineとNIBPの値が違ったら?
過去ログもまとめて読んでもらえると嬉しい。
でもこれらは全て測定原理や精度の観点で、今回はもっとプラクティカルな話をします。
二つの値が異なる理由はいろいろあります。

A-lineが不正確になる理由
1:A-lineがナマっている
2:上流に血腫があったりして低くなっている
3:血圧に左右差がある
4:トランスデューサーの高さが間違っている
5:トランスデューサーが壊れている
6:大量の昇圧剤を使っている
NIBPが不正確な理由
7:血圧が高すぎる、低すぎる
8:不整脈がある
9:体動
10:マンシェットのサイズが合っていない
11:巻き方が悪い、服の上から測定している
などなど。

「病棟でNIBPを測定したときはそれほど低くなかったが、ICUに来てからA-lineを挿入したら低かったのでノルアドを開始した。」
これは正しい。ショック患者を放置しちゃダメ。でも、
「大量の昇圧剤が必要になった。ナースが改めてNIBPで測定したところ、やはりA-lineよりも高かった。」
この場合は少し注意が必要。
上記の可能性を全て検討しないと、単純にA-lineの方が正しいとは言い切れないから。

ありがちなのが大量の昇圧剤使用により橈骨動脈での圧が低くなる現象。鑑別のためには鼠径にA-lineを挿入する必要があり、ちょっと面倒。ただし、橈骨動脈と同じ太さの血管では同じことが起こっている可能性があるので、臓器灌流圧的に何が正しいかは不明。

いつもこんなに近くにいるのに、君のことが分からない。
昔書いたけど、ほんと、そうなんだよね。
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心停止に対するeCPRのメタ解析

2023年06月01日 | 循環
Low CJW, Ramanathan K, Ling RR, et al.
Extracorporeal cardiopulmonary resuscitation versus conventional cardiopulmonary resuscitation in adults with cardiac arrest: a comparative meta-analysis and trial sequential analysis.
Lancet Respir Med. 2023 May 22 Epub ahead of print. PMID: 37230097.


心停止に対してeCPRが有効、というのはもう論をまたない、と言っていいでしょう。
問題は適応判断と技術の維持
短時間で適応を正しく判断して、かつ予後を改善できるスピードでECMOを開始できる環境を365日24時間維持できる病院って、いったいどれくらいあるんだろうか。
逆に、それができない病院や状況では神経予後を改善することは難しいから、eCPRをしないという判断が必要になる。ここが難しい。

やらない勇気。これを持っている人は多くない、と思う。
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