Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

院外心停止に対するECPR

2023年02月05日 | 循環
NEJMからもう一つ。
N=160でNEJMとは、ちょっと驚き。

Suverein MM, Delnoij TSR, Lorusso R, et al..
Early Extracorporeal CPR for Refractory Out-of-Hospital Cardiac Arrest.
N Engl J Med. 2023 Jan 26;388(4):299-309. PMID: 36720132.


年齢制限、目撃者、by-standaer CPR、心電図がVf、という厳密なcriteriaを満たしてもprimary outcomeに有意差は出なかった。ただし20% vs. 16%で、Nが大きくなったらわからない。実際、「普通のCPRでは蘇生しなかったのにECPRしたら歩いて帰れた患者さん」を見たことのある人は少なくないはず。

ECPRはRRSと似たところがある。それは単なる薬じゃないところ。薬だったら処方したら効果を得られるけど、RRSもECPRも、導入したら誰でもどこの施設でも効果が得られる、とは言えない。ECPRの場合、技術を獲得してかつ維持するのが難しいし、適応を厳密に守るのも難しく、かつその二つが両立しにくい。技術を維持するにはNが必要、でも適応を厳密に守ったらNは少なくなる。

RRSとECPRが違うところ。RRSは導入して効果が得られなくても時間の無駄だったで終わるけど、ECPRの場合、技術が不十分だと救えるかもしれない命が救えなくなるかもしれないし、適応を間違えるとfutileな治療を受ける患者さんが増える。僕の知ってる病院では、院内心停止に対してECPRがなんでもかんでも行われていて、futilityのオンパレードになっている。

VRやARで今とはレベチのシミュレーションが広く行われるようにでもならない限り、技術と適応の矛盾は(一部の施設を除いて)解決しないのでは。
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