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Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

収縮期血圧のショック時の目標値

2024年07月15日 | 循環
血圧の話をするのは久しぶりではないか?

Yuriditsky E, Bakker J.
What every intensivist should know about…Systolic arterial pressure targets in shock.
J Crit Care. 2024 Aug;82:154790. PMID: 38816174.


100のICUを見たけれど、温度版にMAPをプロットしているICUはとても少ない。僕が最近よく行く二つの病院のカンファレンスを聴いていても、血圧の低いことを表現する時にMAPで語る人はとても少ない。そういう人にMAPの方が大事ですよねと言うと、「そんなことは知っている」と返事される。コントロールの悪いDMの人にカロリー制限って大事ですよねと言った時の返事と同じ。

この文献にも、
"The MAP is considered the organ inflow pressure most associated with perfusion, autoregulation, and clinical outcomes. The DAP has garnered attention as a mediator of coronary perfusion and a pressure component associated with survival."
「MAPは灌流,自己調節,臨床転帰に最も関連する臓器流入圧と考えられている。DAPは冠動脈灌流のメディエーターとして、また生存に関連する圧として注目されている。」
"As systole may be short and comprise a relatively small component of the cardiac cycle, the SAP would not be a good surrogate of organ perfusion. At the level of the distal vasculature or resistance vessels, pulsatility is minimal. Consequently, following SAP as a marker of tissue blood flow in lieu of MAP would therefore be unsound."
「収縮期は短く、心周期の比較的小さな要素であるため、SAPは臓器灌流の代用にはならない。遠位血管系や抵抗血管のレベルでは、脈動性は最小である。従って、MAPの代わりにSAPを組織血流の指標とすることは不健全である。」
と記載されている。

そんなことは知っていると思うなら、行動も伴ってほしい。
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Hypotension Prediciton Indexの問題点について少しだけ詳しく。

2024年05月29日 | 循環
検索すると、HPIについて書くのはこれで6回目。
自分的にはこの辺でケリがついていたので半分忘れていたのだけど、自治さいたまのOP室にも入るらしいと聞いて、少しだけ追記することにする。

行われている議論を簡単にすると、
・HPIは術中の低血圧発生を予測しくれて、その情報に基づいて対応すると実際に低血圧の発生が減少する。
・HPIのトレンドはMAPのそれとほぼ同じ。それならMAPを見ていれば済むのでは。
という感じ。
ここで間違えやすいのは、有益なのか無益なのか、1なのか0なのか、という話ではないということ。

低血圧(HPI的にはMAP 65以下)の発生を予測するのに一番重要な因子はもちろん現在のMAP。次に重要なのはちょっと前のMAPとの差。
で、MAPの現在値と数分前とのΔMAPの情報に、波形解析などのそれなりに複雑な情報を追加すると精度がどれくらい上昇するか。それが、例えばAUROC 0.7が0.9になるとかなら有益だし、0.85が0.86になるならほぼ無益。

これは実際に誰かが調べてくれないと分からないけど、経験的には想像ができる。
僕はOP室で麻酔をしたことはないけど、ICUでのいわゆる処置麻酔(内視鏡の止血とか、大きな創処置とか)は普通にしていた。内視鏡の画面を見たいけどグッと我慢して、モニタをずっと見ていた。そうすると、「あ、MAPが下がってきたぞ」と気がついて補液したり、「あ、MAPが上がってきたぞ」と気がついて暴れ出す前に鎮静したりできるから。その経験から想像するに、HPIの精度向上は0.7→0.9よりは0.85→0.86に近いだろう、と予想される。

他の人が処置麻酔をしているのも見たりすると、「ああ、こういうのも上手下手があるんだなー」ということが分かる。これまたこの経験から想像するに、
・まともな麻酔科医がちゃんとモニタを見ていればHPIは、無益
・そうではない状況(若い医師、麻酔の掛け持ち、スマホ見るのに忙しい、など)では有益
かな、と思う。

でも、「MAP 70でアラームかけとけば同じじゃん」という意見には反論できない。
だから、「少なくともしばらくは(高い確率で永久に)使わなくてもよさそう」と思っている。

ちょっと詳しい説明でした。
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CPR中の自動機械換気 vs. 手動バッグ換気

2024年04月26日 | 循環
Shin J, Lee HJ, Jin KN, et al.
Automatic Mechanical Ventilation vs Manual Bag Ventilation During CPR: A Pilot Randomized Controlled Trial.
Chest. 2024 Feb 18:S0012-3692(24)00248-4. Epub ahead of print. PMID: 38373673.

Pilot RCTだけど。
心マも機械、換気も機械。
あとは自動アドレナリンivマシンができれば完全自動だ!
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敗血症性ショックにおける高乳酸血症消失までの時間

2024年04月22日 | 循環
ひとりごとが過ぎましたね。文献紹介に戻ります。

Ahlstedt C, Sivapalan P, Kriz M, et al.
Effects of restrictive fluid therapy on the time to resolution of hyperlactatemia in ICU patients with septic shock. A secondary post hoc analysis of the CLASSIC randomized trial.
Intensive Care Med. 2024 Apr 10. Epub ahead of print. PMID: 38598125.


"a restrictive intravenous fluid strategy did not seem to affect the time to resolution of hyperlactatemia in adult ICU patients with septic shock."
"indicat- ing that measures aimed at improving perfusion and oxy- gen delivery do not seem to affect lactate levels per se."

DeepL和訳:
「敗血症性ショックの成人ICU患者において、輸液制限戦略は高乳酸血症消失までの時間に影響を及ぼさないようであった。」
「灌流と酸素供給を改善することを目的とした対策は、乳酸値自体には影響しないようである。」

そう、その通り。

ちなみに、この手の「乳酸の迷信」絡みのブログ記載はたくさんあるので、検索ボックスで探してみてください。
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敗血症性ショックにおける毛細血管再充填時間のモニタリング

2024年04月15日 | 循環
Hernandez G, Carmona P, Ait-Oufella H.
Monitoring capillary refill time in septic shock.
Intensive Care Med. 2024 Mar 18. Epub ahead of print. PMID: 38498167.


CRTについての最近の話題をサクッとまとめた文章。
ほお、ANDROMEDA-SHOCK-2ってあるんだ(ちなみに1はこちら、コメントはこちら)。
N=1500。楽しみだわ。
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ノルエピネフリン製剤の報告について

2024年03月17日 | 循環
この件、ESICMとSCCMからポジションペーパーが出てましたね。

Wieruszewski PM, Leone M, Kaas-Hansen BS, et al.
Position Paper on the Reporting of Norepinephrine Formulations in Critical Care from the Society of Critical Care Medicine and European Society of Intensive Care Medicine Joint Task Force.
Crit Care Med. 2024 Apr 1;52(4):521-530. PMID: 38240498.


Table 2のガイダンスをDeepLで和訳:
1. ICUにおけるノルエピネフリン投与量および製剤の統一的な世界標準として、ノルエピネフリンベースを採用すべきである。
2. 病院の処方と薬局は、各国で統一された報告方針を採用すべきである。
3. ベッドサイドの看護師、薬剤師、臨床医を含むがこれらに限定されないICUワークフローチームは、ノルエピネフリンをノルエピネフリンベースとしてカルテ、調剤システム、輸液ポンプに報告し、記録すべきである。
4. 研究者および研究文献は、調査に使用したノルエピネフリン製剤を明記し、分析のためにノルエピネフリンベースへの換算を含めるべきである。
5. 製造者は、薬剤バイアルにノルエピネフリン製剤をノルエピネフリンベースとして明示すべきである。
6. ノルエピネフリン製剤の表示と報告を世界的に統一することは、患者の安全を確保し、臨床ケアと研究を最適化するために緊急に必要である。このタスクフォースによって作成されたガイダンスの実施を遅らせる理由はない。

でも過去は変わらないので、以前の文献を読むときは(そしてこれからもしばらくは)、ノルアドの量は半分くらいかもしれないと思いつつ読みましょう。
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補液反応性とうっ血シグナルの共存

2024年03月10日 | 循環
Muñoz F, Born P, Bruna M, et al.
Coexistence of a fluid responsive state and venous congestion signals in critically ill patients: a multicenter observational proof-of-concept study.
Crit Care. 2024 Feb 19;28(1):52. PMID: 38374167.


補液反応性があるから補液しよー、とか、
補液反応性があるということは溢水ではないはずだ、とか。
そういうことを言う人がいるから、それは本当か検討してみたよ、そしたら溢水シグナルの有無と補液反応性は関係がなかったよ、という研究。

実際そういうことを言う人はいるので、大事な研究だと思いつつ。
それよりも面白いなと思ったのは研究デザイン。
”溢水”とか”うっ血”とかって、まあそれを言ったら”脱水”とかも、極端な場合を除いて診断するのはすごく難しい。ICUにいる間は極端な状況にはならない(はずだ)から、その難しいことをいつもしていることになる。臨床診断ですら難しいのだから、それを研究にする、つまり定義を決めるのはもっと難しい。

で、この研究は”venous congestion"というものを対象としているので定義が必要なのだけど、明確に定義するのではなくて、CVPとか心エコー所見とか、複数の”うっ血”っぽいシグナルを測定して、そのシグナルが陽性になる数が多ければ多いほどよりうっ血の可能性が高くなるという仮定のもので、その陽性シグナル数と補液反応性の関連を検討している。

うまいやり方でしょ。
研究しようと思ったけど定義が難しいから諦めようかな、という時はこういう手法も検討してみては?
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The Story of ECMO

2024年03月08日 | 循環
有名な話で、ご存知の人も多いかも知れないけど。

Bartlett RH.
The Story of ECMO.
Anesthesiology. 2024 Mar 1;140(3):578-584. PMID: 38349754.


英語も平易でスッと読めるし、単純に楽しかった。ナースがRCTを拒否したところとか。
週末のお供にでも。

関連動画もあった。こちらはナース視点。
The ECMO Story
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術後合併症軽減のための周術期アルブミン補充

2024年02月22日 | 循環
おお、アルブミンのRCTが外科系のトップジャーナルに掲載されている!
今更かー!

Schaller SJ, Fuest K, Ulm B, et al.
Goal-directed Perioperative Albumin Substitution Versus Standard of Care to Reduce Postoperative Complications: A Randomized Clinical Trial (SuperAdd Trial).
Ann Surg. 2024 Mar 1;279(3):402-409. PMID: 37477023.


で、結論は、"cannot generally be recommended"。
良かった、良かった。Positiveだったらどうしようかとドキドキしながら読んじゃったよ。

それにしても、最近アルブミンをよく見かける気がする。ここ数ヶ月でも、これとかこれとか。
何かあったんかい??
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心停止後の重症患者管理

2024年01月22日 | 循環
Hirsch KG, Abella BS, Amorim E, et al.; American Heart Association, Neurocritical Care Society.
Critical Care Management of Patients After Cardiac Arrest: A Scientific Statement from the American Heart Association and Neurocritical Care Society. Neurocrit Care. 2023 Dec 1. Epub ahead of print. PMID: 38040992.


同じものがCirculationからも出ている。

こういうのはざっと眺めて、自分と違うところを探すのが鉄板なので、「これはしてなかったな」と思ったところを抜粋してみた。

Brain Oxygenation, Perfusion, Edema, and ICP Statements
4. 高度な脳モニタリングが日常的に使用されていないICUでは、臨床的な懸念や有害な結果の証拠がない限り、MAP>80mmHgを目標とする。

EEG Monitoring and Seizures Statements
3. 間欠的脳波モニタリングを受けている患者において、意識が回復しない患者ではCA後72時間から120時間の間、毎日脳波を測定する。

Sedation and Analgesia Statements
4. NMBは持続点滴としてではなく、体温調節中に必要に応じて使用する。

Pulmonary Statements
2. ROSC後に信頼できる動脈酸素飽和度が得られたら、酸素飽和度(Spo2)が92%~98%になるようにFio2を滴定する。

Digestive System Statements
1. ICU入室後できるだけ早くENを開始する。

ステートメントだけならすぐ読めるので、皆さんもやってみては。
そして、自分のプラクティスと違うなと思った点については、鵜呑みにせず、かと言って無視もせず、みんなでエビデンスレビューをして相談しましょう。
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