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Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

外科医か集中治療医か: 術後集中治療は誰が担当すべきか?

2023年09月26日 | ICU・システム
なんで今更?と思って読んだ。

Zammert M, Carpenter AJ, Zwischenberger JB, Sade RM.
Surgeon or Intensivist: Who Should Be in Charge of Postoperative Intensive Care?
Ann Thorac Surg. 2023 Jun 24. Epub ahead of print. PMID: 37356518.


外科医と集中治療医の協力、さらには多職種による方針決定が重要なのは当然として、意見が対立した時に最終判断をするのは誰であるべきか?
という議論をしているようだ。

外科医は、
・外科医は最初から最後まで責任を持つ法的義務がある。
・申し送りでは術中の状況のニュアンスまでは伝わらない。
・患者や家族は外科医を信頼して手術を受けている。
・集中治療医の存在が有害であることを示した研究もある。

集中治療医は、
・集中治療医の有効性を示した研究は枚挙にいとまがない。
・世界的にも集中治療医がICUの管理責任を負うのが普通。
・ICUにいる間に患者家族と接する時間は集中治療医の方が長い。
・外科医は集中治療のトレーングをほとんど受けていない。

といった感じ。
どっちも間違ったことは言っていないから、この方向で話しても平行線。

"The most felicitous conclusion we can reach is that the best model for ICU care is a delicate balance of shared responsibility by a well-managed, protocol-driven, multidisciplinary team with clear lines of communication."
(DeepL和訳)
「私たちが到達できる最も望ましい結論は、ICUケアの最良のモデルは、明確なコミュニケーションラインを持つ、よく管理されたプロトコル主導の多職種チームによる責任分担の微妙なバランスであるということである。」
という、結局元に戻っとるやんけ的な言葉で締められている。

まあ、そうっすけどね。
ただ、微妙なバランスって。。。
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重症患者・家族・介護者のための緑と屋外施設

2023年09月20日 | ICU・システム
van Iperen ID, Maas J, Spronk PE.
Greenery and outdoor facilities to improve the wellbeing of critically ill patients, their families and caregivers: things to consider.
Intensive Care Med. 2023 Aug 23. Epub ahead of print. PMID: 37610484.


ICUには緑の庭が必要だ、自分のところにももうすぐできるぞ、という文章。
まだ完成していないから写真がCGなのは残念だけど、偉いのは、参照文献15個使ってその根拠を述べていること。

100のICUを見てきたけど、さすがにこういうところはなかった。
新しいICUを作る予定の方々、ICUの改修を計画している方々、どうですか、緑?
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日本の病院のICUベッド数(R3年度)

2023年06月08日 | ICU・システム
まず過去ログ:
日本の病院のICUベッド数(R2年度)
日本の病院のICUベッド数(H30年度)
気がついたら、厚労省のデータが更新されR3年度のデータが出ていたので、再計算。

なお、「ICU」というものを、
・特定集中治療室管理料 1 - 4
・救命救急入院料 2 or 4
・小児特定集中治療室管理料
のどれかを算定している病床と定義した。
()の中はR2年とH30年の数字。

・ICUは614(←601←625)の病院に774(←760←794)病棟、7221(←7015←7204)床あった。
・ICUのある病院の全病床数のうちのICUベッド数の割合の平均:2.36%(←2.36←2.35)。
・人口10万当たりのICUベッド数:5.74床(←5.71←5.70)

次に、ICUのベッド数が多い病院トップ10。


病床数が200以上ある病院のうち、bed_ratioが高い病院トップ10。


循環器や小児など専門病院が含まれるので、対象を500床以上の病院に限定(総合病院であろうと仮定)。


以上。
ICUの数って、増えたり減ったりするんだね。そうか、コロナの影響か。
そして人口あたりだとゆっくりと増え続けている。
ふーん。
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ICUの医師:患者比と死亡率

2023年05月22日 | ICU・システム
Kahn JM, Yabes JG, Bukowski LA, Davis BS.
Intensivist physician-to-patient ratios and mortality in the intensive care unit.
Intensive Care Med. 2023 May 3:1–9. Epub ahead of print. PMID: 37133740.


うーん。
患者数が多いと、具合が悪くなっている患者さんに気がつかなったり、病態について深く考える時間がなかったり、間違えたり、手を抜いたりなどなど、良いことはない。
じゃあ何人が限界なのか、望ましいのか、知りたくなるのだけど、それを疫学的に算出しようとすると上手くいかないらしい。この文献のIntroductionにも、過去5つ研究があって、そのうち3つでは医師・患者比に関連性が見られなかったそうなので、ネガティブな研究はこれで4つ目ということになる。

じゃあ関係がないんだな、とはさすがに思えない。例えば1人で100人の重症患者管理は絶対にできないし、域値は当然存在するはず。
個人の能力とか重症度とかコメディカルの種類や質など他にも要素がたくさんあるから、そんな数字がないのは当然なのかもしれないが、やっぱり数字があった方が目安になって良いと思うのだけどね。

多施設でこういう研究をやると、普通は病院毎に平均的な医師:患者比を使用する。例えばJIPADのデータでも同様の研究は可能。でも、当然それは不正確。で、この研究は電子カルテを使って日々の医師:患者比を調べている。でも施設数は少ない。結構なNと人数についての比較的詳細な情報がないと、先には進めなさそう。
うーん。
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人工呼吸患者における主観的および客観的な生存率の予測

2023年04月28日 | ICU・システム
Boeck L, Pargger H, Schellongowski P, et al.
Subjective and objective survival prediction in mechanically ventilated critically ill patients: a prospective cohort study.
Crit Care. 2023 Apr 19;27(1):150. PMID: 37076881.


961例の人工呼吸患者の28日と1年後の生命予後を予測。主観による予後予測のAUROCは、ナースが0.74、 ジュニア医師(定義不明?)が0.78、アテンディングが0.76で、客観的な指標と同程度だったが、主観的予測は高リスク群の死亡率を20%ほど過大評価した。

入室24時間のデータのみを利用した重症度スコアでもAUROCは0.8の後半は普通あるので、研究全体の予測精度が低いのは不思議。
職種によって予測精度があまり変わらないのは面白い。それぞれ異なる情報を持っているのが理由かも。

でも何よりも、主観的な予測が死亡を過大評価(死なない人でも死ぬと予測する)するのは問題だと思う。
APACHEやSAPSは臨床利用するな、が前提。でも実際はそれと同程度の主観予測に基づいて治療継続するかどうかの方針を決定している。それって望ましい形なのだろうか?

で、実は自治さいたまでは客観的な予後予測の指標を今月から臨床で使用し始めた(重症度スコアとかSOFAとかじゃないよ)。
色々理由があって具体的なことは話せないので、知りたい人は自治さいたままでお越しください!
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看護師同士の親密度と重症患者における死亡率

2023年04月26日 | ICU・システム
ちょっと珍しいタイトルだったので、ジャケ買い(タイトルだけでPDFをダウンロードすること)した。

Duclos A, Payet C, Baboi L, etal.
Nurse-to-Nurse Familiarity and Mortality in the Critically Ill: A Multicenter Observational Study.
Am J Respir Crit Care Med. 2023 Apr 15;207(8):1022-1029. PMID: 36219472.


研究の内容自体はちょっと理解できない部分あり。過去に同じ勤務をしたかどうかが今回の勤務中の患者死亡と関連があり得るのか、ちょっと疑問。

結果とは別に、思ったこと。
こういう研究をやろうと思うためには、ナースがICU患者の予後に影響を与えることが前提となっている。そうでなければ親密度で予後が変わるだろうかなんて考えない。
それ自体は全く同感。実際に患者さんに医療を提供しているのはナースだし、もっとも近くにいて観察しているのもナースなのだから。
でも、日本のICUナースの何割がそう考えているだろう?

20年前、オーストラリアのICUで働いていた時に、40代のナースが、「自分たちの仕事はダメな医者から患者さんを守ることだ」と言っていた。それを聞いた時はまだ僕も若く、イマイチ理解できなかったが、今は完全に理解できるし、完全にその通りだと思う。

ICUで働くナースの皆さん、
あなたの仕事は与えられた業務をこなしておしまい、という仕事ではありません。その質が患者さんの予後に直結します。
責任も大きいけど、その分やりがいも大きいはず。
ムカつく医者もいるし、ダメな医者もいるし、他にもストレスはたくさんあるけれど、どうかよろしくお願いします。
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ICU医師と看護師のバーンアウトについてのシステマティックレビュー

2023年04月14日 | ICU・システム
Papazian L, Hraiech S, Loundou A, et al.
High-level burnout in physicians and nurses working in adult ICUs: a systematic review and meta-analysis.
Intensive Care Med. 2023 Mar 27:1–14. Epub ahead of print. PMID: 36971792.


リスク因子を同定して、それをターゲットとした介入をしたくても、そもそも発生頻度が研究によって大きく異なるので、みんなで同じ定義を使いましょうよ、というのが結論。
"there is the need to use a consensual definition of burnout,,,"
大事だよね。それはAKIの歴史を見ればよく分かる。

医療者の健康は患者さんの健康に直結するのだから、しっかり定義して、しっかり研究してほしいです。
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ICUでの診断

2023年03月31日 | ICU・システム
Pisciotta W, Arina P, Hofmaenner D, Singer M.
Difficult diagnosis in the ICU: making the right call but beware uncertainty and bias.
Anaesthesia. 2023 Apr;78(4):501-509. PMID: 36633483.


ICUにおける診断についてのレビュー。
この話題についてのレビューって、初めて読んだかも。
このブログの過去ログを見ても、手元の文献を漁っても、ICUにおける診断の一般論についての文献はほとんど見つけられなかった。

アンバランスだ。
自治さいたまのICUのカンファを聞いていても、患者さんの診断について相当な時間が割かれている。そりゃそうだ、ちゃんと診断しないとちゃんと治療できないんだから。

でも、診断についての研究は驚くほど少ない。まあ、理由は比較的明確。何が正しい診断なのかって分からないことが多いから、研究が少ないのも仕方ないと言えば仕方ない。

単純作業を機械がやってくれるようになればなるほど、診断の重要性は増していくはず。
診断って苦手なんだよねと思っているあなた、気が向いたらこのレビュー読んでみたらいいかもよ。

診断関係の過去ログ
ICUで言ってはいけない言葉
ICUにおける診断
重症患者の診断間違い
感染部位の誤診と死亡率
ICUに必要なこと②
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「看護師がアラームを見過ごすミス」について

2023年02月18日 | ICU・システム
多臓器不全で2歳児死亡、「看護師がアラームを見過ごすミス」…遺族が病院を提訴

モニタのアラームについてまとめた過去ログを再掲。
アラーム関連の過去ログまとめ

モニタのアラームは、僕が集中治療を専門とした25年間、何も変わっていないし、もちろん上記を書いた9年前とも変わっていない。
今も、日本中、世界中のICUでアラームが鳴りまくっていて、それを医療者は無視しまくっている。そんな医療者に、「アラームを鳴りっぱなしにしちゃいけないよね、ちゃんと設定する必要があるよね?」と聞けば、多分全員がyesと答えるにも関わらず。

何か、今までとは全然違う対応方法が必要。きっとそれはAIを使った技術。
でも、その技術が普及するまでにはまだしばらくかかる。それまでの間は、「無駄なアラームを減らす方法」シリーズで対応してください。マジで、アラームの数を減らすことができるから。
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「日本医師会、NP国家資格に反対の考え」というニュースについて

2023年02月16日 | ICU・システム
M3のニュース(もしかしたらM3にログインできないと読めないかも?)。
日本医師会、NP国家資格に反対の考え
こちらは同じくM3の13年前のニュース。
「診療看護師」の新設に反対、「意義も定義も不明」と日医

ちょっと面白いのは読者(つまり医者)による賛成反対の投票。この記事を書いている時点で、13年前の記事は賛成17で反対1(この1は僕がさっき入れた)だったのに、今回の記事は20対20になっていること。

で、思い出した文献。
Trunkey DD.
An unacceptable concept.
Ann Surg. 1999 Feb;229(2):172-3. PMID: 10024096.

この研究、つまりある外科ICUをclosed ICUにした効果についての研究に対するeditorial。繰り返すけど、correspondenceじゃなくてeditorial。
二段落目をDeepLで和訳。
「このコンセプトは受け入れがたいものであり、猛烈に非難されるべきものだ。私が非難するのは、主に誤った目的と不適切な結論に基づくものである。このコンセプトを否定する二番目の理由は、専門家としての哲学の問題であり、学習刺激、ケアの継続性、医療経済への悪影響が含まれる。」

こういうことを直接ではなくても間接的に言う医者には会ったことがあるし、今も存在するはず。でも、ずいぶん数は減ったと思う。理由は簡単。集中治療専門医が増えて、集中治療専門医が管理するICUが増えたから。賛成か反対かではなく、知っているか知らないか。M3のニュースの賛成反対の変化も、13年前と比べて実際にNPとして働いている人が増えて、NPと働いたことがある人が増えると、こういう結果になる。

20年前のちょうど今頃、オーストラリアから日本に帰ろうとしてICUの職場を探したのだけど、まったく見つからなかった(仕方ないので救命センターに就職)。でも今は、医者の斡旋サイトを見れば「集中治療医募集」なんて病院をいくつも見つけることができる。

NPの皆さんへ。
10年か20年したら、若いNPに、「昔はこんなだったんだよ」と教えてあげてください。

若い集中治療医の皆さんへ。
こういうことを言う医者と対峙する必要が(ほぼ)なくなった現状は、先人たち(僕も含む)のおかげであることを忘れず、会うたびに感謝しましょう。
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