慢性腎炎、(特にIgA腎炎)の漢方治療21報
本稿では医案中の平薬の分析に入りたいと思います。
題して、
慢性腎炎、(特にIgA腎炎)の漢方治療における平薬の効能です。
平薬:薬性が平なるが故に生薬の単独使用では原則A:寒熱弁証とは原則無縁となります。 ちなみに八綱弁証とは寒熱 表裏 陰陽 虚実の弁証です。 羅列すれば次のような生薬が出てきました。 炙甘草、生甘草、生甘草梢、桔梗、牛膝、王不留行(留行子)、茯苓、藕節、蒲黄、琥珀粉、阿膠、山薬、蓮子肉、金桜子、芡実、菟絲子、党参、赤小豆、玉米須、玉竹、絲瓜絡、地錦草 甘草(炙甘草) もっとも馴染みの深い漢方薬です。性味は甘、平、帰経は肺脾胃心、功能は①補脾益気②潤肺止咳③緩急止痛 ④緩和薬性 ⑤解毒作用のほぼ5つです。漢方処方の70%以上に配合されています。 甘草の③緩急止痛(急な痛みを止痛する効果)で有名な方剤は白芍甘草湯で其の量は甘草60-120g 白芍は四分の一です。甘草の④緩和薬性は調和諸薬と別称されます。大棗にも同様の功能がありますが、大棗は温薬です。 炙甘草は補中効果(補気、益気)に優れ、生甘草は瀉火解毒、止咳に優れています。瀉火となればAには必ずしも当てはまりません。ある程度の清熱の意味が生じてきます。これをBとしますと、 甘草梢(しょう シャオ)は尿道痛に効果があるとされ下焦湿熱一般に効果があるとされます。こうなればBになります。 甘草の解毒作用は主とし、食中毒 薬物中毒で清熱解毒薬と配合します。生甘草を使用します。 方剤例で確認してみましょう。 四君子湯(太平恵民和剤局方)補気方剤の基本です。人参10g、白朮9g、茯苓9g、炙甘草6gと炙甘草が使用されています。方剤分析は以下のようになります。 君薬-人参-甘温大補元気、健脾養胃 臣薬-白朮-苦温健脾燥湿 というのは、甘草は、配合する薬剤によりその効能が変化するのです。例を挙げれば、 人参、党参、黄蓍と配合すれば補肺脾に作用し、甘草の肺に対する効能は潤肺止咳化痰です。 西洋参、太子参と配合すれば補気生津に作用し、 白朮、大棗と配合すれば補中益気に作用し、 山薬、人参と配合すれば補気養陰に作用するという具合に、性質がころころとまではいかぬまでも変化するからです。 甘草の補気効能の最大の特徴は補心気の際の君薬となることです。方剤では炙甘草湯(傷寒論)があります。
佐薬-茯苓-甘淡滲湿健脾 使薬-炙甘草-甘温調中(こうなるとなぜか温薬の性質のような雰囲気がありますね。