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慢性腎炎の漢方治療 第30報

2013-01-30 00:15:00 | ブログ

岳美中氏医案 脾腎欠虚案

31歳女性 党幹部。

1973825日来診。患者自身が慢性腎炎を既に2年患い、常に、汗が出て悪風があり、微熱、腰酸腿軟、舌淡白。気虚表不固と診断、(金匱要略)防己黄蓍湯:黄蓍15g防己12g白朮9g炙甘草9g生姜9g大棗4g 14剤を処方した。長期に玉米須を毎日乾燥品60gを洗浄し、煎じてお茶の代わりに服用するように伝え、6ヶ月間で腎機能を増強することを狙った。(中国民間では蛋白尿の軽減に玉米須を用いる

920日 二診:脈は滑に転じ、歯痕あり、汗は既に止まって、悪風は無かった。尿検査では変化がなかった。前方に茯苓9gを加え、14剤を処方。

1016日 三診:右脈はまだ滑、全身の感覚は不快なくも、月経血に血塊があり、かすかな腹痛があり、食欲や睡眠が少し悪かった。検査:尿蛋白微量、白血球偶見。

(金匱要略)当帰芍薬散をせんじ薬にして調理経血を図った。処方:当帰9g川芎6g白芍19g澤瀉18g白朮9g茯苓9g 10剤を処方した。

115日四診:脈に虚数が現れた。舌白、咽頭痛、不眠。尿検査で蛋白(+)管型2個。脾腎が久病にて虚し、腎脈は咽喉を巡るので、咽喉痛、脈虚舌白は脾精不足である。すでに2ヶ月治療し、蛋白尿が消失せず、時々管型が出現し、長期的な治療に切り替えて、

芡実合剤を採用した。芡実30g白朮12g茯苓12g懐山薬15菟絲子24金桜子24黄精24g百合18g枇杷葉9g党参9g 14剤を処方した。

1123日五診:脈は依然として虚、左関は弦、舌白、歯痕あり。月経正常。尿検査:蛋白微量、赤血球1~2、白血球23。前方に山楂肉9gを加えて、蛋白尿の消失を強化した。

その後、19741月から8月まで、芡実合剤を服用し続け、病状は次第に好転し、少しずつ健康を回復した。経過中に咽喉痛が出現した時には、原方に牛蒡子連翹を加えるとすぐに快癒した。睡眠が不良の時には、酸棗仁合歓皮夜交藤にて随時効果が得られた。

1975216日、来院時には、活き活きとしており、面色紅潤であった。既に半日仕事が出来るようになった。  (岳美中医案医話集)

評析

芡実合剤方中、白朮、茯苓は益気健脾利水、運化を促進し、水気が内停しないように働く:芡実 菟絲子 懐山薬は脾腎双補に作用し、参、朮、苓を配合するは陰陽両補に治療し(党参の生津養血作用を補陰としたようです);百合 黄精 金桜子は肺、脾、腎の三臓に入り、その不足を補し、効力は比較的強い。枇杷葉は清熱入肺し、肺気を粛降させ、水道を利下、尿を膀胱に下ろす。

諸薬を合わせて用い、補腎健脾に共に奏功し、宣肺利水の効となる。

ドクター康仁の印象

粛降については評析中に記載がありますが、宣肺については記載がありません。それが、評析に突如として宣肺利水という解析が出てきます。一種の誤魔化しに近い評析です。

案中に、腎脈は咽喉を巡るので、咽喉痛、脈虚舌白は脾精不足である。との記載がありますが、疑問です。単に一過性の風熱と考えても間違いではないと私は思います。牛蒡子も連翹も原則風熱の治療薬だからです。咽頭粘膜の発赤等の所見の有無が案中に記載がありません。根拠と推察という肝腎なところが省略されています。

治標の手法が宣肺利水とすれば「標」としての浮腫があると思いきや、その記載は無く、歯痕のみを以って、水湿内停とする根拠は薄いでしょう。蛋白尿があれば腎炎、腎炎なら利水というワンパターンな思考経路しか見えてきません。

芡実合方は使える方剤でしょう。全体として薬性が平に近く、長期服用が可能だからです。

2013130日  記