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慢性腎炎、(特にIgA腎炎)の漢方治療14報

2013-01-08 00:15:00 | ブログ

休日が終わり、今日(17日)から診療の仕事始めです。「漢方市民講座」は、引き続き慢性腎炎、特にIgA腎炎(腎症)の漢方治療の医案分析を行います。

何氏 陰虚火灼案

現病歴

6歳男児香港人。1993年春に突然血尿が出現、九龍の某病院を受診。腎生検によりIgA腎炎と確定診断を受ける。医師は特別な治療は無いと言い、将来腎機能が低下する可能性ことなどを説明し、涼血止血、活血補薬の中薬を処方したが、病状は悪化して、食欲不振、精神的にも困閉し、肉体的にも倦怠感が強く、尿量減少、顔面の軽度な浮腫が出現、65日に何氏を受診。

199365日何氏初診時検査所見

顕微鏡による尿沈渣検査で赤血球400倍率視野106個、尿蛋白定性2+、白血球は散見できる程度であった。脈浮数(96毎分)、舌紅で、瘀斑無し、苔黄、血尿は強いが病は血分にはなく、(まだ)気分に展開しており、通津(付記:あまり用いない中医学用語であり、日本語での解説が困難ですが、津液の流れをよくするという意味でしょうか?処方内容から判断すると利水滲出の意味ではないかと思いますが断定はできません)、瀉熱の剤:枇杷葉10g北杏仁10梔子皮10黄芩10茯苓皮15白茅根30g滑石20薏苡仁20g冬瓜皮20車前子10g玉米須10陳皮5gを服用させた。(計12生薬)

(涼~微寒 寒薬が目立ちます。つまり、氏は寒熱弁証で熱証と判断した訳です)

ここで、使用生薬について少し解説を加えますと、

枇杷葉(びわよう)

枇杷葉↓(苦涼肺胃性味帰経の順で表記します。

下向きの矢印は降気を示し、肺気上逆を抑え止咳するという意味で、薄いブルーで表記したのは

性味が(苦)涼であるからです。文字で表現すると、枇杷葉は苦涼で下降し、肺熱を泄降して化痰止咳する

ということになります。枇杷葉↓(苦涼肺胃清肺化痰止咳潤肺)と表現すればほぼ十分です。

肺熱の咳嗽 呼吸困難 咽頭の乾燥感などの方剤例として「枇杷清肺飲」があります。

枇杷清肺飲(医宗金鑑)」:炙枇杷葉 沙参 炙桑白皮 山梔子 黄連 黄柏 炙甘草

中国語で頓咳=百日咳の場合には百部などと使用する治百日咳方もあります。

陰虚肺に使用される「清燥救肺湯(医門法律)」中に枇杷葉が配伍されています。

清燥救肺湯(医門法律)」:桑葉 石膏 杏仁 甘草 麦門冬 人参 阿膠 炒胡麻仁 炙枇杷葉

胃経の効能に降逆止嘔があります。

胃熱の悪心嘔吐に竹筎、白茅根、半夏などと使用されます。

枇杷葉飲(本事方)」:生枇杷葉 半夏 茯苓 党参 檳榔子 白茅根 生姜の組成です。

胃熱の口渇には、芦根 麦門冬 天花粉などと配伍されます。

ともかく呼吸器症状と胃熱に用いられるのですから、何氏が何故、枇杷葉を配伍したのでしょうか。

評析に期待しましょう。

杏仁(きょうにん)

杏仁↓(苦辛肺大腸)(止咳平喘潤腸通便)杏(アンズ)の種子です。↓が下向きなのは、降気↓化痰が

特徴だからです。肺気上逆に対して降逆止咳、平喘に作用します。杏仁は宣肺に作用もします。

薬用にするのは苦い 苦杏仁です。傷寒論には「喘家桂枝湯を作り厚朴、杏子を加えて佳なり」の記載があります。

桂枝加厚朴杏仁湯です。湯中、杏仁は宣肺降気により止咳平喘に作用します。煎じ薬を作る場合の注意点は

後下(こうしゃ)です。有効成分は熱により破壊されるので、初めから煎じないで他薬を煎じてから、

後で煎じるという意味です。何氏の杏仁、薏苡仁、滑石の配合を見ますと、想起するのが三仁湯です。

三仁湯(さんにんとう 温病条弁 清代)

杏仁 ? 薏苡仁 竹葉 通草 滑石 半夏 厚朴 

証:悪寒 頭重痛 身体が重い 身熱不(強い熱感があるが体表部を触れても熱が無い)午後熱感が悪化

胸腹痞 張 納呆(食欲不振と同意)悪心 嘔吐 下痢 尿量少 白?苔 濡脈などになりますが、