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慢性腎炎、(特にIgA腎炎)の漢方治療16報

2013-01-10 13:18:36 | ブログ

本日も引き続き腎炎の医案解析を行います。

劉宝厚氏 医案 今回はそのつどドクター康仁のコメントをブルー記入します

気陰両虚兼湿熱案

17歳女性、19897月初診。主訴:反復発作性無痛性の肉眼的血尿が2年続いている。北京の某病院で腎生検を受けてIgA腎炎の確定診断を受け、抗菌剤などの治療を受け、肉眼的血尿は消失、ただし顕微鏡的な血尿が持続していた。1ヶ月前、扁桃腺摘出術を受けた。今回の入院前2ヶ月前、(劉氏病院に入院する2ヶ月前、つまり、扁桃腺摘出術を受けた1ヶ月前)感冒時に同様の肉眼的血尿が出現した。劉氏初診時、尿血、咽干、乏力、眩暈、手足心熱があった。(咽干、乏力、眩暈、手足心熱で気陰両虚証と判断できますが)検査では、血圧正常、眼瞼は両方ともに軽度浮腫(風水の証のひとつです)があり、咽頭部の充血(通常は風熱の証です。まだ表証が残っていたのかもしれません)、心肺異常なく、両下肢浮腫無し。尿蛋白(+)潜血(3+)明らかな肉眼的血尿であった。その他の検査は正常であった。舌紅苔白、脈沈細であった。

劉氏中医弁証:気陰両虚兼湿熱今までの記載の中に明確な湿熱の証はありませんので、劉氏はこのような腎炎を湿熱とする「弁病論」をお持ちのようです。

劉氏方薬

白花蛇舌草30半枝蓮15g女貞子15旱蓮草15g生地黄15山薬15白僵蚕10g蝉衣10g白茅根15g益母草15沢蘭葉15g水煎服用、毎日1剤。

ドクター康仁 コメント:白花蛇舌草30半枝蓮15gの組み合わせを見れば抗癌生薬の代表例とも言えるでしょう。

現実  的に私も抗癌生薬として多用しています。清熱解毒 利湿抗癌に作用します。弁病的な観点からは、

過剰な免疫反応を抑えるという意味もありますから、劉氏も意識して使用しているのかも知れません。)

沢蘭(たくらん)苦辛/微温 肝脾)活血化瘀薬に分類されます。活血祛瘀、行水消腫に作用します

シソ科のシロネ Lycopus lucidus TURCZ. の全草。これも日本では流通していません。

血滞による無月経、生理痛、生理不順、腹中のしこり、産後瘀滞による腹痛などに用いる。
肝気を阻通させ、経脈を通らせる効果が良い、祛瘀散結の作用があって正気を傷つけないが、ゆえに血脈瘀滞、経行不利には、中国では常用薬として使われる。
婦人科の疾患には、よく当帰、丹参、香附子などを配合します
打撲損傷、胸脇痛、急性化膿性疾患などの証候に用います。
沢蘭の活血祛瘀、通利経脈の効能に比較して、行水消腫の力が弱い。
防已と配合して水腫を退くことが多いとされる。

劉氏治療経過

同時に毎日ペニシリン640万単位を経静脈的に2週投与した。咽頭部の充血は消失

コメント白僵蚕は中国漢方医学では、古くから息風止痙(そくふうしけい)(痙攣を止める)、

消腫散結(しょうしゅさんけつ あるいは化痰散結ともいう)(リンパ節の腫大、腫瘍のしこりを除く)作用が

注目されてき ました。細胞代謝に対する抑制効果は消腫散結作用と関係すると思われています。

蝉衣辛涼解表薬 疏散風熱 発散風熱薬であり、白僵蚕と共に祛風、疏散風熱を狙ったものでしょう。

通常、上気道感染症で咽頭痛があれば風熱と考えます)

肉眼的血尿消失、乏力などの自覚症状は明らかに軽減した。尿検査は依然として異常であり、尿蛋白(1~2+)潜血(2~3+)顕微鏡検査で毎視野赤血球713となり、ペニシリンは中止した。

ドクター康仁 コメント:(女貞子