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慢性腎炎(特にnon-IgA型腎炎)の漢方治療 第3報

2013-01-24 03:00:00 | ブログ

時振声氏医案 外感風熱 迫血妄行案

42歳男性、1993107日初診。患者は1週間前、感冒発熱と肉眼的血尿が生じ、某医院でペニシリンを投与された。止血効果が不十分であり、遂に時氏を受診した。

所見:肉眼的血尿、咽頭痛を自覚、口干喜冷飲、腰が不快、頻尿無し、尿意切迫無し、排尿痛や尿路の刺激症状無し、大便乾燥、23日に一回、小便は新鮮肉を水で洗ったような紅色、舌紅苔薄黄、脈細数。尿検査で蛋白(プラスマイナス)潜血反応(4+)白血球1520個毎視野。

弁証は外感風熱 迫血妄行。疏風散熱 養陰涼血を補助として治療。銀蒲玄麦甘桔湯加味(金銀花 蒲公英各30g玄参15g麦冬10g甘草6g桔梗10g大小薊、白茅根各15g服薬2日後に肉眼的血尿は消失、咽頭痛は好転、服薬2週後での尿検査:蛋白(-)潜血(-)白血球(-)赤血球1~3毎視野。さらに2週服薬後に尿検査は正常になった。原方から大小薊を除き、さらに2週間治療を強めた。

現在に至るまで再発はない。(遼寧省中医雑誌1996年第2期)

評析

 隠匿性腎炎の臨床症状は無症候性蛋白尿或いは単純性血尿であり、中医学の尿血、溺血などの範疇に属する。その病機は外感風熱の際に、熱毒が肺に壅塞(ようそく)し、肺失宣降になり、水道不利になり、熱毒が腎絡(膀胱)を循経するために血尿が起こる。本案中、玄参 麦冬 甘草 桔梗は滋陰利咽に、金銀花 蒲公英は疏風清熱解毒に、大小薊 白茅根は涼血止血に作用して全体として効果が増強された。上焦の肺熱が清され、肺が宣発機能を回復すれば、下焦の水道は通調され、熱邪は自ずと去り、血尿も止まる。すなわち、清上治下の意味である。時氏は病機「伏其所主、必先其所因」「敵(病)に勝つためには、その原因を先に治す」を謹守している。疏風散熱、養陰涼血にて、清上にして治下となり、肉眼的血尿を急速に消失させ、顕微鏡学的血尿も非常に軽快させるのである。

ドクター康仁の印象

これも、隠匿性腎炎の範疇に入れていいものかと思う症例である。感冒発熱と、ほぼ同時に?肉眼的血尿が生じる場合には、私は、基本的に慢性腎炎が基本的に存在し、上気道感染で病状が悪化したのではないかと疑う。某医院でのペニシリンの投与は適切な処置であって間違いではないと思う。ただし、この症例も咽頭培養やASKASLOCRP、補体値などの検査、何よりも腎生検がなされていないので、ただ「講談風名文」である評析を読み感心するのみであるが、「完全には納得できない」ものを感じる。

2013124日 記