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慢性腎炎、(特にIgA腎炎)の漢方治療13報

2013-01-06 00:15:00 | 慢性腎炎 漢方治療

陳紀藩氏医案1 陰虚内熱挟瘀案

36歳既婚女性。1996812日初診。主訴:2年余の反復性肉眼的血尿、腰痛を伴う。現病歴:1995年初め、感冒発熱後肉眼的血尿が出現し、地元医院にて感冒の治療を受けたが肉眼的血尿は持続し、某病院で腎生検を施行されてIgA腎炎と診断され、ステロイドホルモン、雷公藤の治療を受けたが無効であった。平素、顕微鏡学的血尿は毎視野50個程度で、尿蛋白定性はプラスマイナス或いはマイナスであり、過労や感冒時にはその度、肉眼的な血尿が出現した。1週前に、感冒による肉眼的血尿が出現し治療を求めて来院した。所見:小便は濃い茶色、腰膝酸痛を伴い、鼻閉咽痛、頭痛、口干喜飲、食欲は保たれているが、大便は干結、舌質暗紅、苔薄黄、脈細数であった。既往に肝、肺、心疾患は無い。体査:形体消痩、自動体位(運動障害は無い意味)、面色暗紅、眼瞼や全身の皮膚に浮腫や出血点は無し。顎下にピーナッツ大の大小の表在リンパ節を触れる。可動性であり、明らかな圧痛は無い。感覚器は正常であり、瞳孔は左右不同無く対光反射も敏で正常である。咽頭粘膜の充血があるが、扁桃腺の腫大は無い。甲状腺の腫大(-)で、呼吸音は正常で、湿性乾性ラ音は聴取されなかった。心拍数90毎分、不整脈なし、心尖部に雑音なし。腹部は平軟、圧痛や筋性防御の反跳痛はなく、肝、脾臓は肋下に触れない。四肢脊柱に奇形なく、神経反射は正常、病的反射は認められなかった。二陰正常(肛門と性器を指す)。

検査データ:白血球9800、赤血球446万、血色素12.4/dl、血小板32万6千(付記:やや白血球の増加がある。原文中、リンパ球0.412、単球+顆粒球0.826と記載されているが単位は不明)尿検査で蛋白025g(これも1日蛋白尿を示すのか、定性値を示すのか不明)ERY250μl(何を示すのか不明、単位も不明)、尿沈渣で毎視野赤血球12個、尿の赤血球位相差顕微鏡検査23×10の6乗(この検査結果も、何を対象にしたのかも、その単位も不明)、分尿法で三回確認するも、全て(顕微鏡学的)血尿であった。(所謂)腎機能は正常。肝臓胆嚢尿管の超音波検査正常、造影剤による腎盂撮影(IVP)正常。

中医診断

血症(尿血)、陰虚内熱挟瘀。西洋診断:IgA腎炎。治療は中医学を以っておこなう。

治則

清熱養陰、活血化瘀。

処方内容

金銀花15玄参15桔梗10g旱蓮草15白花蛇舌草20白茅根20g生側柏12g 女貞子15g益母草20

石葦15蒲黄12g牡丹皮12g 日に2服。中成薬の知柏地黄丸6gを日に3回、田七末3gを日に2回服用。

患者経過

7日連続して服用して、外感が去った後、上方から金銀花、桔梗、玄参を去り、澤瀉12g山茱萸12白芍12gを加味し、腎炎寧4錠を日に3回服用させた。5週間連続服用させる。小便の色は淡になり、腰膝の酸痛は著明に減少した。白血球は6800に減少、赤血球は396万とやや減少したものの正常範囲、血小板22万9千(初診時よりやや減少)リンパ球0.215、単球+顆粒球0.714、尿検査では蛋白(-)潜血反応(-)顕微鏡下で赤血球(-)。以上の薬物を約3ヶ月継続後、尿検査は異常なく、過労や感冒の後での再発は無い。

(疑難病証治験精華)

ドクター康仁の印象

大変丁寧な記載ですが、腎炎寧の正確な薬剤組成が不明です。西洋薬との合剤のようです。治療の承諾下で使用されている治験薬のようです。副作用あるいは不良反応もあるようです。治療内容が完全に明らかにされていませんので、残念ですが、評価の対象になりません。使用されている生薬は参考になりますが、とくに変わった生薬の組み合わせではありません。清熱解毒、涼血活血祛瘀、補陰、滋陰止血という治療原則でしょう。最後に変化させた、澤瀉、山茱萸は六味地黄丸中の生薬で、牡丹皮との対薬として山茱萸を捉えることが出来るでしょう。