2月最後の日曜日、姪の結婚式だった。式はホテルの日本庭園で行われたのだが、街中とは思えないほどの静かな佇まいの中で、厳かに挙げられた。当節は人前結婚式が当たり前となったが、ここでは庭園結婚式と云うのだそうだ。庭園の中に設けられた祭壇に玉ぐしを上げて、誓いの言葉を奏上するのだが、妙にかしこまった事もなく、と言って品位が劣る事もなく、それなりに若い2人の新たな旅立の門出にふさわしい雰囲気であった。
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式の後は披露宴。 兄弟などの近しい親戚ばかりなので、気苦労する事もなく華やかな祝宴を楽しんだ・・・と言いたいのだが。
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実は花嫁の父(私のすぐの弟だが)から、最後に一本締めをしてくれと耳打ちされていた。それも、花婿が福岡の人で、博多一本締めが希望なのだそうだ。博多で祝い事といえば、「祝いめでた」で、それだったらもう25年位前の課長時代に、部下の結婚式のときに是非とも披露してくれと言われ、慌ててレコード(カセットテープ)を購入して一夜漬けした事があった。博多と北九州、近いのだが気風はがらりと異なる。博多は商人の街で、演芸ものなどが得意な人が多く、北九州人は創造的な芸術性に溢れている。博多の常識は北九州では通用しないのだ。
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博多一本締めは名前としては知ってはいたが、さて、実際にはどう発声するのか? ユーチューブで調べた。そして知ったのだが、1本締めと云うのは3本締めが長いので、その最後の1本だけを行うのがそれで、関東と関西ではやり方が違うらしい。その関西風から更に変化したのが「博多手一本」という博多風の一本締めなのだった。私が今まで一本締めと称していた、「ヨ~~ォ、シャン」というのは、1丁締めと云うものであって、博多手一本は次のようになる。
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よ~ぉ、シャン シャン
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まひとつ、シャン シャン
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よ~と三度(祝うて三度)、シャシャン シャン
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花婿は福岡の人なので、博多手一本に馴染みがある婿方のほうで仕切ってくれたら良いのだが、両家の結婚式と云うこともあって、花嫁方に廻ってきたのだった。
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締めは最後の最後、オオトリとなっている。私としては準備はしているつもりなのだが、酔っ払って忘れてしまうと大変だという思いにも駆られて、すっきりと酔えなかったのが実情だ。いつものことながら、いじましい小心さが悔しい。
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いよいよ、その時が来て・・・博多手一本とは何ぞや、始めての人も多いと思って、まず紹介を兼ねて練習を行った後、本番!・・・何とか終わりました。
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さて、締めも無事に終わって、結婚式も滞りなく終了し、我が家に戻ったのだが・・・実はそこらへんのことを良く覚えていない。締めの手一本もちゃんと練習どおりに出来たのかどうかさえ覚えていないのだ。気が張って酔えずにいたのが、自分の役割を終えたと同時に一気に酔いが廻ってしまったのだろうか。
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その夜は大河ドラマも観ずに早々と轟沈したのでした。
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