◇ だれもが棘を◇
だれもが
棘を持っています
外に向いているか
内に向いているか
それだけのちがいです
-星野富弘さん-
◇ 朝日新聞 『天声人語』から ◇
ある落語家が刑務所に慰問に出かけた。受刑者を前に、第一声は「エー、満場の悪人諸君!」 笑う人もいれば「言われる身になれ」と苦る人もいるだろう。人権感覚を疑問視する向きもあるに違いない。だが、こういう場合はえてして、背景やいきさつを知らずに判断すると、的を外すことが多いようだ。
たとえば落語家が、過去にもその刑務所を訪ね、交流を重ねていたとしよう。それなら荒っぽい毒舌も、親しみをもって感じられるかもしれない。互いの間柄いかんで、言葉は丸くもなれば、とがりもする。
「地獄へ直行」と書いた紙を廊下に張って、遅刻者の指導をした中学校教諭がいた。「イエローカード」「校長面談」などとも書いた紙に、遅刻の回数に応じて生徒の名を付箋でつけていた。配慮を欠いた指導と問題視され、校長が謝罪する騒ぎになったが、川崎市教委は先ごろ処分を見送った。「生徒との信頼関係の中での指導だった」と判断したそうだ。
問題が表面化すると、生徒らから市教委に、「先生を責めないで」といったメールが寄せられたという。少々荒っぽい指導でも受け入れる信頼感が、クラスにあったということだろう。(抜粋)
小田原市では、20代の男性教諭が、実際にはやっていない6年の男児の背中に「僕は、女子更衣室に侵入しようとして失敗したオバカさんです」と書いた紙をはり付け、男児は1ヶ月間不登校になったというニュースもある。
棘はどこに向けるかによって、痛さも変わってくるだろう。愛情ある棘は心地よい痛さかもしれない。棘のある植物には美しい花も咲く。
我がブログへのコメントは、刺激のある棘も大歓迎。愛ある棘を「チクリ」と一刺しお待ちします。