あの有名なロバートキヨサキの
「金持ち父さん 貧乏父さん」の冒頭にこんな文章があります。
・子供に「勉強しなさい」というのは間違い?
いま学校で、
子供たちが実社会に出るための準備が充分になされているだろうか。
「一生懸命に勉強していい成績をとれば、
いい会社に入ってたくさん給料がとれるようになる」
両親は私にそう言い続けてきた。
子供たちに大学教育を受けさせよう、
そうすれば人生で成功を収められるから・・
これこそが彼らの人生の大目標だった。
一九七六年に、
二人姉妹のうち下の私が優秀な成績でフロリダ州立大学を卒業し、
会計学士を取得したとき、両親はその目標を達成した。
それは彼らにとって人生最大の業績だった。
私は彼らの描いた人生の設計図に従い、
「ビッグエイト」と呼ばれる全米でも指折りの会計事務所の一つに就職し、
若くして引退生活に入るのを夢に描きながら、
上をめざしてひたすら働き続けた。
夫のマイケルがたどってきた道も同じようなものだった。
どちらの両親も働き者で、
収入はそこそこだったが働くことに対して強い倫理観を持っていた。
マイケルも私と同じように成績優秀で大学を卒業した。
ただし彼の場合は二回卒業して、
一回目は工学、二回目は法律の学士を取得した。
卒業後、彼はすぐにワシントンにある有名な法律事務所にスカウトされた。
その法律事務所は特許関係を専門とする事務所だった。
マイケルの未来は明るかった。
そこには明確なレールが敷かれ、若くして引退生活に入ることも、
ほとんど保障されていると言ってよかった。
中略
一九九六年のある日、末の息子が学校にひどく失望して帰ってきた。
授業は退屈で、勉強するのはもうたくさんだと言うのだ。
「実生活で絶対に使わないようなことを勉強する必要がどこにあるの?」と息子は不満げに言った。
私はろくに考えもしないで答えた。
「成績が悪かったら大学に行けないからよ」
「大学に行こうが行くまいが、ぼくは金持ちになるよ」
「大学を卒業しなかったらいい仕事にはつけないでしょう」
私は多少パニックを起こしかけながら、
また母親として息子の将来を案じながら答えた。
「いい仕事につかずにどうやって金持ちになるっていうの?」
息子は無理に笑みを浮かべながら、
「ああ、またか」とでもいうようにゆっくりと頭を左右に振った。
そんな話はもう耳にタコができるほど聞かされている。
息子はうんざりした表情で下を向く。
私が親心から言ったことはまたしても息子には通じなかったのだ。
息子は頭が切れ意志も強固だが、
若者にしてはめずらしく礼儀正しく、目上の人間に尊敬を払う。
「母さん」と息子は始めた。
今度は私がお説教を聴く番だ。
「時代が違うんだよ! まわりを見てごらんよ。
いまものすごくお金を持っている人は
教育を受けたおかげでそのお金を儲けたわけじゃない。
マイケル・ジョーダソだって、
マドンナだってそうだ。
マイクロソフトの創始者のあのビル・ゲイツだって
ハーバードを中退してる。
それなのに、
まだ四十歳にもならないうちにアメリカ一の大金持ちになった。
子供のときは『知的障害あり』と言われていたのに、
いまじゃ年俸四百万ドル稼ぐ野球選手だっているんたよ」
息子かこう言ったあと、
しばらく沈黙が続いた。
私は自分が両親から言われたことをそっくりそのまま息子に言っていたことに気づき始めた。
たしかに世界は変わりつつある。
それなのに、親が子に与える忠告は変わっていないのだ。
いい教育を受け、
いい成績をとるというのはもはや成功へのパスポートではない。
それなのに、だれもそのことに気づいていない
・・・子供以外はだれも。
■ 本当に得意の分野を、思いっきり伸ばしたい ■