夢かよふ

古典文学大好きな国語教師が、日々の悪戦苦闘ぶりと雑感を紹介しています。

夏の思い出

2020-08-19 23:57:57 | 日記
私の勤務校は今年は夏休みが短く、実質あと半月ほどしかない。
例年なら私の夏休みは、資料調査での出張や、美術館見学、文学作品の舞台となった土地を訪れる旅行などを計画に入れるけれども、今年はそれらがほとんどできそうにない。

そんな中でも、この夏の思い出になるだろう出来事は、先日ハロコンに行ったことだ。

コロナ禍で今、ほとんどのアイドルやアーティストのコンサートは自粛かインターネット配信になっているが、ハロープロジェクトは感染予防対策を徹底し、1.000人規模の観客でのコンサートを実現している。
観客は座席の位置により、会場へは時間指定で3回に分けて入場し、座席は必ず1つずつ間隔を空けて座り、マスク着用で声援はなし、静かに歌唱を聞くという、通常のハロコンとは全く違う趣だが、とても良かった。

今回は各メンバーはハロプロの楽曲ではなく、昭和歌謡から最近のJ-POPまでのバラード曲をそれぞれ一人で歌っていたが、ふだんはグループで歌っている彼女たちのソロ歌唱を聴くのは新鮮で、各人の個性がはっきり伝わってくるのが興味深かった。

小田さくらさんの歌う「もののけ姫」の主題歌には異世界に誘われる思いがし、彼女の歌にずっと惹かれ続けてきた自分の感覚が間違っていなかったことを証明してもらったように思った。

私は小田さくらさんがきっかけで、今のモーニング娘。に興味を持つようになり、それが波及してハロプロのグループ全てが好きになってしまったので、今回のハロコンは全メンバーを3チームに分けたA・B・Cの公演を3つとも見た。

どのメンバーも良かったが、特に印象に残ったのは(以下敬称略)、伊勢鈴蘭「三日月」、金澤朋子「Jupiter」、島倉りか「スローモーション」、段原瑠々「見上げてごらん夜の星を」、井上玲音「糸」、浅倉樹々「カブトムシ」、竹内朱莉「雪の華」などで、段原さんの歌は聴いていて思わず涙がこぼれてきてしまった。

今回、歌を聴いたメンバーの中には、すでに卒業を発表している人もいるので、もしかするとこれが生歌を聴く最後の機会になるかもしれない。
その意味でも、このコンサートは忘れがたい夏の思い出になりそうだ。

秋の訪れ

2020-08-18 23:51:40 | 日記
今年は七月末まで梅雨が長引き、短い夏で終わるかと思っていたら、八月は「危険な暑さ」と形容される猛暑日続きで、正直驚いている。
昨日などは、夕方の五時頃になっても、外は40℃近く、この暑さがいつまで続くのだろうと思った。

今日はこれまでよりやや過ごしやすく、夜になると涼しく感じられ、今は窓の外から盛んに虫たちの鳴き声が聞こえる。
暦の上ではすでに秋だが、兼好法師が言うように、季節は常に次の季節を内包しつつ移ろいゆくことを感じる。

人の世にも時勢の推移というのがあって、特に指導者の地位にある者は、世上の小さな変化を見落とさないように気を配りながら、先々のことを考えて判断・行動しなければいけないと、この頃しきりに思う。
非常時には、平時には問題にならなかった指導者の能力や個人的資質が、その組織や集団の成員の禍福に大きな影響を与える。
そのことを忘れてはならないと思う。

漢字テスト 珍解答セレクション

2020-08-17 23:10:56 | 日記
コロナ禍により、私の勤務校では、今年は前期の登校開始が大幅に遅れ、7月に入って初めて通常の対面授業が行われた。

5月からすでに動画による授業は行っていたが、今年の新入生と教室で直接顔を合わせるのは初めてだった。そこで、授業開きの時は彼らの緊張を解きほぐそうと、「2019 漢字テスト 珍解答セレクション」というスライドを用意していった。
昨年の1年生が、漢字テストでこんな珍解答をしていたという紹介である。
(以下、カッコ内は私のコメント。)

・ピアノの〔れんだん〕。  連弾  ×連打  (ハンマーが折れるくらい、連打!連打!)
・〔しょはん〕の事情。   諸般  ×初犯  (塀の中でしっかり反省してきてください。)
・〔やくしん〕の年。  躍進  ×厄神  (嫌だよ、こんな年!)
・〔しゃふつ〕する。  煮沸  ×煮仏  (罰当たりな…。)
・〔きゅうりょう〕地帯を歩く。  丘陵  ×恐竜  (生きて帰れません。)
・はんこに〔しゅにく〕をつける。  朱肉  ×牛肉  (なんでこんな答えが…。と昨年の1年生たちと首をひねっていたら、「はんこ」を「ぱんこ」と間違えたんじゃないか、という指摘があったんですよ。…なるほど、パン粉に牛肉をつけてカツを揚げる、と。(笑))
・栄養分の〔せっしゅ〕。  摂取  ×搾取  (これ、間違いの方が漢字むずかしいよね?)
・〔せいぼ〕を贈る。  歳暮  ×聖母  (贈られても困る~!!)

ウケを狙ってではなく、素でこれだけ愉快な解答が出てきたのが笑える。
今年の1年生からは、どんな傑作が生まれるかと期待している。

非日常的日常

2020-08-16 22:24:30 | 日記
コロナ禍により、非日常的な日常生活を強いられるようになって久しい。
私の勤める職場でも、過去半年ほどは感染拡大防止への対応策に追われ、本来、教育と研究に割くべき労力と時間が徒らに失われた感が強い。

先週末から夏休みに入り、ようやくわが身を振り返る余裕が生じ、人心地がついてきた。
日本の敗戦から75年になるという時期的なものもあって、最近は山本七平『日本はなぜ敗れるのか――敗因21カ条』(角川書店)を改めて読み返している。

この半年ほど、自分の個人的な資質についても、職場の組織的風土についても、日本の社会のありかたや国民性についても、山本七平の指摘している問題点を感じることが多かった。
戦時、災害時に匹敵する非常事態への対応に翻弄されながらも、若い頃に読んだ『空気の研究』や『一下級将校の見た日本陸軍』などを通して得た、山本七平の知恵が、事あるごとに判断・行動の指針となり、私を助けてくれたような気がしている。

戦後七十年余

2018-08-23 22:39:06 | 日記
先日、資料調査で地域の歴史館へ行った。
ここには昨年の同時期にも来ている。

米子の幕末・維新期の貴重な和歌資料を閲覧させてもらい、調査・撮影を行う。
途中で館長から挨拶を受けたが、その際に昨年と寸分違わぬ冗談を言われたため、反応に困った…。

今回は歌集等の写本だけでなく、和歌の短冊も調査することになったが、その短冊を包んでいるのが、多くは明治・昭和前期の新聞紙であったので、そちらも非常に興味深く見た。
特に昭和19年11月の毎日新聞。
この時期の日本は戦局が悪化して久しく、米・英・中などの大国を相手にしての戦争遂行能力は既に失われていた、と現在の我々は認識している。
しかし、この新聞では、日本の戦果を誇大に報告し特攻を賛美する記事、国民を根こそぎ戦争に駆り立てる論調の社説などがある中に、生活必需品の薪や木炭の値上げなど国民生活の窮乏ぶりをうかがわせる記事や、金属類の提供を求める広告などがあって、読みながら言いようのない悲しみを覚えた。


現状を正しく認識し、事実に基づいて物事を判断・思考する態度の不足、明確な目標と合理的な計画の不在、成果と呼べないものをそうと言い張る強弁など、我々が身近に経験し、あるいは自分もそれに加担していることばかりである。

敗戦後、我々が精算も克服もできないでいるものを、個人レベルでも不断に問い続けていく必要性を感じて帰って来た。